妹ができました。
久しぶり……でもなかったか、一週間も経ってない。けどジールはご機嫌斜めだ。
「ったりまえでしょーが。目が覚めたらルースとチビと三人いないんだし。トガリの父さんが教えてくれたからいいようなものの」
てなワケでお説教大会が始まった。いや、俺別に悪いことなんてなにもしてねーぞ?
まあその辺はルースがうまく説明してくれたから助かったようなものの。ズパさんの件に関しても、予言の書を持ち出してどうにかその場を乗り切れたし。
「つーかなんでラッシュだけそんな格好してるの?」パチャがなにげなく放ったその一言。
「ああこれ? 生贄は獣人の女じゃないとダメって言うから無理やり着替えさせられたんだけどな。結構動きやすくって気に入ってるんだ」
「え……」パチャだけじゃなかった。フィンも、それにイーグも、もちろんチビもすげえ冷めた目で俺を見つめていた。
「そうですか? みんなそう言いますけど、女装したラッシュさんって、とってもかわいく見えるんですけど」
唯一の味方はアスティだけだった。さすが俺のファン一号。
と言いたいところだったがそれ以外の連中には思いきり不評だったみたいだ。特に女性陣。ジールにパチャに、ずっと笑いをかみ殺しているロレンタに、でもってジャノに……って。
「ラッシュ兄貴、久しぶり!」
な ん で ジャノ が こ こ に い る ん だ !?
しかも俺のことを兄貴って言ってるし。こいつがここにいるってことは、つまり……
イーグたちが言うことには、途中見つけた岩場で一休みしようと思ったときにこいつら家族と出会ったんだとか。
「驚いたよ、こんな砂漠のど真ん中で生活している連中がいるだなんてさ。ンでもってラッシュのことも知ってたしでさらに驚いたもん」
「でもって、ジャノの母さんにお願いされたんだ。一緒に連れてってくれないかって」
最後に部屋に入ってきたトガリが話を続けた。正装している……どうやらルッツェルの旦那と話していたみたいだな。
「ありがとうラッシュ。僕らが来るまでの間になんか色々ここで遭ったみたいで。領主さんも喜んでたし、今回の件も快諾してくれたよ」
そーいや、本来はスーレイまで来て一体何をするんだったっけか……完全に忘れちまっていたな。
「ってことでさ、ラッシュ兄貴とみんなのいるリオネングって国に行けっておっ母に追い出されちゃってさ」
相変わらず能天気のジャノが、俺とルースにってことで一枚の手紙を渡した。二人で読んでくれってさ。
手紙に書かれた名前を見るなり「やっぱり……」とルースはつぶやいてた。あまりに達筆すぎて俺にはなんで書いてあるのかイマイチ分からなかったが。
で、なんでまたジャノのやつは俺のことを兄貴だなんて呼ぶようになったんだ?
「それを知るために、あの人はジャノを僕らによこしたんだ」
知る……? 一体どういう意味だ?
「ラッシュ。あの女の子……ジャノはガンデ親方の娘さんだよ」