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3-7:ここが正念場か?


「私はアルムと一緒になりますわ!!」



 ミリアリア姉さんにいきなり唇を奪われて私は思わず放心してしまった。


 女の子に、しかも美少女にファーストキッスを奪われたぁ!?

 いやいやいや、アプリリア姉さんにキスされる事はあっても流石に唇は無かった。
 強引なエシュリナーゼ姉さんだってそうだ。
 もちろん、マリーにもお休みのキスはおでこか頬だった。

 それが今のはちょっと舌まで入れられたキスだった!!


「あ、あの僕は……」

 そう言い出してマルクス叔父さんを見ると片手で目を覆って苦虫をかみつぶした感じで仁王立ちしていた。

 
「あ、あのぉ~」


「くっ! 目に入れても痛くない程の我が娘だがここまで意志が固かったとは!! アルムエイド殿下!! 姐さん女房になりますがどうぞよろしくお願い致します!!」


 マルクス叔父さんは断腸の思いで吐き出すかのようにそう言って私に向かって頭を下げる。

 
「お父様! それでは!!」

「ミリアリアよ、アルムエイド殿下はまだ幼いが年長者であるお前がしっかりとお支えするのだぞ!!」

「は、はいっ! 勿論ですわ!!」


 いやちょっと待てそこっ!
 私の意志完全無視かーいぃっ!

 どう言う事?
 ミリアリア姉さん、貴女ブルーゲイルの好きな人の為に私とキスまでするの??


「まぁまぁ父上。アルムエイド君はまだまだ幼い。ミリアリアとはもう少し間をおいてから婚約と言う事でよいのではないですか?」

「アルムが俺の義理の兄になるのか? なんか変だな(笑)」


 呆然とする私を他所に話を進めるイザーガ兄さん。
 そして相変わらずお気楽なエイジ。

 ちょっと待とうか君たち。
 完全に私とミリアリア姉さんが一緒になる前提って何!?


「アルムエイド君が私の本当の義理の弟になってくれるのは大歓迎だよ。いっそこちらのレッドゲイルに引っ越してこないかい? アマディアスには私から話をするよ?」

「アルムがずっとこっちにいるのか? いいなそれ!」

「そ、そうですわね。そうすればエシュリナーゼ姉さんにも邪魔されずに済みますわ!」


 え、えーとぉ……


 どう言う事、レッドゲイルの皆さん?
 何故にそこまで私をこちらへ引き込みたがる??


「アルムエイド殿下、おおぉ我が義息子よ! 兄上の所の優秀な血が我がレッドゲイルにも根付くか!!」

「あ、あのマルクス叔父さん?」

「義父(おとうさん)と呼んでもらっても結構ですぞ!!」

 
 うぉおおおーぃいいぃぃっ!!!!


 ばっ!
 抱きっ!!
 すりすりすりぃ~!
 

 いきなりマルクス叔父さんに抱き着かれ頬すりされる。
 
 ちょっとマテぇっ!
 叔父さん切り替え早すぎ!
 私もう義理の息子確定!?

 ちょっとぉっ!


 そう内心焦っていると、いきなり体が引っ張り上げられる。


「失礼、アルム様もお疲れのご様子。お話はまた後日と言う事で」


 私を引っ張り上げたのはマリーだった。
 そのあまりにもいい手際にマルクス叔父さん含む他のみんなも言葉を失う。
 そしてマリーから何とも言えない威圧的な雰囲気が漂ってきている。


「お、おほん。そ、そうだな、着いたばかりだ。まずはゆっくりして疲れを取るがいい。ミリアリア、話が有るから少し残りなさい」

 マルクス叔父さんは咳払いしてそう言う。
 私も何か言いかけようとするとマリーから何とも言えない圧迫感を感じて黙ってしまう。


「それでは失礼します」


 マリーはそう言って私を釣り上げたまま一礼して執務室を出て行くのだった。

 
 * * *


「しっかし、ミリアリア姉ぇーちゃんも思い切った事するな」

「いやエイジ、ミリアリア姉さんはブルーゲイルに本当に好きな人がいて、僕は今回ミリアリア姉さんがマルクス叔父さんにお見合いさせられるのを阻止するために仲が良くて将来を考えてるって事にしてお見合いを阻止させるために協力してるんだけど……」

「はぁ? お前本気で気付いていないのかよ?? ミリアリアねーちゃんは前からお前の事が好きなんだぜ??」

「はぁっ!?」


 客間の部屋に来ていろいろと荷物をマリーが整理しているとエイジがやって来てそんな話を始める。
 ミリアリア姉さんの事は嫌いじゃないけど、それは姉の一人としてで、一人の女性としてなんか見た事が無い。
 今までだってアプリリア姉さんと同じくスキンシップ強めな姉だ位に思っていたのに……


「エ、エイジ、それマジ?」

「マジだぜ」


 エイジにそう言われて私は思い切り頭を抱え込む。
 マジか?
 ミリアリア姉さんが私のこと好きだったなんて!!


「アルム様、奥方を何人もお迎えになってもイザンカ王家のしきたりでは問題ございません。しかし私にもお情けはいただけないと、身請けしていただいた関係上納得がいきませんよ? 私は妾でかまいませんので」

「いやマリーさん、それ本気で言ってるの?」

「勿論です。ですからアルム様の初めては是非私に!!」


 駄目だこの人も!
 私まだ十歳!!
 いや、もう何年も前からこの人は危ない「お巡りさん、このお姉さんです!」案件の人だったけど!


「なんでみんな僕なんか好きになるんだよぉ~」

「そりゃぁ、お前と一緒にいると飽きる暇がないしな!」

「それ、エイジの感想じゃないかよ~」


 エイジも今年で十二歳になる。
 順調に私のストライクゾーンに入って来た美少年になって来た。
 好意を寄せられるならむしろエイジのような美少年に……


 こんこん


 がここで扉がノックされる。
 カルミナさんが対応してドアを開くと、イザーガ兄さんが来ていた。


「やぁ、アルムエイド君、ミリアリアと一緒になってくれるんだね?」

「イザーガ兄さん!!」


 開口一番何言っちゃってるんですか、あなたぁっ!


「はははは、知ってるよ。ミリアリアから頼まれたんだろ? しかしミリアリアがあそこまで本気だったとはね。これはアマディアスを説得するのが一苦労だね。エシュリナーゼもそうか」

「イザーガ兄さん??」

 笑いながらそう言うイザーガ兄さんだったけど、そう言い終わった後に真顔に戻る。

「さてと、冗談はこれくらいにして早速魔力炉を起動して魔鉱石の精製を始めよう。どうやら我々には時間が少ないようなんだ」

「はいっ?」



 真剣なまなざしのイザーガ兄さんに私は思わず聞き返してしまうのだった。   

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