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第14話 そんなところも、好きだ

何とか体の熱を収めた俺は、ユニットバスから出た。


隼は既に雨宮との通話を終えていた。


「もう終わったのか。早いな」

「優こそ、思ったよりも時間かかったね。のぼせたりしてない?大丈夫?」


俺は隼への不純な感情と戦っていたのに、当事者のこいつときたら純水に俺の体調の心配をしている。


……はやりあの夜のことは何かの間違いでは……

そう思わずにはいられなかったが、俺は隼に何も悟られまいと努力する。


「大丈夫だ。…少し考え事をしていただけだ」


そう答えながら自分のベッドの上に座り、ペットボトルの水に口をつける。

「あっ優!それ俺の…」


隼が気づいたときには俺はすでに3口ほど水を飲み込んでしまっていた。


「ああ…すまない」


俺は咄嗟に口からペットボトルを離した。

「大丈夫だよ。気にしないで」


いつものようなテンションで隼は言う。

しかし俺は、隼の口づけを飲んでしまったという事実に、先程収めたはずの邪な感情が再び湧いてしまった。



「隼、お前は喉乾かないのか?」

「ちょっとだけ乾いてるよ。けどホント気にしないで」

「じゃあこれ飲ませてやろうか?」

「?うん?自分で飲めるよ?」

「口移ししてみるか」


俺が突然真面目な顔で言ったためか、隼は驚いた顔をしてその後すぐに笑った。


「口移しって……!なんだっけ?なんかそんな動物いたよね?親が子供に口移しで何でもあげる動物」

「色んな動物がやってるんじゃないか?」

「えーそうだっけ?」

「ああ。……人間もな。」


俺はそう言って、隣のベッドに座り楽しそうにしている隼の横に移動し距離を詰めた。


「隼、口開けろ」

「え、まさかホントにする気じゃ…」

「いいから」

「あっ!ちょっと……」


俺は隼の制止を聞かず、自分の指で隼の口を軽く開けた。

そのまま俺は再びペットボトルに口をつけ、口内に水を含んだ。

隼の驚く顔を横目に、俺は自分の口から隼の口へ水を流し込んだ。



そしてそのまますかさず舌を動かす。


隼は初めこそ抵抗しようとしていたが、次第に自ら口を開き、俺の舌の動きに合わせて自分の舌を絡ませてきた。




「……はぁ…」


隼の口から甘い吐息が漏れる。


「なあ隼…前に俺が言ったこと、覚えてるか?」

俺は隼の肉感的な唇に視線を定めたまま、あの日の話をする。


「うん。覚えてるよ…」

「隼、俺は今、とてつもなくお前としたい。お前はどうなんだ?」


隼の大きな瞳が揺らぐ。

こいつの心の動きを動かしているようだった。


「したくないのなら別にいい。俺は我慢する」


俺がそう言葉を重ねると、隼は「あ、いや…」とすかさず否定した。


理性が邪魔して素直にしたいとは言えないが、しなくてもいいと言われるとつい焦ってしまう。

そんな隼の気持ちが手に取るように分かった。


「隼、明日はフリーだぞ。それに俺たち、この合宿中は少なくとも一度も抜くことすらできなかったんだ。…お前も実は溜まってるんじゃないのか?」

「……そりゃ…そうだけど…」

「別に本番をしなくてもいい。とりあえず、互いの欲を発散させてほしい」

「…うん…」

「わかってくれるか?」

「わかるよ、わかるけど…」


なんだか歯切れが悪い。

何を言い淀んでいるのだろうか?


「どうした?隼。やっぱり嫌か」

「いや!嫌とかじゃなくて…」

「じゃあなんだ?」


もじもじしていた隼は言う決心がついたのか、俺の方へ体を向けて恥じらうような顔をして言う。

「また…あの日みたいになっちゃうのかなって思って……あの日、すごい気持ちよかったから…俺、自分じゃないみたいになってて…後から思い出してすごい恥ずかしくなってた……けど、優とまたしたら…多分すごい気持ちよくなって、またあんな風になっちゃうのかなって…」


隼が俺とするのを躊躇っていたのはこういう理由だったらしい。


確かにあの日、隼は理性を失い俺の前で乱れまくっていた。

しかし俺はむしろ、そんな隼を思い出しては何度も抜いていたのだが…


「隼、俺にまたあの姿を見せてくれないか?」

「えっ」

「恥ずかしがる必要などない。俺はあんな隼を見て、更にお前を好きになった。」

「……すきって……」

「だからお前は、また自分の快楽に素直になればいい」


気にしている隼を慰めるように俺は優しく隼を抱きしめた。

俺より少し小さいこいつの体温や呼吸、脈が感じ取れた。


好きな奴のことは、抱きしめただけでもこんなに幸福感に包まれるのか…


俺は溢れんばかりの気持ちを自覚しながら、隼を優しくゆっくりとベッドに押し倒した。

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