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エンジェル・ハート 7





     *



 吐き出される排気ガスが嫌に凍みてくる。

 横たわった身体から流れ出る鮮血が生きていた証にさえ感じられた。

 愛理は半狂乱になっていた。

 こんな結果が欲しかった訳じゃないと、その場で泣き崩れた。



 時が遡るほどに、この交差点を見ていたい。意識すべてを焼きつけたら、こんどはどこに行こうか。

 見えない涙だけがある。

 ほんとうに後悔のない人生だった。たった数十年の人生を幸せに感じられたのは愛理のお陰だよ。



 六年の歳月が大きく街並みを変えてしまったね。

 月日がひとを変えるように、

 変わらぬものなど、なに一つとして無いのかも知れない。

 たとえ、あの人が許したとしも僕は許しはしない。



「そうだろう? スミス」





     *







 不思議だね、

 あの人は、とことん僕を試す気だ。



 息を飲むほどに僕を見つめたスミス、

「久しぶりだね」

「エッジ?」

 スミスはあまりの驚きに両手を広げた。雑踏のなかから、まるで僕を拾いあげるように、スミスは真っ直ぐ歩みを進めると懐かしい笑みをこぼした。



 首に巻かれたリボンがエッジである証だ。

 なんども首の紐を確認するスミス。この紐はスミスがくれたものだ。



 恐る恐る手を伸ばすスミスの顔が緊張している。大丈夫、僕は逃げたりしないから。

 僕は喉を鳴らした。

 抱き上げられた僕は改めて街並みを覗く。スミスほど背は高くなかったけど、うん、いつも見ていた景色がある。

 懐かしいな――





 あまりの懐かしさに喉が鳴り続ける、

 そっと覗くスミスの優しさに衰えは感じられない。



 フードバンクは場所を変えて再開していた。

 あの交差点では当時、多くの野良狩りが行われていた。

 僕たちを捕まえるのは決まって警察と児童相談所職員たちだった。

 大人たちは自分たちの常識で、すべてを判断する。そう、組織の決まりに忠実だった。

 本当の僕らの叫びを聞いてよ。お願いだから――。僕たちは牙をむくことしかできない。

 だけど、どんなに苦しくても独りぼっちになることなんてない。

「逃げろ!」

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