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肉まんの季節に起きたこと その2

 さてさて
 コンビニおもてなし各系列店への輸送任務を一手に担ってくれていたハニワ馬ことヴィヴィランテスが、配達先が増え過ぎちゃって困る状態に陥ってしまったため、スアとあれこれ相談してみまして、解決策を考えてみました。

 ……と言っても、方法はすごく単純なんですけどね

 はい、魔法袋をたくさんにしました。

 2号店行きの荷物はこの魔法袋の中に
 3号店行きの荷物はこの魔法袋の中に
 エンテン亭への荷物はこの魔法袋の中に
 ララコンベへの荷物はこの魔法袋の中に
 で、ララコンベからもらって帰る荷物はララコンベで荷物を降ろして空になった魔法袋に入れて帰る、と

 魔法袋を4つ準備して、行った先で、該当の袋の中身を全部降ろして帰ればいい、と、
 そういう形に統一したわけです。

 言われて見れば、確かにヴィヴィランテスは馬です……正確にはユニコーンですが。
 なので、メモを渡しておいても、それを確認するのが一苦労なわけです、はい。

 配達に回ってくれる馬が多ければあれなんですけど、
 何しろスアが展開してくれている各地への転移のドアを行ったり来たりする必要があるわけですので、普通の馬では無理ですし、ならばスアの使い魔の馬系の魔獣に頼めたら、というのも考えたんですけど、スアの使い魔達は皆、色々迫害された経験を持つ希少魔獣達ばかりなため、スアが使い魔達のために作成している使い魔の森という小さな異世界空間から外に出たがりません。
 進んで外を出歩いているヴィヴィランテスが、ちょっと特殊なわけです、はい。

 それに対してヴィヴィランテスは言いました。
「このアタシの美しさをみんなに見せないなんて、ありえないと思わない? ねぇ?」
 ……え~、ユニコーン時代ならともかく、ハニワ馬から元の姿に戻ろうとしない状態でそう力説されてもねぇ……

 最初は、ユニコーン姿が目立たないように、あえてハニワ馬の姿から戻りたがっていないのかとも思ったのですが、
「何よ? アナタ、この茶色が見目麗しいナイスバディの素晴らしさがわからないっていうのかしら? ホント困っちゃうわぁ」
 と、ハニワ馬状態の自分のことを本気で美しいと思っている、いや、美しいでしょ? と、オネエ言葉全開で力説された僕は、

 あぁ、そうですね(棒

 そう答えるのが精一杯だったわけです、はい。


 で、この方式を始めた所
「あら、これ楽よぉ」
 と、ヴィヴィランテスも上機嫌。

 しかも、ヴィヴィランテスがやってきた店の方も

 2号店店長・シャルンエッセンス談
「以前は、どれが私の店の商品なのかわかりませんでしたので、ヴィヴィランテス様が荷下ろしされますのを待つしかございませんでしたの。
 ですが、2号店用の荷物が入った魔法袋が出来ましたので、ヴィヴィランテス様がこられましたら、その中身を全部受け取ればいいですので、一緒に荷下ろし作業をすることが出来るようになりまして、とっても時間短縮になっておりますわ」
 といった具合で、どの店からも好評の返事ばかりだったわけです。


 今まで、こういった声をくみ上げないと、と思って、週に一度店長会議を開いていましたけど。
 この世界では、元いた世界と違ってこういった荷物運搬作業をはじめ、すべてを自前で行っているわけですので、そういった部署からの意見も聞いておかないとな、と、痛感したわけです。

 そこで、次回の店長会議からは
 流通部門代表……というか、1頭で全部やってくれてるヴィヴィランテス
 スアビールをはじめ、各種飲料部門の総取りまとめをしてくれているタルトス爺
 コンビニおもてなしで使用していう容器類作成を一手に引き受けてくれているルア工房のルア
 以上の3人にも参加してもらうことにしました。

 これで今回のように、1人だけに負担が集中してたってことにならないよう、気をつけないと、と思っているわけです、はい。

 で、そんな連絡をみんなの所に言って回っていたところ
「ちょっとあんた」
 ヴィヴィランテスに呼び止められました。
 ヴィヴィランテスは、しきりと首を振りながら、なんかバツが悪そうな様子で僕を見ていたんですが
「あんた、アタシのためにあれこれ気を使ってくれて……あんがと」
 そう言いながら僕の胸に頭をすり寄せました。

 これ、後でスアに聞いてわかったんですけど、これってヴィヴィランテス流の親愛の証なんだそうで、気むずかしいヴィヴィランテスがこれをしたことがある相手って、

 スア
 タルトス爺
 キキキリンリン
 バルンカッス
 
 今までこの4人しかいなかったんだとか。

 なんか、そう聞くと嬉しいような、むずがゆいといいますか
 とにかく、小さな事からコツコツと頑張って行こうと思ったわけです。

◇◇

 さて、今回ヴィヴィランテスに魔法袋を複数使用してもらう方法を取ったわけですが、今回使用した魔法袋はスアに作成してもらいました。
 
 スアによると魔法袋には規定の容量があるそうで、ある一定の内容量以上ないと魔法袋と言ってはいけないという決まりがあるそうなんです。

 で、その基準というのが

「……城の、宝物庫、くらい」
 と、まぁ、僕のように宝物庫どころか城にすら入った事がないような人間では、まぁ広いんだろうな、くらいにしか想像が及ばない基準を言われたわけです。

 ただ、僕的にはそんな大容量はなくても、ぶっちゃけ1袋につき六畳一間程度の容量があれば十分なわけなので、スアにそれを伝えたところ、
「それは、魔法袋じゃない、ね」
 と言うので
「なら、荷物運搬袋でもいいんじゃないかな? 僕的にも、店的にもそこまで大容量の袋は求めてないわけだしさ」
 そう提案したところ
「名前を変える、ね……うん、それ、すごくいい案」
 スアはそう言いながら頷いていたわけです。

 程なくして、スアがヴィヴィランテスに使ってもらう魔法袋……容量が小さいので、正式には荷物運搬袋ってことになるんですけどね、で、これを作ってくれたのですが、そこで今度はスアから提案がありました。

「小容量の魔法袋もどき、売ってみたらどう?」
 と。

 なんでも、魔法袋の条件を満たしている品物を売買しようとする場合、王都が定めた金額で販売しないといけないそうなんだけど、その基準を満たしていない物を「魔法袋という名前以外で」販売するのには規制がないそうなのである。

 確かに、魔法袋として売った方が、名前がよく知られているだろうからよく売れるでしょう。
 とはいえ、この商品は儲けるために売るというよりも、皆さんの役に立てて欲しいとから売るという意味合いが強いわけです。

 魔法袋ほど内容量はないけど、中になんでも収納出来るのは同じで、値段が安い。
 これなら喜んでもらえるんじゃないかと思ったわけです。

 で、名前ですが、
 魔法袋と間違われないように、と、あれこれ考えた結果

「荷物収納袋」
 に、落ちつきました。

 ……すいませんね、ネーミングセンスいまいちなもんですから……

 で、まぁ、値段ですけど
 通常、魔法袋を新品で扱う場合、1個約100万円/元いた世界の日本円換算ぐらいで売るようにと、王都が決めているらしいのですが、ぶちゃけ容量的には100分の1もないわけなので、約1万円/元いた世界の日本円換算で、販売してみたところ、

 店に並べる前に、準備してた10個全部売れました。

 いえね、
ヤルメキスが「お菓子作りの道具入れにぜ、ぜ、ぜ、ぜひぃ」
役場のエレエが「書類保存にすごく便利ですです」
ルアが「加工中の資材を現状保存しとくのにすごく便利だ」

 といった感じで、身内といいますか、知り合いが全部買っちゃったんですよね。

 大量産出来るのなら、すぐにしてもらうことなんですけど、
 スアは、まだつわりが時々きてるもんですから、とにかくまずは無理なくやってもらおうと思っている訳です。

 僕がそう言うと、スアはニッコリ笑って
「どっちもしっかり頑張る、よ」
 そう言ってくれたわけです。

 なので僕は、すぐに無理したがるスアにしっかりブレーキをかけないと、と思った次第です、はい。

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