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MI6

 イギリス・ロンドンの英国情報局秘密情報部、通称『MI6』本部は混乱していた。
 EMPの使用による同時多発テロの影響やビックベン爆破未遂事件の影響で、部長のレディ・Mは部下のミスター・Qと情報収集に追われていた。
 「各地方都市で『ヴァイル』による同時多発テロが多発しています。この間に『トランスロイド研究所』で謎の停電、火災があったとの報告を受けています。現在の状況は不明とのことです」
 ミスターQの報告にレディ・Mは機嫌を悪くする。
 「ビックベンの爆破事件はどうなったの?」
 「テロリストは鎮圧しました。しかし、生き残った二人はテムズ川に飛び込み、殉教を遂げたとのことです」
 「もう!なんてこと!」
 レディ・Mはステンレスの机を叩く。
 「特殊部隊がロンドン郊外で、『ヴァイル』のアジトを発見しましたが、十名の幹部が自殺し、真相は聞き出せません」
 「テロリストどもが口を割るわけないわ!」
 ミスターQは顔をしかめながら、タブレットを渡す。
 「レディ・M、この少女ですが・・・・・・」
 タブレットにはスーツを着用した少女が描かれていた。
 「随分、かわいい子じゃない?」
 「我が国の重要機密『マーヴェリックストライカー』です」
 「この子を実験台にする馬鹿科学者どもを殴ってやりたいわね」
 「それが、この画像を」
 ミスターQは画像を切り替える。
 「偵察用ドローンからの撮影です」
 画質は荒かったが、少女の腕が光っていた。
 信じられないことに拡散光線を右手から放っていたのだ。
 「これは?」
 レディ・Mは関心を持っていたのか、興味深そうに尋ねる。
 「『黒魔術』ですね」
 「魔法が使えるということかしら?」
 「端的に言えば、そうなります。政府より、彼女の保護を急いでほしいとのことですが?」
 「できたら急いでいるわよ!」
 激怒する彼女にミスターQは別の画像に切り替えようとする。
 「それから・・・・・・」
 今度は少年の画像が出た。
 「この子・・・・・・」
 レディ・Mの目つきが変わる。
 「アルバート・ラチェット・・・・・・」
 「はい、アルバートは昔、『トランスロイド研究所』を脱走、以降は行方不明になっていました」
 「それで『ヴァイル』とハデスに拾われた・・・・・・」
 またしてもレディ・Mは机を叩く。
 「アルバートが脱走してから2年間、どうして捕まらなかったの!」
 「ハデスが、反『トランスロイド』の地下組織のネットワークを駆使して、長らく捜査の手を阻んでいたようです。政府が調査しても、反『トランスロイド』主義の民間人にガードされてしまい、逃げ延びられたそうです」
 アルバート・ラチェット。
 どうしてこの少年がこの研究所にいるのか解せなかった。
 『マーヴェリックストライカー』アイリス・ワトソンもこの研究所で何をやっていたのか、疑問が尽きない。

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