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第1話 転生したらドラゴンだった件

 暗い…何も見えない…。

 目蓋は開いている感覚はあるが瞬きしてもどちらも暗いのには変わりがない。

 身体は…動かないな…いや、身をよじる程度の事は辛うじてできるが、膝を抱えて丸まった状態から身体を伸ばす事は出来ない。

 皮膚の感覚からして俺の身体の周りは何かとても固い、殻の様な物に覆われている気がする。
 きっとその固い何かに閉じ込められているのだ。
しかし何故?

 思考を整理するために改めて自分の事について考えてみよう。
まずは俺の名前だ…俺の名前…俺の…名前?
 おかしいな…自分の名前を思い出せない…記憶喪失?
 まさかそんな…ドラマやアニメの主人公じゃあるまいし、そうそう記憶喪失になんてなるか?
 じゃあこういうのはどうだ…俺は何者かに頭を殴られて気絶し、身体を拘束されて何か固い容器に閉じ込められているんじゃ…。
 でも誰が何の目的で?誘拐?いや、俺の家はそんなに裕福じゃないからそれは無いだろう。
 あれ…そういう事は憶えてるんだな…少なくとも完全な記憶喪失という訳ではないらしい。

 コツコツコツコツ…………。

 うおっ!!何だ!?俺を覆っている壁の外から強烈に何かから突かれているぞ!!このままではこの殻が突き破られるのも時間の問題だ。
 しかしこの振動を受けている内に俺の頭の中には自分もこちら側から突かなければならないという衝動が湧いて来た…何故だか知らないが絶対にそうしなければならないと本能的に感じられたのだ。
 だが俺の身体で比較的自由に動かす事が出来るのは首から上だけだ。
俺は思い切って首を前後に動かし、まるでキツツキの様に口先で殻を叩き返した。
 ピキピキと壁に亀裂が入っていく感触が伝わってくる…そこから徐々に明かりも入ってきた…これならすぐにこの狭い密室から脱出できるぞ!!
 渾身の力を籠め口先を前に突き出すとポッカリと穴が開いた…よしイケるぞ!!
 穴から更なる亀裂が広がったせいで随分と身体が動かせるようになった、ここぞとばかりに両腕を跳ね上げると上半身を覆っていた壁が盛大に吹き飛んだ…やった!!とうとう俺は自分を覆っていた殻を破ったのだ!!

 ピギャアアアアアアアアアアーーーーー!!!

 怪鳥のような叫び声が辺りに響き渡る…この声はどこから………ん?俺か!?この声は俺が発しているのか!?

「ティアマト様…二つ目の卵が孵りましたわ!!」

 俺の目の前には白いワンピースに身を包んだ少女が立っていた。
俺の方を見てとても嬉しそうに微笑んでいる。

『そう…中々出てこないから死産だと思って心配しましたよ…』

 頭上から重低音が効いた不気味な声が聞こえる…見上げると山の様に大きく、雪の様に真っ白なトカゲが…いや、頭には二本の角が生え、背中には蝙蝠などを連想させる羽根が生えている…これってファンタジーでお馴染みのドラゴン!?
 そのドラゴンさんが長い首を下ろして俺を頭からベロベロと舐めてくるではないか!!
 喰われる…!!俺は怯えに怯え腕をバタバタさせる…あれ…俺の腕、変な形をしているぞ…?
 いや、形だけではない、質感と色も人間のそれではない。
 爬虫類を連想させるザラザラで青い皮膚、指先も爪が長く鋭く尖っている。
 そんな…まさか…まさかこれって………。

 俺、ドラゴンに生まれ変わってる~~~~~~!!!?

 そう叫んだつもりだったのだが、相変わらずピギャーーーーーー!!!という鳥が絞殺されたような断末魔じみた叫び声が辺りに響いただけだった…。

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