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第11話 リースの再会


《3年前 とある迷宮》

(グルルル!! ルオオオォォ!!)

(俺は先に逃げる。後の事は任せたぞ。お前等! リース。お前はここに残って囮役をやれ! じゃあな!)
(あ! ちょっと! 待ちなさいよ! アゼル。私も逃げるわよ)
(俺を置いてくんじゃねえよ。ハリボテ勇者!!)

(あ! コラ! 待ちなさい。3人共!……嘘でしょう? 後衛の私とリースを残して、先に逃げ出すなんて……勇者パーティーって、国の精鋭を集めたんじゃないの?)

(良かった。逃げて遠くまで逃げてくれたみたいですね)

(リース? なにを言っているのよ。私達も逃げましょう。あんなルガルビースなんて、後衛の私達じゃ勝てるわけないわ)

(……シェリルさんも逃げていいですよ。後の事は僕が処理しておきますからね)

(グルルル!!)

(処理する? あのモンスターを? だからそんな無理よ! いいからさっさと逃げましょう……リース! 危ないわよ!)

(ルガアァア!!)

(リース君! 逃げなさい! 雑務薬師の貴方じゃ攻撃もでき……)

(『魔法の短剣・翔』)

ドスッ!

(ガァ?……?……ルァ?!……)

ドサッ!

(……へ? 嘘? あの狂暴なルガルビースが真っ二つに……リースがやったの?)

(外気に溢れる自然のマナを貯める精霊短剣ですよ……君を倒すぐらいのマナが貯まってて良かったです)

(リース!)

(はい?……てっ! シェリルさん。逃げてなかったんですか?)

(当たり前でしょう! そんな事よりも今のは何? 貴女、本当は強かったのね! なんで教えてくれなかったの? 全部隠している事を教えなさい! 早く!)

(そんな事を言われましてもて……これはたまたま倒せただけですよ。ハハハ)

(そんなわけないでしょう! 私にだけ貴方の本当の実力を教えなさい! 良いわね!)

(は、はい! シェリルさん!)


《現在 ホーンの森》

 私の名前はシェリル・バレンタイン。元は勇者パーティーの付与師をしていたわ。

 ティアの街を出た後は、リースを探しにあっちこっちを探し回っていたわ。迷いながらね。

 そして、やっとリースに繋がる手がかりのエルフの少女エリシアと出会って、昔のリースとの思い出を話していたところね。


「リースの昔はそんな感じよ。エリシア」

「ほうほう。お師匠は本当の実力を隠してると?」

「そうね。それこそ、あのハリボテ勇者様よりもよっぽど勇者様ぽい実力の持ち主よ」

「ほうほう。お師匠の一番弟子として、それは誇らしい」

「それにしても驚いたわ。あのリースが弟子なんて取るなんてね。私はてっきり、1人で気ままに旅をすると思っていたわ」

「………ギク」

「ギク?」

「な、なんでもない。お師匠は私の才能に感激して、ぜひ、弟子にしたいって言ってきたの。それで私が仕方なく弟子になった」

「へ~! 凄いじゃない。それなら、リースが貴女に魔法の短剣を渡したのも納得ね」

「……この短剣凄い物?」

「えぇ、凄い物よ。それに売ったら凄いお金になるわ。なんせ、エルフの刀鍛冶〖ミラ〗の一振ですもの。凄い短剣よ」

「ほうほう。売ったら凄い……」

「涎垂れてるわよ。大丈夫?」

 この娘。本当にリースの弟子なのかしら? 

 それにしては無防備過ぎよね。魔力障壁は……エルフ族だから使えないか。でもエルフ族ならマナを使って、精霊を操れる筈なのになんでしないのかしら? 森で迷ったと言っていたのに。

ガサッガサッ!!

「ん?」「む?」

 林の中から何か出てくるわね。何かしら?

「キャンキャン!!」

「レッドウルフ……の子供? 可愛いわね」

「ウシャアア!! モンスターが出たあぁ!!」

「え?」

「へぁえ?」

 どうしたのかしら。エリシアったら、いくらモンスターといってもレッドウルフの子供なんて、村とかでは飼育とかもされているのにこんなに騒ぐなんて。

「キャン~!」

「わふぁ?! なによ。人懐こいじゃない。可愛い~!」

「人懐こい?……じゃ、じゃあ私も撫でてみ…」

「ガブッ!」

「あっ!」

「……ニャアアア!! 私の手が噛まれたぁぁ!」

「お、落ち着きなさい。この子は牙も生え揃っていないレッドウルフの子供よ。噛まれたってそんなダメージは受けな……い?」

「うぅぅ……お手々痛い。お腹も空いた。お師匠~! ダズゲデェァ!!」

「嘘? 噛まれた程度に大泣きするなんて……貴方の甘噛みそんなに痛かったのかしら? 少し噛んで」
「キャン……(アムアム)」
「全然、痛くないわね……とういう事はこの娘が凄い弱いって事かしら?」

「おじじょおぉ!ダジュゲエテェ!!」



 ……この僕を呼ぶ声はまさか!

「遠くの方から、エリシアの泣き叫ぶ声がしますね……急ぎましょう。ナナリーさん」

「……いや。全然、聴こえないんだけど。リース君……てっ! いきなり何で私にお姫様抱っこするの?」

「この方が早くエリシアの元に着けますから。行きます。『ウィンドウ』」

「いや、普通は逆で……キャアアア!!」

 僕はナナリーさんを抱き抱えると、超高速でエリシアの声が聴こえた場所へと走り出しました。


《再び エリシア&シェリル》

「キャンキャン!」

「えぐえぐ……また負けたぁぁ」

「モンスターに慰められちゃ駄目でしょう……それよりも困ったわね。ここがいったいどこなのかも検討がつかないわね」

「(グスン)……シェリルも私と一緒で迷子なの
?」

「つっ!……いいえ。迷子ではないわよ。私はリースを探してるだけよ。リースさえ見つかればゴールなの」

「ほうほう……それで今も迷ってる」

「ぐっ!……流石、リースの弟子ね。天然でどんどん毒を吐くじゃない」

「お師匠よりはマシ。お師匠の毒舌は容赦ない」

「あ~! それは分かるわ。それで何回、アゼルを怒らせてたか……思い出したくもないわね」

「キャン! キャンキャン!!」

「? どうしたの? レッド。そんなに吠えて?」

「もう名前つけてる?」


「エリシア!! どこですか! エリシア!!」


「この声はリースね! リース! 私はここよ」
「この声は、お師匠!! おじじょおぉ!! エリシアここに居るよ!!」
「キャンキャン!!」


「エリシアの声が聴こえて来ましたね。声がした方に向かいましょう!」

「う、うん。そうだけど。もう1人の声がしなかった? 女の子の……凄く嫌な予感がするんだけど」

 僕は急ぎました。最近、弟子にした大切な娘の元へと。そして……

「今したね。おーい! エリシア」

 泣きべそをかいているエリシアが居ました。それとエリシアの隣にはシェリル?!

「あれ? なんでシェリルがこんな所に?」
「……私。この後の展開が凄く分かるわ」
「はい?」


「シェリル! お師匠来た!」
「……ええ、そうね。なぜかナナリーさんをお姫様抱っこして来たわね。颯爽と」
「シェリル?」
「キャン?」


「シェリル! 数日振りですね。お元気にしてました……ぐはぁ?!」
「わちょちょっ! 落ちる落ちる!……よっと!」

 シェリルに首元を抑えられ拘束されてしまいました。

 ナナリーさんは速攻で僕から下りて安全な場所に避難してますよ。

 魔法使いなのに素早い人ですね。

「この浮気男! たった数日会わなかっただけで、もう彼女さんを作ったの? 最低ね」

「い、いえ。僕はそもそもシェリルとも付き合っていませんし」

「浮気するリースは最低」
「お師匠。浮気駄目絶対」

「……貴方達。なにを言ってるんですか?!」

「ほら。言いなさいよ! 他に現地妻は何人いるわけ? ちゃんと説明しなさい。リース! 早く!」

 道に迷いやすいシェリルの事です。森をさ迷っていて疲れたのでしょう。

 錯乱状態にあるんですね。可愛いそうに……そのせいでなんで僕は殴られたんでしょうか? 不思議です。

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