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10話〜お祭り前に{改}

 ここはシェルズワールドにあるグレイルーズ国。多種な獣人や獣人ハーフ達が住む国。

 辺りは自然が豊かなのにもかかわらず、街や村などには近代的な建物が多く立ち並び、それほど困った様子がないほどだ。

 そして歌やダンスなどで賑わっていて明るい国である。



 ノエルとシャナは目的地まであと少しの街ルンバダにいた。

 だが、何故かここで開催されるコンテストに参加する事になってしまっていた。

 噴水広場の前でノエルとシャナは、その事について話をしていた。

「ノエル様、本当に申し訳ありません。まさかこんな事になるなんて」

「しょうがにゃいよ。あそこまで頼まれたら、私だって断りきれにゃいし〜……」

 と、ノエルはその時のことを思い出していた。



 数日前。ノエルとシャナがルンバダの街に着くと、街は盛大に祭りの準備をしていた。

 宿屋を探していると、ノエルは街の雰囲気の事が気になりシャナに聞いた。

『シャナにゃん。この街でお祭りかにゃにかやるのかにゃ?』

 ノエルが辺りを見渡しながら言うと、シャナはニコニコしながら、

『もうそんな時期なのですね。数日後に、ちょうどこの国が出来て100周年となるのです』

 そう言いシャナはその場でクルッと一回転した。

『あ〜、楽しみだなぁ〜。色々とやるんですよ〜。歌やダンスとか本当に色々と〜……』

 シャナは楽しそうに軽やかに踊りながら言った。

『色々か〜。気ににゃるにゃ。屋台とかもでるのかにゃ?』

 ノエルはワクワクしながら、目を輝かせ言った。

 それを見たシャナは嬉しそうに、

『もちろんです!色々な食べ物屋台が出ます!!そして夜には花火があがって、恒例の行事が開催されるのです!!』

 シャナは満面の笑みで言った。

 色々と2人で話しながら歩いていると、舞台付近で、ウロウロと困った表情で考えこんでいる男が1人いた。

 男は溜息をつきながら何かを呟いていた。

 それを見て2人は気になり近づきその男に聞いた。

 するとその男はここの支配人で今回、開催される祭りを町長から任せられていた。

『あーこのままでは……祭りの夜に開催予定の目玉のコンテストに出る出場者があまりにも少なすぎる……』

『それって?にゃんのコンテストにゃ?』

『もしかして、毎年恒例のコンテストですか?』

『ええ、そうなんですけどね。毎年、予選するぐらいのたくさんの人数が集まります』

 頭を抱え溜息をつき、

『ですが、今年はこの時期になっても、まだ6人しか集まっていません。最低でも8人はいないとコンテストとしてなりたたないのです』

『あの〜、それは分かったんだけどにゃ。だからにゃんのコンテストにゃのかにゃ〜って、さっきから聞いてるんだけどにゃ?』

『あっ、そうでした。ノエル様はこの祭り自体、知らないのですよね』

 そう言うとシャナは説明を始めた。


 このコンテストは、毎年恒例の行事の1つで夜、花火が上がり開催される。

 内容は、1・ファッション センス、2・歌唱力(自作)、 3・ダンス (自作) 、4・格闘センスなどを競う。


『……私は毎年、楽しみにしています』

『にゃるほど。それは確かに楽しみだけどにゃ。人数が足りにゃいんじゃ、どうにゃるのかにゃ?』

『はぁ〜、それで悩んでるんじゃないですか〜。このままでは中止になってしまう。でも中止にすると楽しみにしてくれてる人たちにも申しわけない』

 支配人はそう言いながら、ノエルとシャナをチラッと見た。

『誰か後2人いればなんとかなるのですが〜。それが、なかなか出ていただける人がいないのですよ〜』

 支配人は2人を見るなり、

『あの〜、もしかしたらお二方ともにお強いのでは?それにセンスもあり可愛らしくお声も素敵ですし』

 一呼吸おき、

『後はダンスができれば、このコンテストに参加する事が出来るのですが?もし急ぎの旅ではないのでしたら参加して頂けないでしょうか?』

 2人は最初は無理なので断わろうと思っていたが。

『どちらも可愛いし強そうですので、絶対にこのコンテストでの優勝は、どちらかになると思うのですが。ダメでしょうか?』

 支配人は近くにあった装備品を手にすると、

『今回の優勝賞金は10万ジエムと、このフリフリのピンクの花柄ワンピースの戦闘服、この花の飾りがついたピンクのカチューシャなのですが』

 2人を覗きこみ、

『……それでも出てもらえませんか?』

『えっと、やはり私は無理かと……』

『ちょ、ちょっと待ってにゃ〜〜!そのカチューシャと服〜凄く可愛いにゃ〜〜〜!!』

『そうでしょう、そうでしょう。今年は国が出来てちょうど100年になるお祭りなので、町長がかなり奮発してくれましてね』

 支配人が最後まで言おうとしたが、シャナがそれを遮るように、

『でも、ノエル様が出られるのは構いません。ですが、流石に私では無理かと……』

『あぁ、どうしたら……ノエルさんは出て頂けるとして、あと1人なんですよねぇ。誰か出て頂ける人がいれば助かるのですが……』

 支配人は少し考えた後、何かを思い出した様に、

『あっ!!そうそう、今回に限りなのですが。町長から直々に、本選参加者全員に優勝商品とは別に豪華な商品を用意すると言っていたのを思い出しました』

『それは、参加するだけで貰えるのですか?』

『はい。町長は100周年という事もあり、かなり張り切ってますので』

『でもにゃ?出るのはいいんだけど〜』

 すると、何処からともなく殺気が放たれ、舞台付近に一通の封筒が刺さっていた。

 そして女の声が聞こえてきた。

『私はある人の命により、その伝言を持ってきた。そこに書かれている文章をしっかりと読めいいな!』

 その女はそう言うと去っていった。

 支配人はその封筒を取り読み始めた。すると、顔がみるみる青ざめていった。

『にゃにが書いてあったのかにゃ?』

『はい、ここに書かれていた内容なのですが。今回の祭りを中止にしないと、この街を闇の炎で焼き尽くすと、書いてあります』

 泣きそうな声で支配人が言った。

『それは困ったにゃ』

『そうですね。でも確かあの独特の声?それに闇の炎って?まさか……』

(あの声……まさかとは思いますが。しかしそうだとして、何故こんな事を?)

『シャナにゃん、どうしたのかにゃ?』

 シャナは、ハッと我に返り、

『ああいいえ。ノエル様、大丈夫です。ちょっと考え事をしていただけなので』

『至急、町長にこの事をお知らせせねば。大変な事になった。今年は何て年なんだ!あ〜……』

 そう言いながら頭を抱えた。

『あっ!そうそう申し訳ないが、一緒に来てもらえませんか?』

『私は大丈夫だけどにゃ。シャナにゃんはどうかにゃ?』

 ノエルは舞台からひょいと降りた。

『私も構いませんが。ただ、なぜ私たちが町長の所に、行かなければならないのですか?』

『確かにこの件は、お二人には関係ない事ではあります。ですが、目撃者として来ていただきたいのです』

 2人は仕方なく支配人と町長の家に向かった。



 町長の家に着くと、支配人は町長にさっき起きた事を話した。

『……と言う事なのです』

『ふむなるほど。これはどうしたものか?』

 町長が改めて、ノエルとシャナの方を見て近づいて来た。

『今、支配人から話は聞いた。それと改めて挨拶させて頂きたい。私はこの街の町長をしている、リスタルク。そして……』

『挨拶が遅れましたが。この街の娯楽施設等の支配人をしている、マルクスと申します』

 ノエルが不思議そうに町長を見ながら、

『町長さんだよにゃ?どうみても若く見えるんだけどにゃ?』

『確かに、そういえばそうですね?』

『やはり、そう思われますか。父が早くに亡くなり、私がこの街を任されました』

 そう言いノエルとシャナを見た。

『あっ、そうそう余談になってしまいましたが。この街で、いま起きている事を話したいと思います』

『あの〜それは、今回の件と何か関係があるのですか?』

『はい、ここ数日の間に頻繁に街に嫌がらせをしてくる連中がいて……』

 リスタルクは身振り手振りで話し出した。


 前に王家に納めるはずだった酒が夜のうちに全部根こそぎ盗まれていた。

 そしてそこには持ってきたカードと同じ物が残され、そのカードには同じ文面と獣勇士と書かれていた。


 するとリスタルクは2人にそのカードを見せた。

 シャナとノエルは見せられたカードを確認すると、そこには間違いなく同じ事が書かれていた。

『それにしてもにゃ?にゃにか変じゃないかにゃ?』

『変と言うと?』

『ん〜、にゃにか引っかかるにゃ。にゃんで、この祭りをやめさせたいのか?それにこんにゃ大掛かりにしてまでもって……』

『このお祭りは、この国にとって年に一度のお祭り。まして今年は100周年。今までになく盛り上がるはずでした』

 そう言うとリスタルクは俯いた。

『何故こんな事に……それに今まで、こんな事はなかったはずなのですが……』

『毎年、私は見に来てました。ですが、いったい何が?』

『そうなんです。なぜ今年に限って……。それで、もしよければ助けて頂けないでしょうか?』

『ノエル様。これはどうしましょう?あの声の主にも聞き覚えがあるような気がしますし。ただ似ていただけなのかもしれませんが』

 シャナはノエルの方へ視線を向けた。

『それに、私もこの件に関してはどうも納得できない事ばかりなので、解明したいと思うのですが?』

『ん〜、私も気ににゃてはいるんだけどにゃ。ん〜、それに困ってるみたいだし……。シャナにゃんがそうしたいにゃら、いいと思うにゃ』

『では、お手伝いする方向で行きたいと思います。それで、私たちは何をすれば良いのですか?』

『ああ、ありがとうございます』

 そう言いながらリスタルクは嬉し涙を浮かべ、

『そうそう。では先程マルクスの方から、今回のコンテストに参加されると聞いていますので、準備をしながら警備をお願いしたいのですが?』

 そう言われノエルとシャナは頷き、これからどう動くかを相談した後、その場を離れた。

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