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14、1号の造った村

 本庄が俺の前世が栗栖留宇だと宮田達に明かすと、驚いた顔で俺を凝視してきた。ルシアちゃんも頷いている。
 やり取りを聞いていた他の生徒達が騒めきたつ。

『ふん、知らんなそんな奴は。俺様の前世は暗黒破壊神ルッスクーリタである! 矮小で貧弱な肉体から解放され最強たる器になったと思ったら俺様を差し置いて暗黒破壊神を名乗る痴れ者がいるというので成敗に行くのだ!』
「「「あ、栗栖だ」」」
「リージェ様は暗黒破壊神ではなく聖竜様です!」

 俺の名乗りに何故か俺の前世が栗栖だと納得している一同。解せぬ。
 俺が暗黒破壊神だと言うとルシアちゃんが更にむくれてしまった。以前に勇気を出して明かしたのは冗談だと思われていたようだ。本気なのになぁ。仕方ない。

『コホン、ともかく、今の俺様はリージェだ。特別に呼び捨てすることを許してやろう』

 次にチビとか呼んだらブレスをお見舞いしてやる!
 むくれたままのルシアちゃんは、聖竜の称号はまだ仮であるし暗黒破壊神を倒すという目的は変わらないだろうと言って何とか宥めた。
 だが、「暗黒破壊神様が現在聖竜様とか」と大笑いしている宮田に怒りが再燃しブチ切れていた。女性を怒らせてはいけないと理解できないとは、宮田もまだまだお子ちゃまだな。



 そんな感じでたまに宮田や本田が噛みついてきては、女子達を怒らせ谷岡に窘められという光景が繰り返される中、とうとう1号の作った村へと到着した。
 大人しすぎるアスーの勇者達が不気味と言えば不気味なのだが、1号や他のメンバーの話にちゃんと耳を傾けるようになっていた。そのため、3オーラ、つまり昼から野営を取り1号のカウンセリングや狩りや採取などを行いながら進んだため、2週間で到着する予定だったのが3週間かかった。

 十分に全員帰せる日数があったのだが、帰還を拒否する者が多くまだ5名だけ残っている。現在残っているのは、谷岡と宮本、本田、小島、本庄だ。
 谷岡と小島は何故残っているのかわからんが、宮本と本田はまだ暴れ足りないらしい。1号が毎日諭しているがなかなか帰る気になってくれないそうだ。もう強制的に帰したら良いんじゃないだろうか。因みに本庄は「一番最後に帰る」という約束を律儀に守っている。
 帰りたがらない生徒が多かったため、毎週末は要さんが大量の生鮮食品や調味料を持ってきてくれた。それらは全部本庄のインベントリに収納されている。

「凄い……これ、全部先生が?」
「そうだぞ! もっと褒め称えてくれても良いのだよ? フハハハハ」

 現在俺達の目の前には、想像以上に立派な村が広がっている。
 モンスターの侵入防止なのだろう。グルリと囲むように柵が施され、更にその外側になみなみと水を湛えた深い掘があった。これならよほど大きな奴か空を飛ぶ奴以外侵入できないだろう。
 小島の感嘆の声に気をよくした1号がうざいと思ったのは俺だけじゃないようで、宮田に叩き落とされていた。

「ふ、ふんっ! リージェのデコピンに比べればこんなの屁でもないな!」
「楓、強がってるのバレバレ」
「こ、こら! 香月! おじさんって呼べ! ……じゃなかった! 先生と呼びなさいといつもいつも」

 きーきーと本庄に一方的にじゃれついている1号は置いといて。
 囲いの一部がはね橋のようにこちら側に倒れ、肩にちびきのこを乗せた可愛らしい幼女が招き入れてくれた。
 囲いの中は広く、その中心に大きなログハウスが一軒建っていた。その家を囲むように井戸や畑が作られていて、畑には様々な作物や果実が季節を無視して鈴なりになっていた。取り敢えず食事には困らなそうだ。

『それにしても……』
「ああ」
「本当に、皆さん黒髪なのですね」

 俺達がログハウスの中に案内されるや否や、収穫をしていた者、洗濯をしていた者などが集まってきた。それは全員話に聞いていた通り黒髪で。谷岡や小島も黒髪だからか嬉しそうに出迎えてくれたのだが、ルシアちゃんの台詞や不躾な宮田の視線に頭を手で隠すような仕草をしてしまった。

『子供しかいないな』
「それも可愛い女子!」
「先生、最低」
「ルナに言いつけとくね」
「香月が辛辣?!」

 そう、ここにいたのは全員10歳以下に見える見目麗しい女子だったのだ。
 困惑したような顔で髪を隠そうとする姿さえ可愛いと宮田が興奮し、ここは天国かと叫ぶ。……うん、年もそれほど離れてないし、辛うじてセーフ、だよな? ちょっと今からそういう犯罪に走らないよう気をつけときなさいよ、と1号に軽く忠告する。あ、1号も同類か。

「ちょ、俺は違うからね?!」

 あ、また念話切るの忘れてた。
 小島が相変わらず軽蔑したような目で1号を睨み、ルシアちゃんも意味がわかったのかいつの間にか1号から距離を取っている。
 と、涙目でオロオロしている1号をさきほど橋を下ろしてくれた少女が抱き上げた。

「村長を、虐めちゃだめ」
「……すまん、少し悪ふざけしただけだ。こんな良い村を作ったカエデは凄いな」
「うん、村長は凄いの。私達の神様」

 こちらを睨む少女にアルベルトが謝罪を述べて頭を撫でると、途端にニコリと笑う。
 その表情からも1号がどれほど少女達に尊敬されているかもわかるな。

『今夜一晩、世話になる』
「もう村長虐めない?」
『約束しよう』

 満足気に笑った少女達は俺達を空いている部屋へと案内してくれた。
 かなりちゃんとした造りで、隙間風もない快適な部屋だ。宿屋のベッドよりは固いが、何かの毛皮をなめして作ったクッションを敷き詰めたベッドもある。掛け布団は鳥の羽を詰めてあるのか軽い。今晩は久々にゆっくり寝れそうだ。

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