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第15話 魅惑の瞳に捕らえられ

ゆっくりとねっとりと、互いの息遣いを合わせるようにして唇を重ねる。


俺のそんな濃厚なキスに、隼もだんだんと溢れんばかりの欲を隠せなくなってきていた。

俺は唇を隼の唇から耳元、首元、鎖骨に移動させる。


そのたびに隼は小さく息を漏らす。



「……あの日以来…何度もお前とまたこうしたいと思っていたよ。」


うっとりとした表情の隼の目を覗き込んで言う。


「あの日のお前を思い出しては何度も抜いた。そして抜く度にお前への気持ちは募るばかりだった……他の人には見せないお前の一面を、俺は独り占めできているからな」


おかしな話だ。

隼と一度でも寝ることができたなら、俺はこいつへの気持ちを諦めるはずだった。

事の始まりに関しても、一度だけ、キスをさせてくれと俺が頼み込んだことだった。

それなのに………



「…俺は、欲張りだな…」

気がついたら独りでに呟いていた。


隼は大きくて綺麗な目を俺から逸らさなかった。


「…俺もだよ……俺も、あの日のことを思い出して一人でしてた。……また優に抱かれたいって……思っちゃう自分がいた…」


照れたような表情のまま、しかし隼はまだ俺から目を離さなかった。

その目はまるで俺を捕えるかのようで…

澄んだ漆黒の瞳の奥で、密かな炎が揺れているようにも見えた。



きっと隼は、無意識なのだろう。


しかし、こいつのこういう表情や目は、人を惑わす魅力がある。


そんな魅惑に取り憑かれた俺は、こいつの一番近くにいる親友という、最も拷問的な立場にいた。



そう、何人もを簡単に虜にしてしまう魔性。

純粋無垢な笑顔の影に隠れる微かな色気。

老若男女関係なく、こいつの魅力に踊らされる……


しかし当本人は、誰かを誘惑しているつもりなど毛頭ない。

優しく思いやりに溢れた人当たりの良い男……

それなのに、自分の魅力にもそれに取り憑かれた相手にも、どこか興味が無さそうな瞳。

近いようで遠い、届くようで届かない…
そんなもどかしさもこいつの魅力を増しているのだと思う。


ただ、今目の前で、こいつは俺に欲情している。


誰にも靡かない魔性の男が、性欲に駆られているだけかもしれないとはいえ、俺に対してその妖艶な瞳を向けている。


自ら狙いを定めて色の罠を仕掛けてきている……

そんな絶景を、俺は集中して眺めていた。


最高の優越感だ……


俺は再び隼の唇を塞ぐ。



「……んっ………」

こいつの甘美な声は俺の思考を途絶えさせる。

「……隼。俺とやりたくて、仕方なかったんだろ?」

俺は言葉を紡ぎながら、興奮で高鳴る鼓動と速まる脈を言葉に載せた。


「なあ、隼。答えろよ」

隼の体を指でなぞり、鎖骨を貪りながら言う。

今の俺は、まるで獣そのものだ……



「………あっいたっ……」


俺は勢いづいた自分の興奮を止めることもせず、隼の鎖骨を強く吸った。


「……んっ……優……」

隼は俺の体を軽く押しのける。


しかし、それはあくまでポーズで、本心では辞めてほしくないと思っているのが明らかだった。



「…隼。」

「…したかった…俺あの日からずっと、優としたかった………」


涙目になりながら隼は訴えてくる。


隼はその言葉と同時に、俺の首に手を回し、顔を近づける。


そしてそのまま、隼に唇を奪われた。




しばらく続く濃密なキス。

隼が舌を激しく動かし俺がそれを受け止める。

普段とは真逆なこの構造。


俺も隼も、互いのモノをこれでもかというほど盛り上げながら、この時間を無心で過ごしていた。

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