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01

「ねぇ知ってる?」

 名前も知らない女の子がある少年にそう聞きました。
 少年の名前は、佐々木小十郎。
 少女の名前はわかりません。
 だけど答えなければいけない気がしました。

「知らない」

「かわいそう」

「え?」

 小十郎は少女の言葉に不安を感じました。

「あなた、もう死んでいるんだよ」

 少女の言葉で小十郎は我に返りました。

「そうだった。
 俺、死んだんだ……」

 小十郎は突然降ってきた核ミサイルで死にました。
 どうして死んだのか。
 なぜ死ななければいけなかったのか。
 なにもわかりません。

 ただ、思い出したことがひとつだけあります。
 それは、自分が死んだ……
 ただ、それだけです。

 小十郎は目を閉じます。
 そして、ゆっくりと深呼吸。

  すぅーはぁー

 そして、目を開けるとそこにはいじめっ子たちが少年の周りを囲っています。
 小十郎はサマーという名前でこの世界に転生してきました。
 父親は魔神ソロモン王。
 最強の魔神として恐れられています。

 しかし、その息子であるサマーはその能力の欠片もありません。
 産まれたと同時に強力すぎた魔力に魔力回路が追いつかず爆発。
 サマーは母と魔力を失いました。

 そのためサマーは、魔神界から追放され人間界の孤児院に預けられました。

 人間界に来て17年目の誕生日が訪れようとしたとき。
 事件が起きました。

「おい!サマー!
 てめぇ、能力がないくせに俺に逆らうっていうのか?」

 そういったのはいじめっ子のリーダー、バルです。

「いじめはよせよ。
 かっこ悪い」

 サマーが、そういって木の棒をバルに向けます。

「サマーくん、私のことは気にしなくていいよ?」

 いじめられていた女の子のプッペがそういうとサマーが言います。

「プッペ。
 俺はこういうイジメが大嫌いなんだ!」

 プッペが少し照れ笑いを浮かべます。
 勝てなくてもいい。
 弱くてもいい。
 プッペは優しいサマーのことが大好きでした。

「同感だね」

 そういって現れた少年が颯爽とバルたちをやっつけました。

「誰だ?」

 サマーが尋ねるとその少年が言います。

「僕の名前は、アースロック。
 勇者になる男さ……」

 アースロックはそう言って白い歯を見せて笑います。
 そして、プッペの方を見て顔を赤らめます。

「あ……
 ストーカーさんだ」

 プッペの言葉にアースロックは少しだけ落ち込みました。
 でも、アースロックは勇者になる男。
 そんな言葉では落ち込みません。

「アースロックさ」

 アースロックは、そういって魔剣ウィスパーを片手にバルたちに刃を向けて言います。

「僕の名前に誓い。
 プッペをいじめるやつは僕が許さない。
 戦うというのならこの僕が相手だ」

 アースロックの言葉にバルたちは逃げていきました。

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