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なんだかよく分からない大会

「もう疲れた…ちょっと休憩しようよ、アロル」
「もうちょっとだから頑張ろうぜ」

 俺達は今、ヌントゥク山の頂上付近にいる。急な斜面を登ってやっとここまで辿り着いた。ここに来る途中に、立て札があり、「ここから先は立ち入り禁止」と書かれていたが、行ってはいけないと言われると行きたくなるのが人情というものだ。どうせ、たいした理由ではないだろう。俺達は立て札を無視してここまで来てしまった。しばらく歩き、やっと俺達は山の頂上に到着した。

「ついにやったな!サラ」
「うん、気持ちいいー。ん?あれなんだろう」

 サラが魔法陣のようなものを見つけた。俺達は近づいてみた。

「ちょっとのっかってみようか?サラ」
「えー、でもなんか不気味」
「二人同時に乗ってみようぜ!せーの」

 俺達は二人同時に魔法陣の上にのってみた。するといきなり目の前が真っ白になった。そして、気が付くと俺達はどこだかわからない砂漠のど真ん中にワープさせられていた。

「なんか前にもこんな事あったよねー」

 サラはうんざりした表情で言った。

「あった。あの時は海に浮かぶ小島だったな」
「これからどうする?ここがどこかもわからないんじゃ、進みようがないよね」

 俺達はてきとうに進んでみる事にした。しかし、行けども行けども砂ばかりで他には何も見えてこない。困り果てて座りこんでいると、1匹のドラゴンが飛んできた。よく見るとなんとバホムーアだった。

「よぉ、久しぶりだな、アロルとサラ。こんな所で何やってるんだ?」

 バホムーアは笑いながら尋ねた。

「ちょうどいい所に来てくれたな、バホムーア!実は移動魔法でここへ飛ばされちゃって困ってたとこなんだ」

 俺は喜びの声をあげた。

「そういう事か。だったら近くの町まで運んでやろう。背中に乗りな」
「ありがとう」

 サラはペコリと頭を下げた。
 俺達がバホムーアの背中に乗ると、颯爽と飛び始めた。前にもモンスターに乗って空を飛んだ事があったが、やはり気持ちのいいものだ。すぐに砂漠を抜けて「シルベローヌ」という町に着いた。町に降り立つと皆バホムーアを見て驚き、おののいていた。

「ド、ドラゴンだ…ど、どうしよう?逃げるか?」
「こ、ころされるー!助けてー」

 町の人達はバホムーアに過剰に反応している。

「落ち着いて下さい。このドラゴンは悪い事はしませんから」

 俺は混乱を鎮めようとした。しかし、恐怖はすぐに伝染して、俺達の周りには誰もいなくなってしまった。

「俺は邪魔みたいだな、これで失礼するぜ。元気でな、お前達」
「ここまでありがとな、バホムーアも元気で」

 そう言うと俺は手を振ってバホムーアを見送った。
 今日この町ではある大会が開催されるという事で大変にぎわっていた。どういう大会なのかよくわからなかったが、なんとなく楽しそうだったので、俺とサラは参加してみる事にした。

「えー、お集まりの皆さま、大変長らくお待たせしました。それではさっそく始めたいと思います!今日競われる種目は3種目!まず一つ目は『誰が1番まばたきをしないでいられるか選手権』でーす」

 なんじゃそれ?そんな競技聞いた事がない。その競技で自分がどのぐらいのレベルなのか全く見当がつかないが、とにかくやってみる事にした。

「皆さん準備はいいですかー、それでは始め!」

 皆ぱっちりと目を開けている。俺もうっかりまばたきをしてしまわないように気を使った。意外とハードな競技だ。だんだん目が痛くなってきた。

「はい、そこのあなた今まばたきしましたねー、失格です」
「え?してましたか?自分では気がつきませんでした」

 次々に脱落していく参加者達。俺は痛いのを堪えて必死に目を開けている。ふと、「俺なんでこんなくだらない事に真剣になって頑張ってるんだろ?」と疑問に思ってしまったが、邪念を振り払い、神経を研ぎ澄まして、集中した。
 残るは俺ともう一人だけだ。よし!1番までもうすぐそこだ!頑張れ、自分!
 今度こそは1番になれるかと思われた。しかし…

「ぎゃははは、ひひひひ」

 俺はいきなり笑いだしてしまった。どういうわけだ?誰かの魔法か?俺はまばたきをしてしまい失格となった。

「おしかったねアロル。もう少しで1番だったのに」
「それが…誰かに妨害されたようなんだ…いきなり笑わされてしまった」
「え?そうだったの?なんかおかしいと思った」

 犯人がわからぬまま次の種目になった。次はパンチングマシンでパンチ力を競う種目のようだ。前から自分がどの程度のパンチ力なのか知りたいと思っていた。自分の力を知るチャンスだ!でも、もしかしたらまた笑わされてしまうかもしれない…しかし、仮に笑わされたとしてもパンチだったら特に影響はないかな?

「それではサラ選手、パンチを打って下さい!」
「はい。どりゃーー!!!」

 パンチングマシンのメーターは150をさしている。

「これはすごい数字が出ました!今のところ3番目の強さです」
「3番か…素直に喜べないな…」

 サラはガッカリした様子だ。

「いいかサラ、パンチってのはな、こうやって打つんだ!」

 俺は自慢しながらパンチを放った。

「ふーん」

 少しして、俺の順番が回ってきた。
 俺は肩をブンブン回した。やる気全開だ!

「ふー、じゃあいくぜ!はーー!!!」

 俺がパンチを打った瞬間!

「はっくしょん」

 なぜかくしゃみが出てしまった。チョンとパンチングマシンに触れた。

「はい、アロルさんは10ポイントですね」
「そんなー!今のなし!もう一回やらせてください」
「チャンスは1回きりです」

 俺はトボトボと席に戻っていった。

「きゃははは、あんなに偉っそうな事言っといて私の15分の1の力じゃなーい!はー、おもしろい」

 サラがバカにしてきたが反論する気にはなれなかった。くそっ、なんてついてないんだ。
 最後は魔力の総量が誰が1番高いかを競う競技のようだ。これは競技というよりただの検査だな。でも魔力の総量だったら自信がある。前にある施設で底上げしてもらったしな。今度はいけるかも。
 次々に測定を終えて、俺に順番が回ってきた。

「それでは測定器に魔力をこめて下さい」
「こうですか?」

 測定器は300をさした。

「これはすごい!ぶっちぎりの1番です!」

 やったぁ!ついに1番になれた!あと何人か残ってるけど、もう俺の勝利は確実だろう!今度こそきめてやったぜ!

「えー、ただ今、検査員から報告がありました。アロルさんはドーピングの疑いがあるため失格とします」

 え?変な因縁をつけるんじゃねぇー、ドーピングなんてしてねーよ!

「あの、何かの間違いじゃないですか?」
「アロルさん、以前どこかで魔力の総量の底上げをなさった事がありませんか?」

 はっ!あれの事かー!

「あります」

 俺はうつむいて席に戻った。
 サラも魔力の底上げを行っていたため、競技には参加しなかった。
 全ての競技が終了して、大会は閉幕となった。俺達が帰ろうとすると、20才くらいの男が話しかけてきた。

「やあアロル君、今日は残念だったね」
「誰だい?あんた」
「俺はゲスラという者だ。大会で君に魔法をかけて恥ずかしい思いをさせてやった事に気づいてたかい?」
「お前が犯人だったのか…なぜそんな事をした!?」
「君がものすごい美人と仲良くしてたんでちょっとからかってやったのさ」

 サラの事か…美人すぎるというのも困りものだぜ。

「そんな理由で蹴落としやがったのか…許せん!」

 俺はゲスラに殴りかかった。ゲスラはヒョイとよけて、回し蹴りを放ってきた。俺は腕でガードすると、前蹴りで反撃した。ゲスラは防御したが、当たり所が悪かったのか腕を痛そうにしている。そのチャンスを逃すまいと足刀を放った。攻撃が当たる瞬間…

「はっくしょん」

 またくしゃみがでてしまった。これもゲスラの魔法だったのか…結局蹴りは当たらず、ゲスラが右ストレートを打ってきた。俺は体を左にずらしてよけると、俺も右ストレートを打とうとした。しかし…

「ぎゃははは、きひひひ」

 また、俺は笑いだしてしまった。意外と厄介な魔法だ…しょうがない俺も魔法を使うか。

「メサオ!」

 ゲスラは炎の中に埋もれた。

「ひぃえー、た、たすけてー」

 ゲスラは叫び声をあげた。

「もう二度と悪事に手を染めないと誓うか?」

 でもコイツそこまで悪い事してないよな?まぁいっか!

「し、しません。だからなんとかしてー」

 俺は炎を消してやった。
 ゲスラは火傷を負った体で、走って逃げていった。

「今回は私の美貌が生んでしまった悲劇だったのね…まったく、美しすぎるのも罪なものね」

 自分で言うなよ、サラ。

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