バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

スイカを生首にみたてる

「・・・、ん、なんだ、これ」
「あ、起きちゃった。ごめん、薬が少なかったみたい」
「お、おい、なんで、縛られてるんだよ」
「そりゃ、逃げられたら困るからに決まってるじゃない。あんた、そんなことも察せないバカ? なんかのプレイだと思った?」
「な、何言って、それに、その血、本物か、お前、何やって・・・、おい、他の奴は、どうした」
「他? こっちよ」
「なっ、マジかよ、お前が殺したのか」
「ええ、あなたが寝ている間にね、でも、薬で眠らせて寝ている間に殺したから、苦痛は少なかったはず。それより見て、首を切断するのって、かなり重労働なんだけど、奇麗に切れてると思わない? こうして首だけにして並べるとスイカみたいでしょ」
「おい、こんなことしてタダ済むと思ってるのか」
「それ、映画でよく聞くセリフね。そう言いながら抵抗しても、結局は殺人鬼に殺されるって、よくある話でしょ」
「金が欲しいならくれてやる、こう見えても、俺って海外旅行に行きたくて、バイトで百万近く貯めてるんだぜ」
「百万より、あたし、祟りの方が怖いの。それにあんたたち、あたしのことを、すぐにやらせてくれる頭の軽いギャルってバカにしてたでしょ」
「バ、バカになんか・・・」
「いいわよ、あんたたちをこの村に誘いやすように自分でバカを演じてただけだから。でも、男って、一発やらせてあげただけですぐいいなりになって、本当バカね」
「お、お前、俺たちをはめるために・・・」
「そりゃ、こんなことしようとしているのがばれたら、あんたたち、おとなしくこの村に来ないでしょ。あんたたち、この村に後ろめいたことがあるでしょ?」
「後ろめたいって?」
「心当たりがないのなら教えてあげる。この村の裏手の山は山神様の聖域になっていて、誰も入っちゃいけないの。それなのに、あんたたち、二年前、勝手に入って、サバゲーごっこして山を荒らしたでしょ、おまけに、社にお供えしてあったスイカまで、盗んで食べて、あんなことして、山神様の怒りに触れないと思った?」
「なんだよ、山神って・・・」
「山神様は、山神様よ。怒らせたら怖い神様だって知ってたから、あたしたち村の者は、生贄の生首に見立てて、毎年、社にスイカを奉納してたのよ。あれ、大きくて、美味しかったでしょ。毎年、村で一番できのいいスイカを山神様に供えてたんだから」
「たかがスイカだろ、盗み食いが悪いっていうなら金を払うさ、なにも殺すことはないだろ」
「でも、あんたたちが山を荒らして、お供えのスイカに手を出したから、山神様が怒って、あれからこの村で何人死んだと思ってるの?」
「で、でも、その山神ってのは、迷信だろ。スマフォやパソコンが当り前の現代に、そんな迷信や昔の因習を信じて人を殺す方が狂ってると思うぜ」
「あんた、この村に住んでいたうちの両親がどういう死に方をしたのか見てないのに迷信とか狂ってるとか、よく言えるわね。あたし、あんな死に方嫌だから、あんたたちには、きちんと、償ってもらうから」
「おい、庖丁を研ぐのやめろ」
「大丈夫、また眠れるように薬を飲ませてあげるから。起きている間に首を斬られるの嫌でしょ」
「ふ、ふざけるな。この縄をほどきやがれ! 誰かぁ、助けてくれ、頭のおかしい女が!」
「悪いけど、うちの両親を含めて、ご近所さんも亡くなってるから、いくら騒いでも、助けなんか来ないわよ」
「くっ・・・」
「そんなに元気なら、起きたまま殺されてみる? あんた結構カッコつけじゃない。目を開けたまま死の恐怖に耐えてみるのやってみない」
「お、おい、く、くるな、やめろ」
「世の中には、自業自得って言葉があるの知ってる?」

しおり