バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

1-2 ホントの告白とホントの災害

 2週間後、二年生全員で修学旅行先の久瀬大島にいた。
 ここは、港から10キロほど離れた、中心に今だ小噴火を続ける久瀬山がある島で、予約取れないほどの人気のリゾート島だ。これが目当てで、この第一高校を受験する学生もいると聞く。


 僕は適当に作った計画書通りに、事前に決められた男女6人と一緒に1日目の研修を終えた。研修の内容は、後日グループごとに報告する必要があるため、ちゃんとやっておかないと困る。
 しかし僕の気持ちはそれどころではなかった。今夜レイナに告白するからだ。


 全員一緒にとる夕食と、島にある大きな温泉で風呂を終えた後、僕はレイナを研修生宿泊所の近くにある神社に夜9時に来るよう、前もって話を通していた。

 僕は5分前からドキドキして待っていた。すると、レイナは時間通りに来た。

「ケンジ君、話って何?こんな暗いところに呼び出して」

「実は、プレゼントがあるんだ」

 僕は先週、街で購入した、レイナに一番似合いそうな青い石の飾りが着いた首飾りを渡した。

「え?何?とってもきれい。ありがとう」

 レイナはその首飾りを首に身に着けた。

「レイナ、実は・・・ずっと好きだったんだ。僕と付き合ってほしい」

「・・・・」

「レイナ?どうしたんだ?」

「嘘」

「え?」

「どうせ、嘘でしょ?」

「嘘じゃないよ。本気だよ。僕はずっと好きだったんだ。今日告白するために、計画を立てていたんだ」

「いいえ、きっと嘘。あの時、受験の時だって、嘘だった」

「こんどは嘘じゃないよ。本当だよ」

「ごめん、私ケンジ君のこと、好きだけど信じられない。いつも冗談ばかり。嘘ばかりついているから、何が嘘で、何が本当か分からい。私、もう傷つきたくないの。嘘って言われるのが嫌なの。だから・・・・ごめんなさい」

「嘘じゃない、本当だ。レイナ・・・・」

 レイナは小走りで神社から出ていく。泣いているのが分かった。


 なんてこった。僕がいつも嘘をついていることで、本当のことを信じてもらえないなんて。。。


 僕は、時間の存在を忘れたかのように神社の腰かけに座り続けていた。もう何も考えられない。すると、一人の老人が僕のところに近づいてきた。

「どうしたんじゃこんな夜中に。研修に来ていた学生か?心配しているだろうから連絡しようか?」

 まずい、先生にバレたら怒られる。こんな時に怒られたら立ち直れないぞ!

「いや・・・あ、実は、島の中心で、赤い炎が上がるのを見たんです。ちょうど火山がある方向です」

「なんじゃと?それはどのくらいの高さだった?」

「結構高くて、連続で赤いのが・・・・ドーンって音もしました」

 僕は怒られるのが嫌で、とっさに嘘をついてしまった。

「そ、それはまずい。久瀬山が噴火したに違いない。警察に連絡だ!」

「え、警察?それはまずい・・・・」

 止める間もなく老人は去っていった。その場で唖然としていると、程なくサイレンが島中に鳴り響いた。

「島の皆さん、久瀬山が噴火いたしました。今すぐ船に乗って避難してください」

 えらいことになった。僕の嘘が、とんでもない事に!


 この島では、いつ噴火が起きても対応出来るように、全員が一度に避難できる船と、徹底した避難訓練が行われている。もちろん、僕たち修学旅行生も、島に到着後最初に避難訓練を行っている。

 島にいる全員が、各々の船に乗るのに30分ほどで完了した。そして船が離れる。

「全員いるか?さっき数えたときはいたはずだが・・・・」

「ケンジ君どこ?先生!ケンジ君がいないです!」

 レイナは泣き叫んだ。だが、船はすでに陸地から離れていた。


そのころ、僕は独り島に残っていた。とてもみんなと一緒に逃げる気にはならなかったからだ。これからどうしようかと考えていたが、何も思い付かない。僕はなんとなく久瀬山に向かって歩いていた。

 すると突然、久瀬山から大きな音がして、真っ赤な溶岩が空に向かって噴き出してきた。なんと本当に噴火したのだ。冗談で言ったことが、真実となった。

「なんてこった。僕の嘘が本当になった。でも、みんな助かて・・・・レイナが助かって良かったよ」

 僕の目の前には、ものすごい速さで溶岩が流れてくる。逃げるなんてとうてい無理な速さだ。

 僕はあきらめた。僕は死ぬんだな。でもレイナが助かったって事だけでも、僕が生きていた証拠として充分だ。

しおり