第28話 魔神の書庫
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ｵｷﾛ…ｲﾂﾏﾃﾞﾈﾃｲﾙﾉﾀﾞ…
ｷｻﾏｶﾞｼﾂｺｸﾜﾚｦﾖﾝﾀﾞﾉﾀﾞﾛｳｶﾞ…
ｻｯｻﾄｫｫｫ…起きろぉぉぉぉおおお！」
「あぁ、魔神か。随分遅かったな。ここは夢の中か？」
「一週間ずっと毎晩毎晩呼び掛けおって。うるさいんじゃ貴様は！」
魔神に確認したいことがあった俺は毎晩就寝前に魔神ともう一度会いたいと強く願ってから眠ることにしていた。
夢見る少女に憧れた訳ではない。
人を勝手に転生させたんだから何かしら目的があると踏んで、ならばしばらく監視を続けるだろうと考え接触を図ったのだった。
そうしたら魔神は根負けしたのかようやく夢の中で接触することができた。
「人間違いで俺をこっちに転生させた挙句、碌な説明もせず人を知らない世界にほったらかしにしやがってくれたことを忘れた訳ではない。その節は…」ﾆﾁｬｧ
「……貴様この数日間で随分雰囲気が変わったのぉ。魔王に生まれ変わった影響か？」
しかしこの魔神は見れば見る程俺とよく似ているな、魔神と俺の種族である魔神族は何かしら関係があるのだろうか。
「………」
勝手に心を読んであからさまに動揺しているので図星だろう。
まぁ今回はその話ではない。
「ぶっちゃけお前は俺に何をさせたいんだ？」
「……最初に伝えたはずだ。人間どもを根絶やしにして、戦乱の世を終わらせろ、とな。」
「それは聞いた。じゃあなんでお前は人間から新たな魔王を選んだんだ？人間を根絶やしにしたいのなら、同族から選ぶのはおかしくないか？」
勿論俺の性格的なものもあるんだが、本当に人間の絶滅が目的なら現代日本人を選ぶ時点で神としてセンス無さ過ぎだろう。
「………。やはり貴様を選んだのは失敗だったな。頭が回り過ぎるわ。」
お前その言い方だと人間違いってのも嘘くさくなってき………悪かったよ、追及し過ぎてごめんな。だから涙拭けってば。
「人間を根絶やしにする必要はない、だが戦乱は終わらせて欲しい。……もう何を聞かれてもこれ以上は絶対に答えん！！」
「わかった。それならば俺に出来る限りのことはやってみるよ。」
俺が受け入れ追及をやめたのを見てあからさまに安堵している魔神様。
もう一つだけ確認させてくれ。
「やってもいい事と、やったらダメな事って、明確なルール設定ある？」
「………基本そんなルール設定はないが、流石にはちべえの件はやり過ぎだ。命の創造と歴史の上書きは自重しないと…世界の崩壊に繋がる可能性もあるぞ…？」
あれはごめん。自分でも反省している。
「そもそも……あれはどうやったのだ？我はあんなスキル付与していないぞ？？」
「は？万物の理だろ？？アルスとセニアと会話する能力が欲しい、と願ったら勝手に身に着いただけだぞ？」
「そんな都合のいい話ある訳なかろう。そんなんでチート級のスキルが身に着いたら神の存在などいらぬわ。」
そんなこと言われても事実だから仕方ない。
そもそもあんな恐ろしいスキル身に付けたくなかったからな？
実現したら大変だから一人妄想に耽ることもできなくなってしまったし。
「あれに関しては我も調査してみるから暫く使用を控えよ。」
「あーそれは問題ない。ただ、ブラッドレイブンでやりたい構想が結構あるんだけどな、その為に前世の技術とか知識を色々調べたいんだが何か方法あるかな？つーかそもそもそれ自体は問題ない？？」
元々俺はただのオタクよりのサラリーマンだ。
今この世界で必要な知識など持ち合わせていない。
賛否両論あるだろうが、俺はそういう知識がある、という知識さえあれば良いと思っている。天才でない俺の頭の容量は有限だ。
まぁ何が言いたいかといえば、単純に俺が必要な知識を調べる手段をくれ、というだけの話だ。出来たらパソコンとネット環境……
「………。それは問題ない故、我の書庫への出入を許可する。そこで調べられぬものはない。もっと活字を読むが良い。パソコンとやらは個人的に好かん。」
見た目子供の魔神が老害的な発言をしているが、残念ながら俺も活字賛成派だったりする。記憶と理解でいえば俺的にも活字に軍配が上がる。
「入室の仕方ははちべえに聞くが良い。あれもたまに利用しているからの。」
あの駄犬め。そんな貴重な情報を共有しないなんて後でお腹ワシワシの刑だな。
「もうこれでいいな？今後は気軽に呼ぶでないぞ。我は忙しいのじゃ。ではさらばじゃ…」
ｱｰﾔｯﾄｵﾜｯﾀー
ｱｲﾂﾒﾝﾄﾞｸｾｰ
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ｵｲﾏｼﾞﾝ!
ｵｰｰｰｰｲﾏｼﾞﾝｻｰﾝﾖｰ!!
ｵｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｲ!!!
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「貴様馬鹿なのか！？気安く呼ぶなといったばかりだぞ？」
「まだよくわかんねーけど、お前もアルスとかセニアと同じで悪い奴じゃなさそうだな！お前の願いも叶うといいな！！じゃあなー！！」
「き、貴様に何がわかｒ……言いたい事言うだけの為に戻ってきおったのか騒々しい。………ありがとうよ予言の子…」
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ﾁｭﾝﾁｭﾝﾁｭﾝ
ぬ？朝か。
魔神とのやり取り自体が夢だったと言う訳ではないよな？
「おいはちべえ、魔神の書庫への入り方を教えてくれ。」
はちべえが非常に気まずそうな顔をしているので夢落ちではないようだ。
お前はお腹ワシワシだけじゃなく風呂にも入れてやる畜生め。
何はともあれ、これで一番の課題だった前世の知識の活用の目途がたったな。
ちなみに俺は今、グリムウッドの宿屋にいる。
フレイムとの一件の後、アルスとセニアはレイブンズフェルの魔王城に俺を連れて行きたがったが俺はそれを断った。
四天王たちの理解を求める為の準備期間なのに、先に魔王城に居座るのはなんとなく違う気がした。
ただそれだけではなく、この１年で俺がやるべき事はこの農業と畜産が盛んなグリムウッドで事足りる。というか一番都合が良い。
俺の直近でやるべきことは食糧事情の改善だ。
朝昼晩あの糞不味いプロテインを食事替わりに摂取する生活なんて、嫌がらせ以外の何物でもない。
筋肉を鍛えたい、という魔族たちの願望から考えても、栄養バランスを考えた食事が必須である。
俺が単純に美味しいものを求めているだけではない、絶対にだ。
その過程でホエイプロテインの開発を進め、アルスとセニアを鍛え直す。
完璧な計画だ。
ちなみにホエイプロテインは、俺が愛飲していたビー〇ジェンドの様々なフレーバーを再現することで、女子高生っぽいゼファに献上する予定だ。若い女の子は甘いものが好きという単純なおじさんの発想だ。
我ながら一切隙のない計画だ。この1年は忙しくなるぞ。
早く脱サラならぬ脱マオしたい。
