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「もう、何も失わなくて良いんだよ…」

 愛は、そう言葉を続けた。

「何も失わない……?」

「そう、何も失わないの」

「失うのはもう嫌だな……」

「さぁ、行こうよ。
 えいえんのせかいへ……」

 僕は、静かに愛の手を取った。
 すると、世界は明るくなった。

「ここは?」

「ここが、えいえんのせかいだよ」

 明るくなり、女の子の姿がはっきりと目の中に入った。
 その姿は、愛そのものだった。
 いや、大人になった愛と言うべきだろうかな。
 身長も高くなっている。
 胸も大きく膨らんでいる。
 短いスカートをはいて、愛が動くたびに
 ヒラヒラと動いている。

「これで、ずっとふたりっきりになれるね」

「ずっとふたり?」

「うん。
 ずっとふたり。
 この世界では、私もお兄ちゃんも死なないよ」

「死なないの?」

「えいえんにしあわせが続くの。
 それが、えいえんのせかい。
 さぁ、帰ろう?
 私たちの家へ……」

「うん……」

 僕は、愛と手を繋いで静かに歩く。
 行きついた場所……

 そこは、僕たちがいた孤児院だった。

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