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「ところでノワール。
 何が起こってるのか知ってるの?」

ノワールはそれにはすぐには答えず、
スピットの(ほう)を見た。

スピットは無言(むごん)(うなづ)く。

ノワールはそれを確認してから、
無言でバイザーを外(はず)した。

少女の羽毛(うもう)(よう)な髪が|辺(あた)りに飽和(ほうわ)する様に、
ふわりと(ただよ)う。

卵型の細い輪郭(りんかく)とは対照的(たいしょうてき)なふっくらとした(ほほ)が、
幼児(ようじ)のあどけなさを残していた。

『その前にソウヤ。
 私とパートナー契約(けいやく)しよう』

「パートナー契約?」

それが何を意味するのか分からない以上、
簡単(かんたん)には(こた)えられない。

『これはエンゲージではない。
 もっと気楽(きらく)に考える』

彼女の無垢(むく)にこちらを(うかが)う瞳を見て決断(けつだん)した。

「うん分かった契約(けいやく)する」

その答えを受け少女はペットロボを見る。

『ナビお(ねが)い』

それを受けてスピットの目から(くれない)光線(こうせん)が、
地平線(ちへいせん)の様に飛び出した。

【生体プロジェクション・マッピング開始】

バイザーから擬似(ぎじ)(てき)な声が()れ出すと(とも)に、
赤い地平線が、上空から俺の体を()でるように、
下に流れ出した。

第一(ファースト)パートナー契約(けいやく)完了】

何が起こったのか分からず彼女を見つめる僕に、
彼女は(ささや)いた。

『何が知りたいの?』

少女は真摯(しんし)に僕を見つめた。

「まず、さっき話してた転移(てんい)って何?」

しばし思案(しあん)した後、
少女は静かに口を開いた。

別世界(べっせかい)に飛ばされる事よ』

少女は子供に童話(どうわ)を聞かせる様に話し始める。

『あなたの()らす世界は、
 厳密(げんみつ)には擬似的(ぎじてき)(つく)られた並行(へいこう)世界なの。

 本来の歴史では随分(ずいぶん)前に(ほろ)んだ世界よ」

擬似(ぎじ)世界? (ほろ)んだ?

(へい)()()()が?」

『そう厳密(げんみつ)に言うと、
 完全な並行(へいこう)世界( せ かい)じゃないけど』


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