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RPGの世界に突入

 豪勢な食事を終えると、女神は杖を振った。

「ゲームをスタートします」

 ヒントくらいは寄越せよと思っていると、ゲームのキャラクターに変えられていた。

 ゲームの世界は両脇に森林がたくさん生えていた。緑で埋め尽くすことにより、プレイヤーにイカサマをさせないようにしているのかな。ルートを一本にしておかないと、攻略は容易になってしまいかねない。

 横ではゆるやかに川が流れていた。これから敵と戦闘するにもかかわらず、少しだけ穏やかな気分になった。

 キャラクター名は勝手にクスリに名付けられていた。もうちょっとましな名前を思いつけなかったのかよ。他人には絶対に晒したくないと思える名前だ。

 クスリは自分のステータスを確認すると、HPは15となっていた。敵からのダメージがわからないため、どれくらいの耐久力なのかよくわからない。最初の敵の一撃で死ぬなんてことはないよな。

 武器は「こんぼう」、防具は「かわのよろい」か。こんなのでまともに戦うことはできるのかと不安に駆られた。

「こんぼう」は木の棒をそのまま武器にしたタイプだった。敵を殴りつけたら、折れてしまいそうだ。両脇に立っている木の方がよほど頑丈そうに見えた。

「かわのよろい」についても、薄い皮を適当に編んだだけの代物だった。剣による攻撃どころか、素手すら防げなさそうな弱さだった。防御としての機能は限りなくゼロに近い。

 プレイヤーには「こうげきりょく」、「ぶつりぼうぎょ」、「すばやさ」、「まほうぼうぎょ」「うん」の5つのステータスが用意されていた

「こうげきりょく」、「ぶつりぼうぎょ」、「すばやさ」、「まほうぼうぎょ」などははっきりとイメージはつく。数値が高くなるほど、戦闘を有利に進められる。

「うん」もなんとなくはわかるものの、はっきりとした像は思い浮かばなかった。戦闘にどのような効果をもたらすのだろうか。

 現在の「こうげきりょく」は7、「ぶつりぼうぎょ」は6、「すばやさ」は11、「まほうぼうぎょ」は7、「うん」は8となっていた。

「おなか」というステータスも発見。現在の満腹度は100となっていた。0になったらどうなってしまうのだろうか。

「すいみん」と記された項目もあった。現在はあと12時間後に睡眠が必要と表示されていた。

 一日当たりの睡眠時間を6時間とする。4分の1は睡眠で飛んでしまうので、実質的な行動時間は270日前後となる。365日を丸々冒険に使えるわけではなく、計画的に進めていくことを求められる。

「おなか」、「すいみん」の表示をなされるということは、トイレなどもいかないといけないのかな。鎧を脱ぎ捨てて用を足すのは、なかなかに面倒な作業だ。

 上に洞窟を見つけた。攻略法はわからないものの、ここにいけばよいと思われる。

 クスリが日本の足を動かして、上の方向に移動していると、画面が切り替わった。

「プルルルル」

 目の前に「ピータン」と記された、敵が一体現れた。RPGでよく見かける、ハッパに近い容姿をしていた。

 クスリは戦闘で用いるコマンドを確認。「こうげき」、「ぼうぎょ」、「にげる」、「アイテム」の4種類が表示されていた。

 複数人のパーティーで戦うなら「ぼうぎょ」はありかなと思うけど、単体で選ぶメリットはあるのだろうか。敵を倒さなければ、次々と攻撃されることになる。どうしてこのようなコマンドを入れたのかわからない。

 クスリは「こうげき」を選択。いかにも弱そうな、「こんぼう」を振り下ろすと、「ピータン」に15のダメージを与えたと表示された。

 貧弱な「こんぼう」なのに、敵を殴っても折れなかった。見た目は弱くとも、芯はしっかりとしているのかな。

 簡単なPRGなら一撃で倒せるけど、「ピータン」は生き残っていた。難易度は低い仕様になっていなかった。

「ピータン」の攻撃、クスリは9のダメージを受けた。最初の敵でライフの60パーセントを持っていかれた。一撃死とはいかなかったものの、耐久力の低さに怖気ついた。

 クスリは次の攻撃をするのか大いに悩んだ。敵のライフを0にできなかった場合、次の「ピータン」のターンでライフを0にされる。復活への道はわずか五分で絶たれることになる。

 アイテムを確認した。「やくそう」、「きずぐすり」はそれぞれ20個ずつ用意されていた。初期段階で回復アイテムを持たせるのは、良心的といえる。

 どちらの回復薬を使用したとしても、HPは15に戻るだけ。一時的な延命措置にすぎない。クスリは「こうげき」コマンドを選択しようかなと思った。最初の敵だから、さすがに2回攻撃を命中させれば倒せるはず。クリア率10パーセントとはいっても、最初の敵で死ぬほど厳しくないと思う。

 クスリは「こうげき」コマンドを選択。敵にクリーンヒットして45のダメージを与えた。「ピータン」を倒したと表示された。

 クリーンヒットさせずに倒したほうが、今後のためによかったのかな。「ピータン」は通常攻撃2回で倒せるのか、それともクリーンヒットする必要があるのかわからずじまいだった。

 クスリは身の毛のよだつようなおぞましさを感じた。クリーンヒット率を設定されているのは、おそらく敵も同じ。一撃でも食らったらあの世送りになる。HP15はあってないようなものなのだと痛感させられた。

 敵は一体とも限らない。「ピータン」が2体以上同時に襲い掛かってきたら、勝利を収めるのは非常に難しくなる。「にげる」コマンドで脱出するしかない。

 画面に経験値を6ポイント獲得したと表示された。レベルアップのためにどれくらいのポイントを要するのだろうか。

 60パーセントのダメージを受けたので、HPを15ポイント回復させる「やくそう」を、1つだけ使用することにした。マックスで15であるはずのライフポイントは21となっていた。

 クスリはHPがマックスになるまで「やくそう」を使用すると、80まで回復したではないか。初期よりもライフが増えるなんて、RPGの常識にない。最初から80パーセント近くのダメージを受けた状態で始まるなんて、どんな仕様なのかと思わずにはいられなかった。

 武器、防具を確認。「しょしんしゃようのけん」、「てつのよろい」も所持していることを知った。

 クスリは「しょしんしゃようのけん」を装備してみた。大差はないものの、「こんぼう」より

「こうげき」のステータスは「2」上昇。戦闘でちょっぴり有利になった。

「しょしんしゃようのけん」は「こんぼう」よりも持ちやすく、手にしっくりときた。スムーズに攻撃をあてられそうだ。

 こちらについても、どうして最初から装備しなかったのか。ゲーム仕様のあくどさに、震え上がるものを感じた。怒りというより、おぞましさについてだった。

 今度は「てつのよろい」を装備。「ぶつりぼうぎょ」のステータスは1.5倍に上昇した。なお、

「まほうぼうぎょ」については「かわのよろい」よりも低下することとなった。こちらは相互互換の関係なのかもしれない。 

「てつのよろい」は気を配りたいところ。特定のゲームでは酸に弱くなるといった効果が加えられたりする。その部分についてはゲームを攻略しながら、勉強していかなくてはならない。レベルをきっちり上昇させていたとしても、弱点武器で攻撃されると、一撃でお陀仏になることもある。敵の攻撃力は高く、ワンミスも許されないだけに、慎重にならなければならない。




 

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