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第18話 異世界転生的なトラブル

煉獄の峡谷までの道中‐


「しかしゾラスさんには悪いことをしましたね。ギルドも高ランクの冒険者が圧倒的に不足しているみたいですし。」

「まぁSS依頼のクエスト達成者(まだしてないけど)をBランクに留めるなど今まで聞いたこともありませんが、それが魔王様の願いですから………」

アルスもセニアも本当は俺のランクを可能な限り押し上げたいのはわかってるんだけど、俺の性格的に目立ちたくないのもあるが、何より目立ってしまうと合同演習への参加自体できなくなってしまうかもしれないので今回は我儘を通させて貰う。

「ところで、魔炎龍はなぜ討伐対象なんでしょうか?聞くところによると人との棲み分けはできているようですが、おとなしくしている龍をわざわざ討伐しにいく必要があるのですか?」

魔炎龍の住処まで、我々が比較的本気をだして移動したとして5日はかかるという。
一般的に考えれば1か月は必要だそうだ。
その距離をわざわざ危険を冒してまで討伐しにいくのだから何かそれなりの理由があるのだろう。

「はい、おっしゃる通り魔炎龍と我々はここ数千年の間しっかりと棲み分けが出来ておりました。
ただ、ここ数か月魔炎龍と思われる目撃情報がシャドウヴェイルを中心に多発しているのです。」

「何か被害が出ているのですか?」

魔炎龍は体長30mと龍種の中では小柄?らしいが、さすがにそんな龍が上空を飛んでいたら住民たちは不安で生活もままならないだろう。

「いえ、まだ被害情報はないんですが、皆『我こそが!』と魔炎龍との決闘を望んでおり、そろそろ勝手に討伐に出掛けるのを留めるのも限界なようです。」

予想の斜め上だった。そうだよね君たちは。

「そうなるとさすがに普通の魔族たちでは太刀打ちできませんので被害が出るのも時間の問題。そうなる前に倒してしまおう、と国から、つまり私とセニアで話し合いゾラスに依頼しました。」

そうだった。
一緒にいると忘れそうになるけど、この2人は一応超エリートなんだったわ。実質魔王代行みたいなもんだったもんな。

なるほどねー。この世界に置ける龍の立ち位置がわからんけど話し合いで解決できるんならそうしたい気持ちもある。
何千年も守られてきた棲み分けを破るくらいだから何かしらの理由はあるのかもしれません。

いくらBランクになるのが目的だとしても、もし龍側にのっぴきならぬ事情があったとした場合、他に迷惑を掛けてまでBランクになるのは元日本人として避けたいところだ。

まぁその辺はケースバイケースで対応していこう。


トワイベイルの村‐


「もうすぐ日も暮れますので今日はここで一泊しましょう。何も無い村ですが、大豆の質が良く美味しいプロテインを嗜むことができると評判の村です。」

「………。」

頑張れ俺。
日本だろうと異世界だろうと女性に暴力はダメだ。

「口を開くなボケカスが…」

たまの暴言くらいは許して欲しい。
いい加減こっちは米に飢えているんだ。狂暴にもなるわ。
何がプロテインだ畜生。

「は、はぅぅぅう///魔王様今なんとおっしゃって…?」

なんだその反応は…これすら許されないのか…。
トレーニーはナルシストとどMが多いという噂は本当だったのか。
ここはスルー推奨だ。

「さぁ、暗くなる前に宿を探しましょう。出来れば宿と食堂がくっついている所がいいですね。」

「魔王様、宿は俺に任せてくれ。」

グリムウッドの時もそうだったが、どうやら宿に関してはセニアの方が詳しいらしい。

「ちなみに前回の時もそうでしたが、セニアさんはなんでそんな宿に詳しいんですか?」

俺の問いにセニアは待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべ答える。

「実は私が魔

「だから金もプロテインも無ければ薬は渡せねえって言ってるだろ!しつこいんだよ!!!」

セニアの言葉を突然村に響いた怒鳴り声が遮る。

「で、ですからこの薬で母様の体調が戻ればその後働いてすぐお返しできるんです!お願いします!!」

「それが無理だって初日から言ってるんだよ!ガキの小遣いで買える程安い薬じゃないんだ!!」

このタイミングで緊急クエストか。
退屈させないじゃないか異世界よ、筋肉関係の話さえ無ければ実に充実した異世界ライフを送れそうだ。

「また、あの娘来てるのか…あんな小さい子が可哀そうだが、あの薬プロテイン30㎏分くらいするらしいぜ…」

「そんなに高い薬なのか。確かに1週間も毎日来られたら店主もあの対応になるな…」

通行人がひそひそと会話している声が聞こえてくる。
道中にアルスとセニアに聞いたが、貨幣の単位はゴールドといい、これまでいくつかの店を覗いた感覚では日本の貨幣価値と似通っている気がする。

したがって俺の頭の中では『1ゴールド=1円』としているが今のところそれで違和感はない。

ゴールドという単位を使用しているのにプロテイン換算している理由はよくわからないが、アルスとセニアもよく使っているので魔族はそうなんだろうと冷めた目で見ておく。

俺のよく飲んでいたプロテインが1kg約3,500円程度したはずなので、それで考えると10万円超えるじゃないか……確かに店主も善意で気軽に渡せるものではないな。

なんて考えているとアルスとセニアが騒ぎの方に移動していた。

「すみません、いかがなさいましたか?」

「あ?関係ない奴は放っておいてくれ!あんたが金出してくれる訳でもないだろうが。」

「横槍申し訳ない。我々は魔王軍のものだ。」

セニアが手帳のような物を店主に見せる。
警察手帳のようなものなのか、それを見た店主が渋々と事情を説明する。先ほどの通行人が話している内容とほぼほぼ同じだった。

「そうか、説明すまなかった。店主も大変だったな。」

「いやぁ、俺ももっと安い薬だったらなんとかしてやりたいんだが、価値が価値だからそういう訳にもいかないが、毎日毎日来られてしまうと、まるで俺が小さい娘を虐めているみたいな噂も出てしまって…」

「そうかそうか、店主も災難だったな。お嬢ちゃん?お嬢ちゃんもお店の人をそんな困らせるもんじゃないぞ?」

「本当に申し訳ございません。具合が悪く起き上がれない母からも止められているんですが、私に出来ることはそれしか思いつかなくて…」

ここまで通行人含めて登場人物皆良い人。

「店主さん、その薬はお幾らかしら?頂くわ。」

「え?いいのか??10万ゴールドもする薬だぞ??」

「魔王軍は困っている魔族を見て見ぬふりはできないわ。」

普段俺と接しているアルスとセニアとはおそらく別人だろう。
こんなアルスとセニア、二重人格でも無い限り説明がつかんわ。

「そうか、すまない。だったら9万ゴールドで構わん。お嬢ちゃん、お母さん早く良くなるといいな!」

「お、おじさん本当にごめんなさい。母様の体が調戻ったら必ずこの店にお買い物にきます!!」

「はっはっは、その時はお母さんと一緒に来るんだぞ!」

「アハハハ」
「ハッハッハッハ」
「ウフフフ」



「…………」

俺の知っている異世界ものは、なんだかんだで転生者の俺が解決するはずなんだけど、俺の出番なく解決してしまう優しい世界だなー。

アルスとセニアが優秀過ぎるわ。

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