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17、完全に事故だけど。

 足音がどんどん近づいてくる。水漏れを疑い浴室へ向かっているのだろうが、ドアが開いている以上すぐにこの部屋に来てしまうだろう。
 どうする? 隠れるか、堂々としているか。俺はルシアちゃんを助けられれば良いだけで、領主と戦ったりましてや改心させたりなんて面倒くさいことをするつもりはない。むしろ接触を極力避けた方がスムーズに救出できるだろう。

 だけど……俺は既に一人殺してしまっている。ここで隠れたところで明らかに異常な死体がある以上、俺が侵入していることは容易に想像できるだろう。それならば……。

「リオ殿?! この水は貴殿の仕業か?!」
「なっ?! 竜?!」

 ドカドカと問い質しながら室内に入ってきた男達の前に堂々と姿を晒す。
 二人のうち一人は、俺を見るなり領主様に知らせねばと言って急ぎ戻っていった。
 白髪交じりの青っぽい髪を剃り上げたひと昔前のドラマに出てくるヤンキーのような髪型のおっさんは、俺を見て固まっていた。その凄まじいムキムキな筋肉からして領主の護衛か何かだろうか。とても強そうだ。


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【ステータス】

名前   : リザイア    

レベル  : 18 

HP   : 564/ 564
MP   : 168/ 168
Atk  : 229
Def  : 170

ステータスの取得に失敗しました。ごめんなさい。

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 前言撤回。雑魚だわ。レベル1の要さんでも頑張れば何とか倒せそうだぞ。
 それとも俺や要さんのステータスがおかしいだけでこれがこっちの世界の普通なのか?

「リオ殿はどうした?」
『……忌まわしい呪具を作る輩ならば、そこにいるぞ?』

 混乱気味だった様子は収まり、それでも警戒した様子で聞いてくるリザイア。
 ん? 竜を崇める国民性って聞いていたのにこいつからは敵意を感じるぞ? うーん、でももう後には退けないしなぁ。

『俺様の手にかかれたことを光栄に思うが良い』

 完全に事故だけど。
 こういうのはハッタリも大事。

「なっ……リオ殿! 貴様~!!」
『誰に武器を向けている? 俺様を誰と心得るか?!』

 控えおろう! 気分は時代劇のご老公、そのお付きの人である。

『人間ごときが俺様を所有しようなどとおこがましいわ』

 ん? あれ? おこがましいで合ってる?
 リザイアとかいうおっさん、顔を真っ赤にしてプルプルしてて反応ないんだけど。盛大に間違っていて笑いを堪えてるとかだったら嫌だなぁ。
 でもここまできたらやり通すしかない!

『人の魂を縛り無理矢理隷属させるなど、倫理にもとる外道な行為だ。その道具を作っていたこ奴は断じて許せぬ。その道具を使って誘拐同然に奴隷を得ている領主もな』
「何だと?! リオ殿が、いや領主様がそんなことするはずがないだろう!」

 リザイアが俺の言葉に怒気を隠さず怒鳴る。
 ならば何故隷属の宝玉や支配の首飾りの支配者が領主の名で登録されていた? と問えば怒りで赤かった顔が見る見る青褪めた。
 やや呆然とした様子のリザイアに畳みかける。

『俺様の(しもべ)たる聖女を攫ったであろう。いずこにやった?』
「何の話だ?」

 え? 違うの? ルシアちゃんを連れ去ったのは領主じゃない? そんなバカな。
 とぼけているようには見えない。犯人が領主ではないか、リザイアには知らされていないかのどちらかだろう。いや、先ほどの反応からして知らされていないだけな気がする。
 それなら説得次第で協力者になってくれるかな?

『ほほう? とぼけるのか。俺様の寝所を襲い、聖女を連れ去りあろうことか護衛の騎士まで手にかけようとしたであろう! これ以上俺様の手を煩わせるでない!』
「聖竜様は騙されているのですよ」

 この場にそぐわないねっとりした声がリザイアの後ろからかかった。
 慌てて横に避け片膝をついたリザイアを突き飛ばすようにして部屋に入ってきたのは、キンキラキンに全身光らせた豚……いや、おっさん。帽子や服には金色のスパンコールのような小さな粒がたくさん貼られ、両手の指に三つのどでかい宝石のついた指輪、首にはこれまたでかい宝石のついた金のネックレスをつけている。それが部屋の明かりを反射するもんだからめっちゃ目が痛い。

 鑑定するまでもない。こいつが領主、アレイ・タイラーツだ。キンキラ具合は息子のクレイバーより凄まじい。やっぱり親子だな。着ている服や宝飾品の趣味も嫌らしい表情までそっくりだ。
 そんなアレイはドアの横幅と同じくらいある巨体を揺らしながらゆっくりと近づくと、まるで小動物をあやすかのような手つきで俺に向かって両腕を伸ばしてくる。超キショイんですけど!

「あの女は、あろうことか王女を詐称していたのですよ。そんな女ですからあなた様へも聖女などと嘯いていたに違いありません」
『アホか。ルシアは正真正銘セントゥロの王女で聖女だ』

 アレイの手を華麗に避けながら反論すると、いやいや、となおもルシアちゃんが罪人であると滔々とその罪状を並べ立てるアレイ。
 元々聞く義理はないのだが、そのあまりの言い分に俺はだんだん苛々してしまい、とうとうキレた。

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