王都到着! そして、義姉に抱き付かれる?!
「おぉ、王都は噂通りに凄いな」
「はい、私もこんな場所初めて来ました」
均等に並ぶ家々、所々にある魔道具屋や干し肉とか果物を売る売店がかなり目立つ。
こんな光景は俺達が居たトライデント領では絶対に見ない光景だ。
少しの間に二人共、見たことない光景に圧倒され見慣れて来たら目的地に向かって歩きだした。
「ほんと、王都って凄いな~」
「ですね~」
目的地向かいながらも物珍しい王都の店に目移りする二人。
(魔道具屋は結構あるな。まぁ、俺には関係無いから見ないけ………)
ふと、隣を見るとノエルの姿が無く慌てて辺りを見渡すと後ろの方の店のケースの窓に貼り付いて居たのでホッと肩を落としてノエルの居る方に行った。
「なんだ? 欲しいのか?」
「え!? あ、いえ。これは私には関係ない物ですから」
ケースの方に目を向けるとそこには華々しいウェディングドレスがあって。これは本当に今のノエルには関係ないものだな。
「えへへ。私なんかがこんなの夢見るの間違ってますよね」
「ん。そんなことないだろ。女の子なら誰もが夢見るものなんじゃないのか?」
そう俺が言葉を返すとキョトンとした様子で呆然してるノエル。
(あれ、俺何か間違えた事言った? 女の子なら夢見るものなんじゃないのか、これ………男の俺には分かんないけど)
「フィリア様、何時か私も着れますでしょうか? 好きな人と並んで」
「え。あー、そ、それはどうだろうな」
「そうですか。でも良いです、何時かは着てみせます!」
ノエルはそう言って俺の頬にキスをしてからまたウェディングドレスをうっとりした顔で見だした。
ノエルの好意に気づいてるから返す言葉が戸惑ってしまった。ここで着れるなんて答えたら何か俺がノエルを好きって言ってるみたいで、いや、ノエルが嫌いって訳でもないけど、あれ、俺はノエルが好きなのか?
「うっ………」
深く考えると頭が痛くなり、頭を横に振ってそんな考えを一旦忘れてまだウェディングドレスを見てるノエルに声を掛ける。
「ノエル、まだ時間あるから街を見て回るぞ」
「え。あ、はい!」
俺はノエル手を握って「行こうか」と声を掛けてから前に引っ張り一緒に街を見て回った。
「これ二つお願い」
「あいよ」
店主にお金を払いリンゴを二つ買って一つをノエルに渡して俺はもう一つの方を噛る。ノエルも一斉に噛り。
二人は首を傾げて一度顔を合わせてからリンゴに目を向ける。
「甘くないな」
「ですね。何か味気ないです」
トライデント領で食べていたリンゴみたいき甘くもないし、どっちかと言うと不味い。甘味が無くてただ噛りつけるだけの果物って感じだ。
それでも残しては駄目だから最後まで食べきる。
それから他の果物も食べてみたがどれも味気なくて美味しいとは思わなかった。
***
「はぁ、楽しかったです。フィリア様、これ大切にしますね」
雑貨屋で買ってあげた髪飾りに手を当てて言うノエル。
あれは安かったし、そんな大事にされる物じゃないんだけどなぁ。
本人が嬉しそうだから何も言わないけど、本当にあれを大事にされても困るから近い内にもっと良いのを買ってあげよう。
「ノエル、そろそろ───って! 今何時だ!」
日を見るともう沈みかけていた。ノエルも「あ」と声を漏らしてやらかした事に気づいた。
そう、《《兄さん達との待ち合わせの時間はとっくに過ぎていた》》ことに──
俺とノエルは兄さんとの待ち合わせの屋敷に急いで向かった。
「ふぅ。着いた~」
俺は途中から抱っこして連れてきてたノエルを降ろして目の前にある無駄に大きい鉄格子の門に目を向ける。
そうすると──門が開いて美形の男女が待っていた。
「よっ! フィリア、随分遅かったな」
「すみません。観光してたら………ぐほぉ!」
兄さんと話していたら前から凄い勢いで女の人に抱き付かれた。
「い、痛い………」
「フィリアいらっしゃい! お姉ちゃんがお出迎えしたんだから喜びなさい!」
長い赤髪をポニーテールしているグラマーな女の人が自分の胸にフィリアを押し付けて強く抱き締めていた。
「痛い………です」
「もう~! 相変わらず可愛いわね~!」
この人も相変わらず人の話を聞かないな。痛いって言ってるのに離してくれない……
まぁ、この大きな胸に押し付けられるのは悪くないんだが、締め付ける力とノエルから視線が痛いから離してくれないかな、この人…………
「あ、あの、いた………むぐぅ!?」
「な~に~! お姉ちゃんに逆らうのか! この可愛い弟め!」
「ッ!……… 痛いって言ってるんですよ! ロンさん!」
ソフィアは怒鳴り声を上げて無理矢理ロンを引き離した。
「後ですねぇ! まだ俺は貴女の弟ではありません!」
「えぇ、でも私達は学校卒業したら結婚するわよ? そうなったら弟になるじゃない!」
「それは……そ、うですが」
この人が兄さんと結婚するのが
ロン=リンクースさん。綺麗な赤髪が特徴で大きな胸を良く強調する服を着ている人だ。
本人曰く「こうしておけば、シルクが何時でも欲情出来からね」と──何とも怖い事を言う人だ。
何故、女性は直ぐに好きな人を襲おうとしたり、襲われる様にけしかけて来るんだろうか。
「まぁ、話はその辺にして、二人共疲れてるんだから早く部屋に案内するよ」
兄さんがそう声を掛けると「それもそうね」と俺から離れて、直ぐに兄さんの隣へと行った。
俺はやっと解放されたと肩を落としてるとノエルが袖を引っ張ってきた。
「抱っこして下さい」
何故かむくれてるノエル。むくれてるノエルも可愛いけどずっとそのままって訳にもいかないし、してあげるか。
「と──その前にそろそろマント脱いで良いぞ」
ノエルには一応フード付きのマントを着せていたからそれを脱いでから、よいしょ、とノエルを持ち上げてそのまま兄さん達に付いて行った。
「ごめんなさい」
「自分から言っておいて謝るな。ノエルは可愛いんだから拗ねたりするな。お前にはお前の魅力があるんだ」
「私が可愛い………えへへ」
可愛いと言われ嬉しそうにするノエル。
「たらしね」
「たらしだな」
「は?」
呆れた顔でこっちを見てそんなことを言ってくる兄さんとロンさん。
(何故、今のがたらしになる? 可愛いから可愛いって言ってるだけなのに何で、たらしなんだ………?)
じっっとノエルを見つめる。
うん、可愛い。整った顔立ちにクリクリしてるお目目とか、俺が見つめると顔を赤くする動作とか見てて可愛いと思うんだが。
「ノエル、俺ってたらしなのか?」
「え。えっと、その、どうなんでしょう?」
ノエルの戸惑った受け答え………え、俺って本当にたらしなの? 本当の事言ったら、たらしになるのか………?
フィリアは暫く自分がたらしなのかの考えに悩み苦しんだ。