バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

ヤモリ

ヤモリ

ある時代に野心を人一倍持つ男がいた。その人に野心は、他のものの理解の範囲を超えるものであった。幼少期、夏祭りで菓子が子どもたちに時があると必ず人よりも多く得ようとした。確かに人が上を目指すというものは良いことであるが、度が過ぎたものは必ず身を滅ぼす。

男は成人すると商売を始めた。野心が人一倍の彼には天職のようなものであったかのように商売はなかなかにうまくいった。その男は商売がうまくいく中で豪商の娘を娶ることになった。その娘はその豪商が最高の妻となれるように家庭教師を雇い学をつけさせ、手習いなどにも通わせまさに英才教育を施された上に姿がとても美しいという最高の妻であった。そんなこともあり、男は更に野心を強めたもっと商売を繁盛させて金を儲けたい、子を設け跡継ぎを作りたい。そんな野心を強めていた時彼の目にふとヤモリが家の壁にくっついているのを発見した。はじめはそれを家から追い払おうとしたが、ヤモリは家を守る、繁盛を守るといった話を聞いたのを思い出して彼はそれを家から追い払うのをやめた。それからしばらく彼の商売の売上は右肩上がりに上がった。彼の商売をはじめてからこんなことはなく、毎日が忙しさに忙殺される日々であった。そのようなことのなかでかれはヤモリのことなどすっかり忘れていた。そしてとある晩、彼は酒を飲みながら妻と最近の商売の調子の良さなどを話していた。そんな時、再び彼のもとにヤモリが現れた。彼は、きっとこのヤモリが我が商売の繁栄を守ってくれているのだろうと思い、またヤモリを放って置くことにした。そしてしばらく商売の調子が上々な日々が続いた。野心が人一倍強い彼はヤモリがもっとたくさんいれば、もっと商売がうまくいくようなる思うようになり始めた。彼は商売客にヤモリを捕まえて持ってきてくれれば小遣い程度になる金額で買い取ることを言うようなった。みんなヤモリなんか家でよく見かけるといい、不思議がりながらも小遣いが増えるのはうれしいので捕まえては彼の元へと持ってくる客は大勢いた。ある程度の数が集まってきたので野心の強い男ではあったが流石にもういいだろうということで買い取りはやめた。しかし、ある時を境に商売がうまくいか内容になりだした。おかしい、確かに家にはヤモリがいるのにと男は怪訝に思った。それ以来、彼の周りでは不幸が連続して起こりだした。始まりは、母の病である。しかも、原因はわからず母は苦しみ一ヶ月足らずで死んでしまった。次に、腹に子がおる愛する妻も病になった。彼は悩んだ、なぜこんなにも不幸が連続するのか、家にはヤモリはしっかりいるのにと。そんなある時彼の街に一人の流れ医者と称するものが現れた。彼は、村の病人を治療し、完治させるので大層評判が良かった。商売人は、自分の妻も見てもらうことにした。流れ医者は、妻を見るなりこれは病でなく毒に侵されていると断言した。それも、ヤモリの毒にだと。男はヤモリは毒を持っていないことなど知っていたのでどういうことかと医者に尋ねた。医者は、普通のヤモリは毒は持ちませぬ、だがしかし一つのところに集まるはずのないヤモリを自分の私利私欲のために集めたときなどに、ヤモリは共食いを行い、最後に残ったヤモリは本来の家を守るという役割でなく、家を破壊する猛毒を持つようになるのだと。彼はどうすればよいのかと医者に尋ねた。しかし医者はこの毒は治せぬ、だが少しは楽にすることはできると薬を処方して、街を去った。その薬は、確かに妻を楽にはしたが子供を生むときに肥立ちが悪くすぐに死んでしまった。その子供も1歳を待たずして風邪をこじらせ死んだ。彼のもとには商売しか残らなかったが彼の店も長くは持たず潰れた。彼は、なんとか商売を上向きにするため多額の借金があったので店が潰れるとともにどこかに姿を消してしまった。しばらくして彼を見たと言うものは、彼のひげは伸び放題で髪の毛もぐしゃぐしゃでやせ細りまるで浮浪者のようであったという。度を過ぎざる者は、身を滅ぼす。

しおり