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第142話 すべての状況が終了して

「ふう……」 

 ようやく終わった。そう言うように誠はシートに体を預けてため息をついた。そして同時に着陸して敵機の07式の隣でライフルを構えているランの愛機『紅兎・弱×54』に目をやった。

「クバルカ中佐……終わりましたよ。僕は今回もやりました……でも……あの07式……何があったんでしょうか?パイロットがパイロキネシストであってもあそこで自爆する意味が分からないんですけど……それともどこかの法術師が助けてくれたんでしょうか?」

 誠は自信を持っていいのかどうかわかりかねていた。そして目の前に倒れている07式のパイロットが法術の暴走で自滅したのかそれとも誠を援護した謎の法術師の手柄だとその謎の法術師に感謝すべきなのか複雑な表情を浮かべていた。 

『言いてーことは分かるよ。自爆の線はねーな。全く持って意味がねー。07式を仕留めた法術師がどこかで見てるって話しなんだろ?だが、そいつを追うのは今はアタシ等の仕事じゃねーんだ。07式の登場にしろそれを阻止した法術師の存在にしろ、それは隊長のシナリオ外の乱入者だ。法術師の方にはこのまま立ち去ってくれるのを願うしかねー』 

 ランも気づいていた。誠が目の前に07式を見つめた時、明らかにその機体を捕捉している法術師の気配を感じていた。その力の感覚は先日アメリアと喫茶店でお茶を飲んだ時に感じた法術師の雰囲気と似すぎていた。

『そんな悠長なこと言ってられるのかよ!普通じゃねえぞ!こんなところでわざわざ法術を使うなんて全うな市民のすることじゃねえ!テロリストかなんだろ。すぐに追っ手をかけてだなあ』 

 かなめは誠を守ったようにも見える炎熱系の法術を使う人物が敵であると決めつけてそう言った。

『西園寺大尉!とりあえず目の前の仕事に集中!速やかに当該地域の健在な敵勢力の排除しなさい!05式広域鎮圧砲の範囲に入らなかった数機の敵がまだ抵抗の姿勢を見せているわ。それを排除なさい!』 

 アメリアの声が高らかに響いた。かなめは画面の中でサイボーグ用のゴーグルを無理やりはがして頬を膨らましている。誠もかなめの気持ちが痛いほど良くわかった。

『指揮官殿の命令だ。これから先は抵抗する勢力の排除と敵の07式を回収が私達の任務だ』 

 淡々とした調子でカウラがかなめに命じる。

『カウラちゃんは甘いわね。まあいいわ。すでに『ふさ』はこの空域に進行中よ。積荷は食料と医薬品など、これから法術兵器の効果で倒れたあらゆる人命の救助を担当することになるわ。法術兵器の効果についてはすべての観測地点で十分なアストラルダメージ値を観測しているから私達の仕事はこれで終わり。そのデータの調査はひよこちゃんのお仕事だもの』 

 アメリアはそう言うとそれまでの緊張した面持ちから変わって、柔らかい視線を誠に向ける。

『本当にこれで終わり?なんだかあっけないな。それに実際の効果が出てるかどうかは見てみないと分からねえんじゃねえのか?』 

 すでにタバコをくわえているかなめを見ながら誠も頷いていた。

『ああ、それなら大丈夫よ。サラが一目でわかるデータを送ってくれたわ。見る?』 

 アメリアはそう言うと画像を一枚転送してきた。

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