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湖の社交場

最近の流行りは湖での社交とあって、湖に近づくにつれ乗馬や、馬車の貴族達が目につく様になって来ました。

私は、ビッツを軽くひと蹴りすると、お兄様方を置いて駆け出しました。淑女達は馬車や、あるいは乗馬でもゆっくり歩かせる事が多い中、私は胸元を揺らして、黒髪をたなびかせて風を切って湖の畔まで駆けていきました。案の定、慌てたお兄様方が、わたくしの後をマリー、アンナマリーと呼びかけながら追いかけて来ましたわ。

これで第一印象はバッチリですわ。ほら、早速獲物がやって来ましたわ。


「やあ!アンソニーに、マイケル。久しぶりだね。とは言っても4日ぶりか?ははは。…そちらのお嬢様は、お初お目見えだが。見事な乗馬でしたね。際立っていましたよ。」

アンソニーお兄様はわたくしを睨みつけながら、金髪の爽やかな青年にご挨拶しました。

「…キース、君も来ていたのかい?今日は私達の大事な姫の付き添いなんだ。妹のアンナマリーだ。今度社交界デビューの予定だ。」


キース、キース。確かウインダン伯爵家の嫡男のキースね?アンソニーお兄様の同級生だったはず。わたくしは得意の邪気のない微笑みを浮かべて、馬上でキースからの指先での挨拶を受けたわ。しっとりとした、爪の手入れに使ったオイルの、少し色づく甘い香りをキースは感じたかしら?

キースは指先からゆっくりと私を辿って、胸元で少し時間を置いてから、射抜く様な眼差しを私に向けたわ。キースは緑色の瞳なのね、メモメモ。

「…お噂の妹君でしたか。私はキース ウインダンです。デビュー前にひと目お会いできるとは幸運でした。デビューのエスコート役はもうお決まりですか?」


わたくしが困った様にお兄様へ目線を上げると、アンソニーお兄様が隣に馬をつけて言ったわ。

「エスコート役は僕が父に命じられてるんだ。アンナマリーに悪い虫をつけるわけにいかないからね。」

そう言いながらキース様をジロリと睨みつけると、キース様は参ったな、私は悪い虫じゃないんだがと苦笑いしつつも、私の隣に馬をつけました。

「アンナマリー様、君は馬が好きと見える。どうだい?私と早駆けしないか?良いだろう?アンソニー。」


丁度その時に、私がお兄様方に仕込んでおいたプレゼントが届いたわ。


「まぁ!アンナマリーじゃないの⁉︎ それにアンソニーに、マイケル、お久しぶりね?」

華麗に登場したのはダリアにリリー。私の仲良しのお姉様たち。ひょんなきっかけで仲良くなって、わたくしの野望を知っている協力者のお二人なの。

今日はお兄様達を足止めしてくれる様に頼んでおいたわ。うふふふ、なんて良いタイミングかしら?

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