第二十八話
翌日。楡浬はいつもの灰色メイド服ではなく、ブルーのストライプ入りを着ている。楡浬は、元々大きな目をさらに拡張させて爛々と輝かせ、その照度で周囲が明るくなっている。
「アイドル神頼み大作戦第2話は、ダンスよね。」
「お察しの通り、次はダンスですわ。まずは衣好花様。何でもいいからおやりになってください。」
大悟は楡浬の顔と服を見ることなく、衣好花の方ばかりに目を向けていた。
「アタシのコスチュームはどうかしら?」
やはり大悟は楡浬を見ることがなかった。楡浬はこぶしを握り締めて、眉根を寄せるしかなかった。
今日の衣好花はフードを被っていない。しかもなぜか、黄色生地に白い水玉模様のメイド服を着ている。ヘッドドレスも水玉である。
「衣好花様。フードをやめただけでなく、メイド服にチェンジするとは、見上げた取り組み姿勢ですわ。自分で作ったのかしら。そのまま踊ってみてくださいな。」
衣好花のダンスは意外にもうまく、曲に合わせて、腕を上げたり、サイドステップ。最後は、Vサインした右手を横にして、右目にかざして、ウインク。某アニメのかしこまポーズで決めた
「素晴らしいですわ。どこでその技術を学んできたのですか。」
「忍者として抜き足、摺足、忍び足を日々訓練してきたから、この程度は自然にできちゃうもんねェ。でも褒めるよりももっとホットにけなしてくんない?求貶の字~。」
「ははは。そのようなことはできませんわ。出来のいいものは、それ以上も以下もありませんから。でも衣好花様のポテンシャルを見直ししましたわ。能ある鷹の爪はピリリと辛くて刺激的ですわ。」
衣好花を褒める大悟を見て、痺れを切らした楡浬。
「ちょっと、そこの馬嫁下女。アタシの方を見なさいよ。ほら、今日のメイド服はちょっと違うでしょ。」
その場で軽くターンして、スカートを翻した楡浬。健全な男子なら瞬時に告白したくなるような可憐さである。
「足の動きがよくないですわ。それでは衣好花様の足元にも及びませんわ。」
「何ですって!このアタシがドMヘンタイに負けてるなんて、太陽が燃え尽きたとしてもあり得ないわ。ならば、これならどうよ。今日のために用意したスーパーウルトラハイパーロマンチックな衣装なんだからねっ。」
「ほほう。やる気はあるようですわね。でもビューティフルさは衣好花様には届かないようですが。」
「下女の美的感覚はアテにしてないわ。それじゃ、このダンスを括目して見なさいよ。びっくりして、座りション●ンしないように、紙おむつを装着しなさいよ。」
自分の品位をかなぐり捨ててしまった楡浬の言葉に、大悟は少し息を飲んだ。
「楡浬様。いったい何をなさるの?」
楡浬は大悟の面前で、いきなりメイド服を脱ぎ始めた。