バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

ずるっとん

 夜中、奇妙な音で目が覚めた。
 ずるっとん。
 何かを引き摺って歩いているような音。
 寝ぼけた頭で考える。一体何だろう。
 粘着シートに捕まったネズミが引き摺ったまま逃げようとしているのか。
 いや、あれはきちんと捨てた。
 あれから仕掛けてないからネズミじゃないはず。
 そのほかに何かあったっけ――ZZ、あれかな、あれ――あれは――ZZZまだ捨ててなかった?――いや、捨てたよね――そうそう、苦労して捨てた――ZZZZ――捨てた?――うん捨てたZZZZ
 ずるっとん。
 あ、そうだ、まだ捨ててなかった。途中面倒臭くなってそのままにしておいたんだ。でもまさか――ははは、まさか――ZZZ
 ずるっとん。がちゃ。
 はっ。
 ドアの開く音に今度ははっきりと目覚める。
 ずるっとん。
 殺したはずの夫が這いながら部屋に入ってくると、切断途中の頭を持ち上げベッドに上がってきた。

しおり