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38話〜勇者の証‥前編

 ここは名もなき城の近くの森。あれから数時間が経ち、テリオスはハクリュウ達がいる、城の近くの森に着いた。

(ん〜、確かこの辺って言ってたけど……ここで間違いないはず。もう少し奥を探してみるか)

 そう思いながら歩いていると、2台の荷馬車をみつけ近づいていった。

 アリスティアは誰かが自分達の所に近づいてくる事に気づき、警戒しながら荷馬車の陰から覗き込んでみた。

(誰だいったい?こんな時間に……それに、何で堂々と近づいてくるんだ?)

 そう思いながら見ていると、テリオスはアリスティアの気配に気がつき声をかけた。

「こんな遅くに申し訳ない。ある人から頼まれ、勇者様達に話があり来たのだが。勇者様達がおられるのはここで間違いないか?」

「お前は何者だ?何故、ここにいる事が分かった?」

「それは、今から詳しく話すつもりだ。それで、早急に話さなければならないのだが?」

「早急にだと……いったい、お前は何なんだ?」

「名乗らなければならないのだろうが。それを話すのは、ちょっと待ってくれないか。それと、聞きたいんだが。ここに、ディアナかハウベルトはいるのか?」

 そう聞くとアリスティアは不思議そうに、

「お前……ディアナとハウベルトの知り合いなのか?」

 アリスティアがテリオスと話をしていると、寝ていたハウベルトが起きてきて、

「ふぁ〜、アリスティア。やたらと賑やかだが、何かあったのか?それに、聞いた事がある声で、俺の名前が呼ばれたような気がしたんだが……」

 そう言いながら荷馬車から降り、アリスティアの方に近寄ってきた。

 ハウベルトはアリスティアと話している男をみて、

「あっ!えっ?何故、テリオス様がここに?」

 ハウベルトは慌てて、荷馬車の中で寝ているディアナを起こしに向かった。

「ははははは!あの2人は、相変わらずみたいだな」

 そうテリオスが言ったあと、荷馬車の中から眠そうな顔でディアナが出てきた。

「ん〜、うるさいぞハウベルト。何かあったのか……って……」

 ディアナはテリオスの顔見るなり慌てて、

「何故、ここにテリオス様がいるんだ?」

「やはり知り合いなのか?というか、何故様をつける?」

「あっ、えっとですね……このお方は、ブラックレギオンの王子テリオス・ブラック様です」

「はっ?あっ、えっーと、確か熱血王子って言ってなかったか?どう見ても、そうは見えないんだが?それとブラックレギオンの王子様とは知らずこれは失礼しました」

 そう言いながら頭を下げてテリオスの顔をじーっと見つめた。

「アリスティアって、テリオス様みたいなのが好みだったとか?」

「あっ!それは……いやただ、お前たちが言っていた感じと違ってたからみていただけだ」

 そう言いながらアリスティアが溜息をつくと、テリオスは思い出したように、

「それはいいとして、ディアナ、ハウベルト。皆を起こせるか?」

 そう言うと頷き皆を起こしに行った。

 そして眠そうな顔で皆が起きてきて、ラシェルがテリオスを見ると、

「これはもしや、テリオス王子様ではないでしょうか?あっ、申し遅れましたが、私は、ホワイトガーデンの王女ラシェルと申します。以前、我が城にお越しになった時に、遠くから見ていてお顔を存じておりました」

「ほぉ、あなたが、あの有名な引きこもり姫様ですかな?」

「あっ、それは……はぁ」

 そう言うと小さな溜息をついた。

 それから皆が起きてきて、テリオスは話し始めた。

「俺は、ある人に頼まれてここにきた。ただ、それは人なのかは不明なのだがな。そして、今からその者の話を、皆で一緒に聞いてほしい!」

 テリオスはバックの中から水晶を取り出した。ハクリュウはその水晶をみて、

「その水晶は、もしかして?」

「おや?君はこの水晶の事を知っているのかな?まぁその話は後だ」

 テリオスは水晶に話し掛けた。

「おい、とりあえず言われた通りにここに届けたが、これからどうするんだ?」

「やあ、ありがとうテリオス!今から話す事は、皆が集まっている、この場でないといけない事なんでね。先ずは、僕は誰かという所からがいいかな?僕は皆からみて、神と呼ぶ存在と言うべきかな?」

「神様ってことは、私達を作られた方って事ですか?」

 シャナが聞くと神様は、

「んー、それが違うんだなぁ。神にも色々といてね。まぁ僕は、それほど位が高い方ではないんだよね。あっ、そうだ名前まだだったね。僕の名前はホープ、改めてよろしくね。それと、僕の事はホープでいいよ。僕どちらかというと堅苦しいのが苦手なんだ」

「ホープ、改めてよろしく。それで大事な話って、何なんですか?」

 ハクリュウが聞くと神様は、

「その事についてなんだけど。今からもう一つの水晶と繋ぐから、僕からその事を話す前に、話をして欲しい人がいるんだけど」

 ホープがそう言うと、水晶から女性の声が聞こえてきた。

「やっと、繋がったようじゃのぉ。私は、ブラックレギオンの大臣カプリアです」

「まっ、まさか!カプリア、あなたが何故?」

 テリオスが聞くとハウベルトが、

「カプリア様は、確かオルドパルスと城にいるのでは?」

「正確には、オルドパルスとホワイトガーデンの大臣ゲランとユウという異世界の者と、牢ではノエルとかいう異世界の者がいるがのぉ。そして、その事で伝えたい事があり、私が所持していた水晶のホープに相談したところ、テリオス様がもう一つの水晶を拾ったと聞いたゆえ、この上ないチャンスと思いお願いしたという事なのです」

「しかし、何故カプリア様が敵陣営にいらっしゃるのですか?」

 ラシェルは不思議に思い聞いた。

「実はな、数年前にオルドパルスが、この話を持ちかけてきた。しかし私は、元々手元にある水晶を所持していた為に、オルドパルスが何をしようとしているのか薄々と気がついていた。それ故に、私はわざとこの話にのった。探りを入れあわよくばオルドパルスが持っている魔神が封印されている水晶を手に入れる事が出来ればと思いな」

「今、オルドパルスが持っている水晶に魔神が封印されているって……それにやっぱりユウさんはこっちに来ていたのね」

 クロノアがそう言うとカプリアが聞き返した。

「ユウ・ライオルスを知っているのか?」

 すると、ハクリュウが話し出した。

「ああ!ユウさんは、クロノアと俺とノエルのいたギルドのマスターだった人なんだ。それに、そっちにノエルが捕まってるって言ってましたよね?ユウさんはノエルとはまだ会ってないんですか?」

「ほぉ、なるほど。異世界の者、全員が知り合いとはな。確かに、ノエルとユウはまだ顔を合わせてはいないが。何か気になる事でもあるのか?」

「ノエルとユウさんは、実の兄妹なんだ」

 ハクリュウがそう言うとカプリアは驚いたように、

「な、何という事だ!?こんな事があっていいというのか……兄が魔神の器。そして妹が生贄に……やはりこれは阻止しなければならない。ふむ、少し頼みがあるのだが?」

「頼みとは、いったい?」

 グロウディスが聞くと、

「ホープの話によると、ユウは魔神の封印を解いたあとの器。すなわち、よりしろの様なもの。それ故にユウ自体の身体は残っても、恐らくは魂は抜かれ死ぬかもしれない。ノエルも同じ封印を解くための生贄にされるという事は……それでなのだが、オルドパルスはかなり用心深く水晶を肌身離さず持っているため、それ故にそれを確認する事は出来ない。ただ、儀式の時に水晶を持参するだろう」

「ふぅ〜ん、なるほど。僕たちがやる事って、オルドパルスが儀式の時に水晶を手放した時を見計らい襲撃して、その水晶とノエルとそのユウって人を救うって事だよね?」

「えぇ、そうです。流石に、頭のキレは相変わらずのようですね。アキリシア様」

 少し照れながらアキリシアは、

「そうなると、手分けして動かないとだよね?」

「それはいいのですが。本来ならハクリュウ様とクロノア様とノエル様が3人揃い、儀式を済ませてから事を起こした方が良かったのですが。今となっては……」

「それは、直ぐに出来ないのか?」

「儀式自体は2通りあるのだが。その方法の1つは、それほど難しくないはず。3人揃い私が所持している水晶に手をかざしホープに証を……ん?ちょっと待ってもらえないか。今私が思っている事が可能かホープに聞いてこようと思う」

 そう言うと通信は途絶えた。


 そして場所は変わりここは寝室、カプリアはホープに聞いてみた。

「ホープに聞きたいのだかのぉ。ここに1つ水晶がある。私がノエル様の元に行き水晶に触らせ、同時にハクリュウ様とクロノア様にもう片方の水晶を触らせ、勇者の証をお授けになるのは可能なのですか?」

「多分、可能だと思うよ。それと、1人イレギュラーがいるって言ってたよね。僕はちょっと、確認したい事があるんだ。その子にも、水晶に手をかざすように言ってみようと思っている」

「それはホープに任せます。では私は、オルドパルスやゲランに悟られないように、ノエル様の所に」

 そう言うとカプリアはノエルのいる牢に向かった。


 場所は移り、ここは城の外の森の中。ハクリュウ達は水晶をみつめていた。

 カプリアは、1度ハクリュウ達に通信の水晶で、連絡を取ると、ホープと変わると告げ一旦通信を切った。

 すると、水晶からホープの声がして、

「やぁごめんね、待たせてしまって。カプリアからある程度は聞いていると思うけど。今から勇者の証を授ける儀式をしたいと思う。それで、ハクリュウとクロノアと、あとユリナだったかな?この水晶に手をかざしていて欲しいんだけど」

「ユリナもって、どういう事なんですか?」

 ハクリュウが聞くと、

「ユリナとハクリュウは、もしかして兄妹なのかな?」

「はい、私はハクリュウの妹です」

「なるほど。だから、ハクリュウがムキになる訳か」

「それは……でも、ユリナは間違ってこっちに来てしまっただけなんだ?」

「ハクリュウ。だから余計に、試したいんだ。もしかしたら、オルドパルスと魔神の陰謀を阻止する事が出来るかもしれない。でも、これでユリナに証が出なければ何とも言えないけどね」

 そして3人は頷き、ホープの話を聞いていたのだった…。

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