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14話

カーテンの隙間から差し込む陽の光に、微睡みながら目を覚ます。
自然な目覚めに、体も起きることを嫌がらず、すんなりと起き上がる。
小さくアクビをしながら、固まった体を思い切り伸ばせば、しっかりと目が覚めた。

「よしっ!」

今日もやるぞ!と言う気合を込めて、ベッドから降りる。
クローゼットから着る服を見繕い、着替えている間に、妖精達も起き出してきていた。

「おはよー」
「ココロ、おはよー」
「みんな、おはよ」

部屋を出て、トントンと軽快に階段を降りていき、洗面所へ向かった。
身支度を整えて、使用したタオルを洗濯機に放り込む。中を覗くと、半分程溜まっていた。

寝室へ戻り、今まで着ていた夜着と、ベッドから外したシーツを手に取り洗濯機の元へ戻る。
まとめて洗濯機に入れて扉を閉め、選択をスタートさせる。洗剤類は自動投入機能が付いているので便利だ。
グルングルンと、洗濯機の中で回り始める洗濯物。それを確認して、キッチンへ向かった。

冷蔵庫から、卵液に漬けたパンとヨーグルト、レタスに玉ねぎ、トマト。冷凍庫から冷凍マンゴーを取り出して朝食作りを始める。

レタスを手で千切りながら皿に乗せる。
トマトを半分くし切りにする。半分はラップをして冷蔵庫に戻した。薄切りにした玉ねぎと一緒にレタスの上に乗せた。

ヨーグルトと少しだけ解凍したマンゴー、それからハチミツをミキサーにかける。
オリーブオリーブをしいたフライパンを軽く熱して、パンを焼く。フワッと食欲をそそるいい香りが漂った。
パンをひっくり返せば、程よく焦げ目が付いていて美味しそうだ。
反対側が焦げすぎないうちに皿へ移し、粉砂糖をふる。
止まっていたミキサーから器にヨーグルトを移せば、準備万端だ。

「んー!このふわとろ感堪んない…」

優雅にナイフとフォークを使って…なんて面倒なことはせず、フォークを使ってフレンチトーストを小さくしながら口へ運び、その食感に感動する。
合間にサラダを食べながら、気がつけばフレンチトーストを完食していた。…また作ろう。

食後のコーヒーを飲みながら、今日の予定を組み立てる。
まず決まっているのはケーキ作り。だが始めるにはまだ早い。
畑の様子を見て必要なら水やり。草取りはまだしばらく必要無いはずだ。
それからクッキーの世話。たまには外出以外で外に出してあげても良いだろう。
そして……?

「あれ、これだけか…」

畑は状態にもよるが、時間はそうかからないだろう。クッキーの世話なんて数分だ。
ケーキ作りは…自己満足なので、やる事とはまた違うが。
まぁ、やっている内に色々増えるだろうと、洗濯機の止まる音が聞こえたので、早速掃除洗濯を加えた。


洗濯機から洗濯物を取り出して、再度寝室へ戻る。
隣の収納部屋から、室内物干しを引っ張り出し、洗い終えた洗濯物を干していく。
ココロは部屋干ししかしたことが無い。実家が元々部屋干し派だったし、一人暮らしで住んでいた所は車の交通量が多く、外干しには向かなかった。
そして何より、春先の恐怖があったからだ。
その恐怖の対象が、家のすぐ近くにあるのだから、シーズンは過ぎた(はず)とは言え、今更外に干す勇気は無い。

洗濯物を干し終えて、除湿器のスイッチを入れる。
新しいシーツを広げて、ベッドに敷いていく。これはベッドを贈られたとき、予備として一緒についてきた物だ。しばらくは新しいシーツを買う必要は無さそうだ。

2階から1階にかけて掃除機をかけ、終わったら食器を洗い片付ける。

「よし、おーわりっ」

ザッとだが家事終了。これを毎日欠かさなければ、後々大変な思いをする事もないだろう。
…いや、前はする時間無かっただけだけど……さ

家の中の事を終え、掃除が終わるまでは邪魔しちゃいけないからと、カウンターに並んでちょこんと座っていた妖精達と一緒に、外へ出る。

「んー!やっぱ外の空気も気持ちいいねぇ」
「ねー」

これがマイナスイオンか。いや、分からないけど。
深呼吸しながら、プランターに植えたイチゴに目を向ける。

「あれ…?」

すぐに気がついた違和感。きのうに比べて、大きくなっている。
植物が成長するのは当たり前。大きくなるのは普通。…なのだが。

「大きくなりすぎじゃない?」

そう口に出して呟く。
とは言え、劇的に大きくなりました!実もゴロゴロついてます!なーんて事にはなっていない。実がゴロゴロ…は魅力的だが。
1日で育つには、大きくなりすぎているのだ。
イチゴだけだと何とも言えないので、畑に足を運ぶ。結果はこちらも同じ。明らかなのが、種を植えたところの殆どが、発芽しているのだ。

「もしかして、成長速度が…速い?」

発芽には少なくとも3日は必要だ。1日でとは速すぎる。
けれどここは、地球とは違う。そもそも、気候や季節関係なく植えているのだから、今更成長速度について文句言う必要もないと、結論づけた。


落ち着いてからルトとレズに、水を必要としている所が無いか確認してもらい、あればスイに水やりをおねがいする。
泥がはねて葉や茎を汚してしまったり、種を流してしまったりしないように、必要な量を地中に生み出すという新技を見せてくれた(見えないけど)。


クッキーのもとへ向かい、ブラッシングしてから外へ連れ出す。
畑には入らないように、それ以外は自由にしてていいと伝えると、嬉しそうにパカパカと蹄を鳴らしながら牧草へ向かっていく。水が飲みたくなったときのために、出入り口を開けたままにしておく。

「ココロココロ!」
「ん?」

しばらくクッキーを見守っていると、妖精達がワラワラと集まってきた。
何やら慌てている。けれど表情から、困ったことではない事が読み取れる。

「みんな、どうしたの?」
「すごいすごい!すごいの!」
「おうちのよこ!きて!」

家の横?何かあっただろうか。首をかしげながら、手を引く妖精達についていく。
何もなかった気がすると思っていたが、辿り着くとそれが何なのかすぐに分かった。

「えぇ!?これ、どういう事!?」

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