蛮頭寺(ばんとうじ)の由来
今は昔のことでございます。
この村の
初夏のある
すると、誰かお堂の戸を
「こんな夜中に、いま
和尚さんが
驚いた和尚さんは、すぐにその若い入道を中に
なんでもその入道は、どうしても知りたいことがあって、ずいぶん長いこと、旅を続けているというのです。
「いったい何を、おたずねでしょうか?」
和尚さんがいぶかってそう聞くと、若い入道は次のように
「……地を
和尚さんは気味が悪くなって、口をつむいでしまいました。
すると
*
明くる朝、村の
「こんな朝早くから、何事じゃな」
名主どのがたずねると、
「これはただ事ではない」
すぐさま名主どのは、村の衆を集め、万宝寺へと走りました。
すると確かに、開かれた障子の中をのぞけば、そこには首のない和尚さんの痛ましい
「これはきっと、魔物の
一同はお寺の中も周りもくまなく探しましたが、和尚さんの首から上は、ついに見つかりませんでした。
村人たちはこの恐ろしい仕打ちに恐怖し、いつまでもおののいたのです。
*
名主どのはすぐに、京の都から名のある
「ご安心ください。必ずやその化物を、退治してご覧にいれましょう」
その夜、高僧が万宝寺のお堂で
「……地を這う姿は地虫であり、天を目指すは鳥のごとく、ほえる様子は獣のよう、とはこれいかに……」
高僧はすっかり、答えに詰まってしまいました。
「それは……」
果たして蝋燭の火はふっと、消え失せたのでございます――
*
それから何人もの、覚えのある
このようにして、このお寺に寄りつく者はすっかりいなくなり、万宝寺は荒れ果てる一方でした。
*
それから半年ばかりも
ひとりの
名主どのはその僧に
「それは、なんと……よし、わたしが、退治してさしあげよう」
名主どのは必死に止めましたが、その修行僧は意に
*
修行僧がお堂で経を読んでいると、あの若い入道がどこからともなくやってきて、くだんの問答をしかけてきました。
「……地を這う姿は地虫であり、天を目指すは鳥のごとく、ほえる様子は獣のよう、とはこれいかに……」
修行僧はにっこり笑って、こう答えました。
「這い続ければこそ
すると入道は、うめき声を上げて、苦しみだしました。
鬼の首は、その
彼はその
*
翌朝、万宝寺へ到着した名主どのはじめ村の衆が驚いたのも無理はありません。
お堂の床に食いこんだ化物の大首の上で、あの修行僧がいびきを上げながら、
起き上がった彼からことのあらましを聞いた名主どのたちは、ぜひにと、その修行僧に万宝寺の新しい住職に就いてもらうよう、申し出ました。
彼は快く引き受け、鬼の首を手厚く供養して、荒れ果てた寺を建て直し、かくしてこの村には、平和が戻ったのです。
あの恐ろしい化物はなぜ、人間に問答をしかけようなどと思ったのでしょうか。
それだけは誰にも、わかりませんでした。
ただ、この万宝寺が建っていた村一帯は、いつしか
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