バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

208

「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!お兄ちゃん……
 どこ……?どこにいるの??」

 急に愛の表情が変わる。
 その顔が不安に満ちていて僕の心も不安に溢れる。

「僕は、ここにいるよ」

 僕は、そう言って愛の手を握りしめた。

「これ、お兄ちゃんの手……」

「うん。そうだよ」

「お兄ちゃんの手、暖かい」

「愛の手も暖かいよ」

「お兄ちゃんの方があったかいよ……」

 そして、愛が静かに息を吸っては吐いて、吸っては吐いてを繰り返す。

「……愛?」

 僕の心のコップが不安に満ちて零れそうになる。

「お兄ちゃん眠いよ……」

「うん。
 ゆっくり休んでいいよ」

「でも、まだ寝たくないよう……」

「じゃ、愛が眠るまでずっとそばにいる!
 こうやって手を握りしめているから……」

「うん」

 愛の表情が少し和らぐ。

しおり