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MP獲得。


 

「…まじん……?マジンって、魔神の
ことか?」


 そう聞き返した、その瞬間っ、


「うぐっ!?」


 体内。何かが物凄い勢いで全身を駆け巡った。

 おそらくは七種の《器礎魔力》が揃ったことで、俺の魔力が本格的な循環を始めたのだ。

 その証拠に『完成した俺という魔力の器』にドプドプと粘く注がれるエネルギーを感じた。

 それは器の底にたどり着いた先から熱を吹き上げ──「かっ…ぐ、が、ハァ…ッ!」

 息が熱い。異様に。吹き出たはずの汗も蒸気となって消えていく。
 こうして全身くまなく渇いているはずなのに、反比例して急速に満たされていくような…この不思議な感覚なら前世でも経験した…が、これ程の苦痛は伴わなかった。


『『MP』の注入が完了しました。』


 …一体、どれ程の量が注がれたんだ?


『それに付随してスキル【MPシールド】と【MP変換】を授けます』


 これら二つはMPを得た者なら必ず取得するスキルとなっている。
 つまり『俺という器』が正式に『MP』で満たされた証にもなる。という訳で、


「早速見るか。ステータス。」


=========ステータス=========


名前 平均次(たいらきんじ)

MP 7660/7660 new!

《基礎魔力》

攻(M)60
防(F)15
知(S)45
精(G)10
速(神)70
技(神)70
運   10

《スキル》

【MPシールドLV7】【MP変換LVー】【暗算LV2】【機械操作LV2】【語学力LV2】【韋駄天LV2】【大解析LV2】【魔力分身LV3】【斬撃魔効LV3】【刺突魔効LV3】【打撃魔効LV2】【衝撃魔効LV2】

《称号》

『魔神の器』new!『英断者』『最速者』『武芸者』『神知者』『強敵』『破壊神』new!

《重要アイテム》

『ムカデの脚』

=========================


 遂に完成した。
 俺のステータスが。

 MPの項目が追加された影響なのか、スキルにはスキルレベルも設定されていた。
 これは俺の魔力特性が決まり、成長する準備が整った事を意味している。
 ただスキルレベルは普通だとレベル1からのスタートのはず。なのにどのスキルも既に幾らか成長した状態で表示されていて、これは…Sランク以上の器礎魔力を複数獲得した影響か?もしそうなら、

「…試練の結果次第でこんなにも優遇されるもんなんだな…」

 前世の苦労を思うと少し悔しく感じなくもない。そう思っていると、


『…それはどうでしょう…』

「ん?おい謎の声、今なんか言ったか?」

 声が小さく聞き取れなかった。

『いいえ。お気になさらず。』

「…?」

 まあいい。ともかくこれで『俺なりの最強ビルド』に数歩近付き、()()()()()()
 そう、このステータスを見て分かる通り、『攻』魔力を高い水準で得られたはいいが、その代償として『知』魔力と『精』魔力が大幅に下がる事になってしまった。だからの半歩後退だ。


「それでもこれは想像以上だな…」


 『攻』魔力の試練の内部成績については最後までどうなるか分からなかったが、最終的にはMランクとなってくれた。
 つまり結果としては、俺が得たチートな器礎魔力の中でも上位性能となった訳だ。
 神ランクに比べれば確かに格下だが、この『攻』魔力は、他の試練で内部成績を散々下げまくってたところを幸運の試練でやっとプラスが付いてたような器礎魔力。それがこんなに…というか、Sランクにするのが当初の目標だった訳だから、

(この結果は万々歳と言っていいだろう!)

 『防』魔力はまあ、お察しだ。諸事情により最初から捨てていた。最低ランクじゃないだけでも有り難いことだ。
 それに、これは何かと補填が効く器礎魔力だ。実際にその当てもある。

(だから、今はこれでいい)

 『知』魔力は一時は神ランクまで上り詰めていたがSランクにまで降格してしまっていた。
 でも俺は、どうしても『攻』魔力を優先して上げたかったし、その試練で良い成績を上げるとこうして『知』魔力が下がる事も分かっていた。
 つまりはこれでいい…というか、当初の目標はSランクだったしな。これは思惑通り、相当に良い部類だ。

(そもそも神ランクとかMランクというのが異常なんだ。Sランク自体、前世では殆んど見なかった訳だし)

 『精』魔力は…うーーん。最低ランクかぁ。これは正直言うと厄介だ。当初の目標ではせめてDかEのランクは確保したいと思っていた。
 いや、まあ、『攻』魔力の試練で良い成績をとりすぎればこうして下がる設定なのは分かってた事だし、こうなるのは当然っちゃ当然なんだけど。
 最低ランクとなると魔法攻撃で一撃死したり、デバフにもかかりやすくなったりと…やっぱり困る。
 そしてこの魔力を才能とする『回復』や『防御』の魔法が使えるジョブにも多分就けない。

(これを何とかするのは…ハァ…骨が折れそうだな)


 『速』魔力については…うん、やったぜ!残したぞ神ランク!これを持つ者は世界広しと言え俺だけに違いない!
 しかも攻撃力に物理的なスピードを合わせる事で、更なるダメージ効果が期待出来る。回避することで防御力の低さもカバー出来る。ああ夢が広がる!魔法?デバフ?全部避けたるわぃ!

(ってのは嘘です。範囲で来られたらマジ怖いです。なので次いこう次)


 『技』魔力、これもやったぜ神ランク!俺みたいに元々が不器用で、しかも荒事に向かない性格だったヤツには得られるはずもなかったランクだろう。
 実際に前世の俺はDランクっていう、平凡極まる成長補正を一応持っていたのだが、それが反映されてる感じはあまりしなかったな。きっとその程度の『技』魔力じゃ俺の不器用を矯正するには至らなかったんだろう。
 それが今世では神ランクなんてものを得られた。今後どう自分が育っていくのか…

(それは想像も出来ないけども、楽しみだ!)


 『運』魔力…は、10か。これって最低値なんだろうな。その上で、この器礎魔力については成長補正なんてものはない。つまり今後上がる事もない。俺は一生、この最低値である10をキープし続ける。
 だがそれでいい。その犠牲のおかげで他の器礎魔力が上がったのだから。それに…

(俺には『二周目知識チート』があるからな)

 それを活用すれば?モンスタードロップなんかに頼らなくていい。隠された宝箱や確定ドロップするボスを誰より先に発見すれば良いことだ。
 幸運に導かれた出会いだっていらない。埋もれた人材を誰よりも先にお手付きすればいいだけの事。
 
 その全部が可能なんだ。これって凄すぎてすごい事だった。

 それに、行動力がいまいちだった分、前世の俺は動かないなりに情報収集には気を回していたからな。
 まあそれも有能な人材の場合は既に死んだ後だったり、闇堕ちしてたり、誰かの手先になってたり、アイテムの場合だと先に取られてたり、しかも使われてロストしたりと、事後の情報ばかりだったが…。
 でも、そんな役に立たなかった情報も二周目人生でなら活かせるはずで、その気になれば全て、俺のものに出来る!っていうチートの数々が霞んで見えるほどにインパクトが凄いのがこの…


「『MP』が7660?だと?これで初期値か…頑張った甲斐あった…って言うより…うーん。チート過ぎてさすがに引くぞ…」


 …なんて。

 暢気な感想をこぼしていた自分をぶん殴ってやりたい。


 そう思うのはこのすぐ後の事だった。

 


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