バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

4.再会



 王都へやってきたリート。
 二日後に行われる騎士採用試験に参加するのが目的だ。

 お金のないリートは、なるべく安そうな宿を見つけて拠点にする。
 それから、申し込みのために役所に向かう。

 そこで受付のおばさんに試験のことを聞くと、申請書を渡してくれた。

「明後日、そこの広場で試験をやる。そんときに申請書を持って来れば大丈夫だよ」

「ありがとう」

 ――さて、明後日までは暇になったな。

 騎士試験は実戦形式だ。したがって知識を詰め込むようなテスト対策必要はない。

 リートは、そのまま役所を出ようと踵を返した。

 ――すると。

「……リート!?」

 突然、横から聞き慣れた声がした。

 見ると、そこには幼馴染のサラの姿があった。

 目を丸くして、立ち尽くしたかと思うと、数秒後にはとんでもない速度でリートの方に向かって走ってきた。

 リートはそのまま勢いよく抱きしめられる。
 麻の服越しに控えめな胸が当たる。外からだとあまりわからなかったが、そこにはしっかりと弾力があった。

 たった1週間ぶりだというのに、まるで十年ぶりに突然再会したような、そんな反応。
 リートはどう反応をしてよいか返答に困る。

「よかった……!!」

「いや、ああ……」

 嬉しいやら気まづいやら、色々な感情がリートの頭の中でぐるぐるした。

 確かに、リートはこれまでずっと一緒だった幼馴染に一言もなく街を去った。
 逆の立場なら心配して当たり前だ。

 少しして、ようやくリートはサラのホールドから解放される。

「リートのお父さんに聞いたら、家から追い出したって。それでもう街にはいないって言うから。めちゃくちゃ心配したんだから」

「ああ、悪い悪い」

 リートはこの一週間の経緯を話した。
 と言ってもたった一週間の出来事で、そんなに多くのことは起きていない。

 家を追い出されたあと、荷物運びの仕事をして、
 そしたら盗賊に襲われて、盗賊を一発殴ったら、相手のスキルを獲得できた。
 神官に聞いたら、相手からスキルを獲得できる能力があるらしい。

「そんな能力があるなんて、びっくり。でもめちゃくちゃすごいじゃん!」

「まだ半信半疑なんだけど……」

「でも、スキルが手に入ったんだから、騎士試験、受けるんだよね?」

「ああ、そのつもり」

「よかった。受かれば、また一緒だね」

 聖騎士のクラスを持つサラは、騎士試験を免除されて既に騎士として採用されているらしい。
 一歩リードされているわけだが、今回の試験で受かればリートも追いつくことができる

「私、今から任務が始まるから、試験見に行けないんだけど……頑張ってね」

「ああ」

「それじゃ……騎士団で待ってるね」

 サラは俺の手をとって握ってから踵を返した。

 だが、そこでふと思い出したように振り返る。

「あのさ。殴るだけでスキルを取得できるんだったら――」

 と、サラは自分の拳(こぶし)をリートに突き出した。

「ほら」

 サラは自分の拳に「拳を突き合わて」と言う。

「私の聖騎士のスキル、コピーできるかもよ」

 その申し出に、リートは躊躇する。

「でも……いいのか? スキルパクっちゃって。せっかくのレアスキルなのに」

「いいに決まってるじゃん。減るわけじゃないし。試験で役に立ったら嬉しい」

 そう言われて、リートは控えめに自分の拳をサラのそれにコツンとぶつけた。
 次の瞬間、リートの脳裏に女神の言葉が響く。

【スキル“神聖強化”を手に入れました】

【スキル“神聖剣”を手に入れました】

 脳裏に、盗賊を殴った時と同じように女神の声が響く。

「スキル、手に入った!!」

 リートは興奮気味に声を上げる。

「よかった」

 サラも満面の笑みを浮かべる。

「ごめんね。まだスキル二つしかないんだけど」

「いや、本当にありがとう。絶対に役に立つ」

 

しおり