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1:40 A.M.

「てかさ、佐々木に案内したいとこがあるんだけど」
ふと狐酔酒がそんなことを言った。

僕は普通に興味があった。
引っ越してきたばっかりだから、地元の人から案内してもらえるのはありがたい。

「へぇー。じゃあそこ行こうよ。ずっと公園ってのもアレだし。妖風からしたら公園は楽しくてしょうがないかもしれないけど」

妖風は不機嫌そうに僕を見た。
「バカにしてんの?」
「からかってるだけだよ」
「それバカにしてるってことじゃないの?」

「それにしてもさぁ!」
僕は強引に話をすり替えた。

「急になによ。びっくりした。ってかそれで誤魔化せると思ってんの?」
すり替えれてなかった。

でもスルーして続ける。
「それにしても、滑り台ってこの歳でも意外と楽しめるんだね」

「そだねー。まぁ完全に深夜テンションのおかげだろうけど」
栗原が苦笑いしながら同意した。

「さっきも言ったけど、この公園で桜と出会ったんだけどさ」
僕が話そうとするのを遮って狐酔酒が訊いてきた。

「え、なになに。桜って誰? オレその話聞いてない」
「あ、狐酔酒はトイレ行ってたね」

「桜ってことは女の子だろ? 色恋沙汰?」
「違うよ」

「えぇー。まぁいいや。んじゃその桜ちゃんって子の話を聞きながら移動するか。やっぱ夜といえば恋バナだぜ」

「いや修学旅行じゃないんだから」
妖風が冷静にツッコんだ。

「まあまあ細かいことはいいじゃねぇか。さあ、恋バナれよ佐々木」

「恋バナれってなに。……まぁいいや。色恋話ではないけど、せっかくだし話すよ」
そうして僕たちは移動し始めた。

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