猿人4人娘達と、料理人 その1
『魔道レジスターSUA001』
スアが、コンビニおもてなし本店で使用していた電動レジを模倣して作ってくれた魔石で動くレジスターです。
カゴごとどんと置くだけで中身を一瞬で検知し、読み取り・集計までやってくれる優れものですが、やはりいくつか大変な作業があります。
まずは、商品をレジに覚えさせること。
この魔道レジスターSUA001は、バーコードではなく、商品の形状で品物を班別を行っています。
そのため、事前に全ての商品の形状と、その価格を記憶させておかなければなりません。
そんな中で、最初すごく苦労したのが弁当です。
最初に、弁当を登録しても、2個目からを認識しないということが発生しました。
スアも原因がわからなかったのですが
これ、弁当の形状が違うからってことで認識していなかったんです。
というのがですね。
弁当って1個1個ご飯の盛り方とかおかずの盛りつけ方が違うじゃないですか?
当初、この魔道レジスターSUA001は、
「最初に登録された弁当とご飯の盛り方からおかずの配列まですべて完璧に一致する商品」
でないと認識しなかったんです。
で、これに関しては、弁当やパンに関しては入れ物で識別するようにシステムを変更してもらい、認証に関しても完璧一致ではなく、あいまい認証も導入してもらいました。
思っていた以上に完璧主義者だったスアに、この「あいまい」の概念を理解してもらうのが、かなり苦労したんですけどね。
で、まぁ、弁当でも、普通の弁当よりも高額の弁当を作成して販売するときは、弁当箱のどこかにシールを張ることにして
『この形状の箱に入っている品物のウチ、このシールが箱のどこかに張られている商品は何円』
といった感じで認識するよう、これもシステムを変更して貰ったわけです。
スアビールとパラナミオサイダーは、同じ形状の入れ物ですが、大きさが違うので認識ミスは起きていなかったのですが、スアの作る薬品の方の登録がすごく大変でした。
というのも、スアは自分がデザインしたガラス瓶に魔法薬を入れているんですが、同じ大きさの容器に似た色の液薬がズラッと並んでいるわけで……魔道レジスターSUA001も、最初「識別に問題が生じました」とか表示する始末でして……
で、まぁ、スアの作る薬って、1本100円くらいの元気回復焼くから1本**万円する蘇生薬までピンからキリの振れ幅が大きすぎるんですよね。
で、これに関しては、スアに魔法瓶ごとに魔法で刻印を入れて貰って、魔道レジスターSUA001に、その刻印ごと登録をして貰っています。
……最初は、ボクが登録までしようとしたんですけど、さすがに見ただけで薬の班別が出来る程詳しくはないものですので……
なんて思っていると、ブリリアントがなんか高笑い。
「タクラ店長、スア様の旦那でありながら、そんなこともわからないのですか?
このスア様の一番弟子である私なら、一目でわかりますよ!
例えば、これは毒消し薬で……」
「……それ、麻痺回復薬、よ」
1発目で、真っ青になっていたブリリアントはおいといて、と。
とりあえず、これらの不具合は、全部試運転の際に発見出来て、スアが素早く対処してくれたわけです。
するとスア
「……ごめん、ね……いっぱい失敗してた、ね」
と言いながら、シュンってなってたんだけど、
「いやいや、スアがここまでの物を作ってくれたからこそ、この程度の修正で済んだんだよ。
普通の人や魔法使いじゃ、絶対無理だった」
そう言って、スアをしっかと抱きしめるボク。
「……あなた」
そう言いながら嬉しそうに微笑んで抱き返してくるスア。
それをパラナミオが抱きしめ
ヤルメキスが加わり、
さらに、イエロが、セーテンが、ルアが……
と、タクラ家名物家族の抱擁の輪が出たところで次にいきます。
◇◇
コンビニおもてなし3号店の一角でタクラ豆を栽培している
「タクラ様農園です」~エレ談~
なんだけど、ここがいつの間にかすごいことになっていました。
本店と2号店は毎週定休日を設けていまして、この休みの日に、スアとパラナミオを連れて3号店へ遊びにいったんですが
あ、ちょっと捕捉をしておきます。
3号店は元々ボクの別荘です。
以前、暗黒代魔道士の討伐に尽力したからってので王都からもらったんですけど……まぁ、ゴルアの手違いとかあってですね、火山の麓の周囲に何にもなかった場所にぽつんとあった、中古の屋敷をもらったわけです。
んで、魔女魔法出版にも協力してもらってここで魔女魔法出版の本を販売してみたら、魔法使い達が移り住んでまで通うようになったわけです。
で、周囲に何にもない場所なんで、弁当とか売れるかもと思って、販売してみたところ、すごく売れたので、ならここでもコンビニおもてなしをやってみるか、となったのがコンビニおもてなし3号店です。
要は、ボクの別荘の1階を使って営業していると思ってください。
ちなみに、店員は全員魔石の力で動く木人形達なので、24時間働けます。
なので、この3号店だけ24時間年中無休で営業してるいます。
ここから話を戻します
各地のビアガーデンで大人気になっているタクラ豆をここの屋敷の脇、空き地を耕作した畑で栽培してもらってて、ここに新たに高級紅茶の木も植えてもらったりしていたんですけど、この畑がいつの間にかすごく広大になってまして……えぇ、エレがすごく頑張ってくれたそうです、はい。
その上ここって以前、スアがプラントの木の幼木を植えていたんですけど、これがまた結構立派になっていまして、いつでもプラント生産可能な状態にまでなってたんですよね。
コンビニおもてなし本店と、2号店は、それぞれ街の組合に加盟しているんですが
職種が「小売り」の店って一定の大きさ以上の畑を店の側近くに持ってはいけない的なルールがあってですね、まぁ要は近所の農家から買ってあげてよねってことなんですよ。
あ、その代わりといいますか、プラントで栽培している品物は適用外なんです。
まぁ、今本店のプラントで増産してるのって、味噌の実だの、塩の実だのといった、普通畑で生産出来ないものばっかですしね。
んで、この3号店は、もともとうち捨てられた土地にあるわけなので、組合に所属しようにも組合がないわけなので、畑耕作なんかも好きに出来るわけです。
一応組合のエレエにも確認したところ
「あぁ、そこで作った品を使うというのなら適用外ですです」
って言ってもらえたんだけど
「でもでも、市場もよろしくですです」
とまぁ、しっかり釘もさされたわけです、はい。
まぁ、ここの畑やプラントの木では、ガタコンベやブラコンベで扱ってない物を栽培していくつもりでます。
この広大な畑と、プラントの林に感動しながら、この日の休みを過ごした僕ら。
「パパ、パラナミオもいつかここで何か育てたいです」
と言って満面の笑みを浮かべるパラナミオが、まぁ、可愛くて仕方なかったわけです。
ここって、パラナミオにしてみれば
幼少のころにさらわれた山賊に無理矢理こき使われてた土地だったんですけど、
今のこの地は、広大な畑とプラントの林が出来てて、
さらに屋敷の周辺には、石畳の道が整備された魔法使い達の住まいであるプラントの木が所狭しと林立しています。
緑豊かで、人……というか、魔法使いとその使い魔が行き交う緑豊かな閑静な住宅街とでもいえなくもない感じなわけです。
ここの畑を見に行くと言ったとき
「パラナミオも行きます」
って、パラナミオが言ってきたとき、少し心配したんですけど、杞憂に終わってホント良かったなと思った次第です。
ちなみにですね、よくみたら魔法使いの家、なんか倍近くに増えてまして……おいおい
◇◇
屋敷でのお休みを満喫したその夜ですが
「「「「タクラ店長、ちょっとご相談が……」」」」
と、猿人4人娘達がスアの巨木の家にやってきました。
ん? どうしたんだい?って思いながら話を聞いてみるとですね
「「「「私達、お店を持ちたいんです」」」」
と……
で、よく話を聞いてみると
4人は昔から仲良しで、血はつながっていませんけど実の姉妹同然に生活していたそうです。
んで、いろいろって盗賊団に所属した後、ここコンビニおもてなしで調理担当として働いてくれてたんですけど、ここで、料理を作る楽しさに目覚めて
「「「「4人で頑張ってみたいんです」」」」
いても立ってもいられなくなって、ボクに相談に来たそうです、はい。
ん~……正直、これは悩みどころです。
といいますのも、今の猿人4人娘達は、コンビニおもてなし本店になくてはならない存在だからです。
何しろ、コンビニおもてなしのパンは全部彼女達が作ってくれています。
弁当も、黙っていてもどんどん作ってくれるので、ボクが他の仕事にも手を回す余裕が出来ていて、本当に助かっているわけなので、4人にいきなり抜けられると……
ただ、僕個人としては、彼女達の夢を応援してあげたい気持ちが強いわけです。
やっぱり、夢を叶える手助けを、出来るものならしてあげたいと思うのが、人情ってもんじゃないですかねぇ……
店長のボクとしては、涙目なですけどね。
で、彼女達には
「できる限りの応援はさせてもらうけど、代わりの人を雇う必要があるから、少し時間をくれるかい?」
そう話をしました。
4人は、ボクが応援すると言ったことがすごく嬉しかったようで
「「「「はい、よろしくお願いします」」」」
そう言って、満面の笑顔だったわけです。
で、自室に戻っていった4人を見送ったボクはあれこれ考え始めます。
場所はどこかいいとこあるかな……とか
住居付きの方がいいかな……とか
開店資金とか大丈夫なのかな……とか
そのうえで、求人もしなきゃいけないか、などと思ったりしながら、まぁあれこれ考えている次第です。
はてさて、どうなっていきますやらですが、
まぁ、今日は明日の営業に備えて寝ます、はい