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二章 異世界の中の甘味と苦味(まとめ)

二章 異世界の中の甘味と苦味

俺とアカネは村を抜け出して草原を歩いている。アカネは明るい空を見上げながら言った。
「なんかあんな小さな村に囚われていた私が馬鹿みたいだよ。」
「だな。」
谷野は若者特有の略で答えた。
「ヤノ、『だな』ってなに?」
アカネはそう言って笑った。・・・!?
「あっ・・・。」
谷野はビックリして心の声が漏れた。この言葉も自然と出てしまったのだろうか。ただ『ここ』には噛み合わない言葉とわかった。何故『ここ』には噛み合わないと思ったのだろう。谷野の頭に何かが徘徊しているようだった。
「・・・。」
「ヤノ、急に黙り混んでどうしたの?」
アカネが心配そうに聞いた。その言葉で谷野の視界に明かりが射した。谷野は謝罪の意味を込めてジェスチャーで手を横に立てた。どうやら通じたらしく、
「大丈夫だよ。」
と返してくれた。俺はここの言葉はアカネにある程度教えてもらったがジェスチャーは欠かせない状態だ。しかし通じると同士に楽しいと思った。谷野が自分の思いに浸っていると、アカネが質問をしてきた。
「ヤノ。」
「どうした?」
「谷野ってどこから来たの?」
とてもシンプルな質問に谷野は困惑した。しかし、答えは簡単だった。谷野は嘘は付く必要はないと思い、偽りなく言った。
『異世界だ。』
どういうことか?簡単なことだ。こちらから見たらここは異世界だ。その逆だ。
「異世界・・・。異世界の冒険者なのか?」
アカネは谷野の顔を覗き込む様にして見てそう言った。
「そうだな。」
谷野がそうどや顔で言うと。
「体力10にどや顔で言われても・・・。」
「それ言う!?」
事実だが案外言われてると辛いぞ!谷野はふと思った。
「アカネの体力ってどのくらいなんだ?」
「言う?」
アカネはそう言って首を傾げた。
「そんな焦らすか?」
「まあ谷野の百倍以上あるよ。」
千以上かよ!?そう思うと自信がなくなってきた。
「まあその内増えると思うから、そんな気を落とす事はないよ。」
アカネそう励ました。よく考えると具体的に言わないだけマイルドにしている所があるので、そこで気を落とすのは失礼だと思った。そもそも元気でないとな!
話している内に村が見えなくなっていた。ここまで歩いたのか。谷野がそう感心していると、ある生き物が谷野とアカネに近付いて来た。『スライム』だ。
「何かと思ったらスライムか。」
アカネがそう言ったので安心した谷野は近付くと、
「ちょっとヤノ!」
スライムがタックルしてきた。
【スライムのタックル→谷野に6のダメージ(4/10)
痛ぁ!?タックルだけで死にかけってどんだけ脆いの俺!?谷野はどうしても驚きが隠せなかった。しかし、そんな谷野を差し置いてスライムは更にタックルをしてきた・・・。アカネは間に入ろうしたその時だった。
「オルァ!!」
大声と共に蹴りでスライムを攻撃した。
スライムのタックル→谷野が蹴りでカウンター→スライムにダメージ(1×2)→谷野が回し蹴りで追加攻撃、スライムにダメージ(3)
スライムを倒した】
アカネは驚いた様子だった。何故か、
「質問は一杯あるけど、一つだけ言わせて。」
『なんで恐れないの・・・。』
そんなのわかっていた。だが言わないでおこう、そう思った。
一方、異世界の中心神の間にて
谷野君。君はこの世界の攻略法を知ってしまったようだね・・・。いいデータを録らせてもらったよ。男はそう言うと本を本棚にしまった。

スライムを倒した後、谷野の体力が4と危ない状態だったので谷野とアカネは草原の木陰で休憩していた。
(因みに一般的なら2割以下が危険とされている。)
するとアカネが質問してきた。
「谷野って何があってここに来たの?」
谷野はやっぱりその質問してきたか、と思ったが答えた。
「それがな、分からないんだ。」
「わからないって、普通分かるでしょ。」
アカネはそう返して来たが、谷野は本当に分からなかった。
「・・・。本当に分からないの?」
無言になる谷野にアカネはそう質問してきた。そして谷野は『頷いた』。
「ごめんね。」
アカネは地雷を踏んだと思い、謝罪してきた。少しして谷野はブツブツと言い始めた。
「過去が分からなくて怖いんだ。」
ここに来て谷野は初めて弱音を吐いた。男として情けないと思ってもどうしても辛かったのだ。
「大丈夫だから。」
アカネはそう言ってハグしてきた。そのハグで谷野は少し落ち着いた。谷野はふと我に帰って言った。
「・・・はっ、ごめん!!」
そう言った谷野にアカネは
「いいから座って。」
と言って、『穿いていたズボンを脱がし始めた。』
「えっ!?」
ビックリした谷野は必死に抵抗した。
「あの、じっとしてください。」
そう冷淡に返してきたアカネに谷野は、
「アカネ、もうこんなことする必要はないんだ。」
と言うとズボンを握っていた手が震えた。谷野はアカネの震えた手を握ってこう言った。
「アカネは俺よりも強くて正しい人間だ!ただ、才能は俺のモノだからな!!」
アカネはクスッと笑って、
「なにそれ、才能も私のモノですー!」
と言った。谷野は今はこれ以上探ったら怒りが増幅するだけだと思い、アカネの過去には触れない様にしようと思った。谷野とアカネは落ち着いてから出発した。
木陰から出発したのはいいが、日が傾いて来ている事に気がついた。
「谷野、夜のモンスターは手強いのが多いから宿を探そう。」
アカネがそう言ってきたのはいいが、見えるのは山と草原しかなかった。谷野がそれを指摘するとアカネはじっと考え始めた。悩んでいる谷野とアカネの元に誰かが寄ってきた。
「あの、すみません。」
谷野とアカネはビックリして見ると豪華な服装を着したお嬢様らしき人が話しかけて来ていた。
「はい!!」
二人はそのお嬢様らしき人の服装を見るなり姿勢をビシッとし始めた。するとお嬢様らしき人は、
「私はナコです。何か困っていそうだったので話かけましたが大丈夫ですか?」
谷野は流石お嬢様優しいなと思った。アカネはこの機会を逃すまいと思い質問をした。
「すみません、ここ付近に宿屋ってありますか?」
と聞いた。するとナコは、
「ここ付近はありませんが良かったら私の館に泊まっていきますか?」
流石お嬢様!!(二回目)
「はい!!是非泊まらして貰います!」
と谷野は元気よく返した。そして谷野とアカネはナコと付き添いの執事と草原を歩き、山を登り、その館らしき所まで着いた。その時には真っ暗になっていたので篝火が灯っていた。しかし、本当に大きいな。谷野はそう思いつつ、ナコと執事に着いていき、アカネと共に館に入って行った。

ナコに着いて行った谷野とアカネは大きな館を見て怖じ気ついたが、ナコが門を開けて手招きした。二人は恐る恐る入って行ったが予想通り下はタイルと絨毯、上はシャンデリアと、とても豪華な造りと装飾がしてあった。玄関は靴を置くスペースがあったのでそこに靴を置いて上がろうとしたが、執事が止めたので任せた。上がりには履き物が置いてあったので二人はそれを履かせてもらった。しかし、しっかりとしているなと谷野は思いつつ玄関を歩き、リビングに来た。ナコは二人が来たのを確認すると、
「とりあえずここにいて、準備が終わったら呼ぶから。」
ナコそう言うと執事と共に奥に行った。俺とアカネはこれも豪華な椅子に座るとアカネが小声で言った。
「本当に着いて行って大丈夫だったの?」
それに対して谷野は小声で返した。
「まあ大丈夫でしょ。」
そう言ったが実は谷野は結構警戒していた。ただ、泊めてもらう事に越したことはないので着いていったのだ。そう考えていると執事が来て、
「谷野様、アカネ様、御部屋の準備が完了しました。」
と言ってきた。部屋は勿論別だったので別れて部屋に入った。谷野は部屋に入ると部屋中を探り始めた。30分探ったが怪しい物はなかったのでやっと部屋のベッドに座って、そのまま寝っ転がった。疲れた、そんな考えが真っ先に浮かんだ。谷野は今まで何があったか思い返していた。今までわかった事は、ここが異世界である事。アカネが異世界の人間である事・・・。アカネは異世界の人間の筈だろ。それにしては他の人達とは違う雰囲気がするんだ?何故だ?すると、ドアノブを捻る音がした。
「谷野様、ナコお嬢様からお話があるので来てください。」
谷野はビックリして起き上がった。執事が訪ねて来たのか。そう確認すると部屋を出て執事に着いて行き、一際大きな両開きのドアがある部屋に案内された。谷野が圧倒されて立ち止まっていると、執事はドアを開けた。そして部屋に入るとナコがいた。
「執事、席を外しなさい。」
ナコがそう言うと執事がお辞儀をしてドアを閉めた。
するとナコは谷野に席に座るよう勧めた。谷野が座るとナコが言った。
「谷野さん、あなた異世界の転生者でしょ?」
「えっ!?なんで・・・。」
谷野はビックリしてつい声が出た。
「やっぱり合ってたのね。」
唖然とした顔をする谷野にナコは付け足した。
「まあビックリするわよね。だけど、心配する必要はないわ。私は谷野さんの味方よ。」
もしかして俺の事を知っているかもしれないと思った谷野はナコに質問した。
「ナコ、俺は何故この世界に来たんだ?」
ナコは悩んだ様子で答えた。
「んー考えられるのは二つあるかな?」
一つ目、『異世界の門』から来た。
二つ目、『三次元(地球等)』で死んでしまった。
「という感じだが、谷野さんの場合特殊かな?」
そう言ったナコに谷野は返した。
「なんで俺が特殊なのか?もしかして何も覚えて無いからか?」
「谷野さんビンゴ、鋭いねー。」
ナコはそう言って谷野を指さした。その後手を下ろして更に言った。
「あとパラメーター情報送ってー、振り分けポイントを振り分けているか確認がしたいの。」
しかし、送れって言われても・・・。
「送り方が分からないけど言おう。」
「ほうそれほど自信があると。」
ナコにそう言われたが正直に自信がない谷野は少し考えて言った。
『体力10、他1だーー。」
そう言うと、
「えっ・・・。」
流石のお嬢様も固まってしまった。しかし、すぐに言い始めた。
「フーアッハッハ、なーに冗談言ってるの、ね!」
「いや、冗談と言われても事実なので。」
谷野がそう言うとナコは立ち上がって、
「・・・。は?」
と言って頭を抱えながら部屋を歩き始めた。
「(いや、何でそうなったの!)(んー何でだ?)」
ナコの独り言が聞こえている。谷野はゆっくり立ち上がると言った。
「ナコさんパニックになっても何も変わらないので一回落ち着きましょう。」
そう言うとナコの歩きが止まり、一つ咳払いをすると言った。
「・・・すみません取り乱してしまいました!まあ座ってください。」
再び座るとナコが言ってきた。
「谷野さんあなた他の転生者とは違いますね。」
そう言うとナコの表情が一変、無表情になった。
「だからあなたの転生したした理由いわゆる現実を教えましょう。」
甘い一時の苦味は重い一時だった。

ナコは無表情で言った。
「谷野さん貴方は、『下校中刺されて死亡』しました。」
「下校ということは俺は学生だったのか ?」
谷野はそう返すと、
「はい、そうです。しかし、私はこれくらいしか教えて貰っていません。」
ナコはそう言った。すると、ナコの顔がガクンと落ちる様に下がった。もしかして、気を失ってる!?
「ナコ!!」
谷野はナコの肩を揺さぶったが、応答がなかった・・・。谷野は走ってドアをバタァンと勢いよく開けた。
「あの勢いよく開けるのは・・・。」
執事は言いかけたが谷野の慌てようで言い止まった。
「はーはー、執事さん!!ナコさんが・・・。」
「え!?」
執事は谷野の言葉にビックリして扉の向こうに飛び出して見た。そしてナコが倒れているのを確認した。
「ナコさん!大丈夫ですか!?」
また執事はそう言ってナコの所へ走って肩を掴んで揺さぶった。しかし応答がなかった・・・。そして、執事が二人部屋に入って来た。・・・!?谷野は気づいた。二人まさか・・・。ズチャと音がした。1人がショットガン、もう1人がナイフを構えた。既にいた執事(ここからはAと略)が鞘に納めていた剣を出そうとしたが遅かった・・・。谷野は武器がないので抵抗できなかった。そう、ここで谷野は。
『死んでしまった』






異世界神の間にて
「ルク様!!谷野さんが・・・」
役人が慌てて言いに来た。しかし、ルクの表情は至って落ち着いていた。ルクは慌てている役人に言った。
「まあ、落ち着いて見ておけ。こいつは今までの転生者と違うぞ。」
役人は戸惑ったがルクに質問した。
「違うとは?」
役人の質問にルクは答えた。
「それは言えないな♪」
「逆に気になりますよ!!」
役人はにやけながら言った。役人とルクはもう少し談笑を交わして役人は部屋を出た。ルクは役人が出たのを確認すると鍵を閉めて考え始めた。しかし、一つ言える事はルクには何かを確信があるという事だ。谷野が行った場所それは過去だった・・・。

『転換への扉』に続く













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