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店長と魔法使いの奥さまとサラマンダーの娘の休日 その3

 今日は休日で
 店もお休みなので

 店の裏の河原で、のんびり水遊びを楽しもうと画策した僕。

「パパ、川です! 水です!」
 僕が岩を投げ込んで作った水流の少ない水のたまり場の中で
 パラナミオは満面の笑みを浮かべながら、その中で足をバシャバシャさせています。

 このガタコンベは、1年中温暖なんだそうだけど
 それでも夏はあるらしく
 その本格的な夏に向けて、日々気温が高くなっているのを実感している今日この頃なわけです

 そんな中
 朝から水遊びに勤しんでいる田倉一家と、その仲間達。

「おほほほほ~!?」
 ヤルメキスが、なにやら妙なかけ声を上げながら、川の深いところをスイスイ泳いでいます。

 いわゆる平泳ぎなんだけど、妙に安定しまくった姿勢のまま、少々の流れならお構いなしにかき分けていく。

「蛙人でごじゃりまするから、泳ぎは得意でおじゃりまするぉ」
 ヤルメキスは、そう言いながら、鼻歌交じりでスイスイ泳いでいます。

 すると、それを見ていたパラナミオは
「パパ! パラナミオも泳ぎます!」
 そう言うが早いか、ヤルメキスが泳いでいる当たりに向かって大ジャンプして

 ばっしゃああああああああああああああん

 ……結構豪快に水の中に、飛び込んだ…というよりも、壮絶に転んでいったパラナミオ。

 それでも、
 その顔には満面の笑み

「パパ、ママ、気持ちいいです」
 そう言うと、パラナミオはなんかバシャバシャ手足をさせ始め、
 スイスイ泳いでいるヤルメキスの横を、溺れているのか、泳いでいるのかかなり微妙な感じで浮かんでいます。

 えぇ、進んではいません。
 その場に、とりあえずうかんでいますい。

 でも
 そんな状態でも、満面の笑みを浮かべながら、両手両足を動かし続けているパラナミオ。

「では、このヤルメキスが、泳ぎを教えてあげるでおじゃります」
 そう言うと、ヤルメキスは、パラナミオの腕をとって、得意の平泳ぎを、手取足取り教え始めています

「いいですねぇ水遊び」
「楽しいですねぇ水遊び」
「いけてますねぇ水遊び」
「満喫しましょう水遊び」
 いつのまにか、水辺に猿人4人娘がよってきて、パシャパシャ水をかけあってました。

 当然、4人とも水着です。

 ……っていうか
 なんなんでしょうね

 よく考えたら、水着の女性達に囲まれまくった中
 男は僕1人だわけで

 これ、
 元の世界で呼んでたラノベなんかだったら 
 このままハーレムパートへ一直線!

……まぁ、そんなあり得ないことを夢想しても仕方ないというか
  僕にはスアがいるんだし

 なんて思っていると
 スアが、照れってれになってる顔を両手で抱えながら、エヘエヘ言いだしました。

 その姿
 いつもの魔法使い然とした衣装でやってる時よりも、
 今の、水着姿でやられると、その威力が半端ないわけです。

 あぁ、
 これが僕の奥さんなのか……幸せだなぁ

 なんて、しみじみ感動に浸っていると
 さらに気をよくしたスアは、右手をちょちょいと動かした。

 すると、
「うわぁ!?」
「はわわわわぁ!?」
 パラナミオとヤルメキスが泳いでいたあたりの水が、真四角状になって空中に浮かび上がっていきます。

「すごいです! これすごいです!」
 水に入ったまま、宙に浮かんだ格好になってるパラナミオは
 その顔をさらに輝かせながら、その水の中で泳いでいます。

 で

 この、水が四角状態になって浮かんでいるわけなので

 僕やスアは
 泳いでいるパラナミオの両手両足まで見えてるわけで

 そんな中、パラナミオは
 水の中に潜って、浮かんでいる四角状態の水の塊の下から顔を出したりして、楽しそうにしています。

 なんか
 無邪気といいますか

 照れ隠しでこんなことをしでかしてしまうスア
 なんと言いますか、ホントすごいな、と思ってしまうわけで

 で
 こうしてスアを褒めていると

 なんで河原の酔っ払い娘48に、しれっと加わってる、自称スアの弟子ブリリアンが、ドヤ顔して偉そうにしているんですけど……

 よくみると、酔っ払い娘48には、いつも調理を手伝ってくれている猿人4人娘まで加わってまして
 その数、いまだ天井知らずなわけです。

 さしずめ、デビュー曲は
「エブリディ宅飲み」か「飲みたかった」あたりでしょうかね

「魔法と言えば、師匠の魔法は、何度もこの世界を救っているんですよ!」
 すでに駆けつけ5本 ~杯ではない~ すませているブリリアンが
 その顔を酒で真っ赤にしながら周囲に熱く語り始めました。
「有名なところでは、イセ事件ですよ、まさにイセ事件ですよねぇ」

 イセ事件?
 どうよ~、日向ぁ? 的な何かかい?

「昔ね、イセとかいうエロい魔人が、なんかエロエロになるび~む、みたいなのをあっちこっちでばらまいちゃって、国中が大混乱に陥ったことがあったんですけど、師匠ってば、『ウザイ』の一言で、イセを火の槍で滅多差しにして、異世界に追い払ったんですよねぇ。
 イセが使う魔法を、ことごとく破壊して、逆に自分の魔法をドンドン叩き込んでいって」
 って、ブリリアン
 まるで見てきたかのように、雄弁に離してたんだけど

 スアって、こう見えて200げふんげふん才なロリBBAなわけで
 
 ブリリアンが実際に体験したっていうのなら結構最近の話なのかな?

 ブリリアンは、平均的な人種なんで、まだ20前後なんだし……

 なんて思っていると、ここで魔女魔法出版のダンダリンダがひょこっと割り込んできて
「そこらのお話は、この本に詳しいですわ」
 そう言いながら、1冊の本を手に

 その本には
「伝説の魔道士救国記その21・対イセ編」
 と、書かれていたわけで

 へぇこうして本になるくらいすごい事をやってんだ、スアって……

 でも、その部分に感動しつつも
 僕は、その救国記ってのが、この対イセ編で、21冊目ってのに、むしろ唖然としてるんだけど……
 
 何回やばい状態に陥ってんだよ、この世界ってば

 で、まぁ
 とりあえず、どんなことをやったのか確認しようとして、ダンダリンダが手にしている本へ手を伸ばすと、
 ダンダリンダ
 本を、自らの後方に隠していったかと思うと、僕に対して1万円/僕が元いた世界換算を請求してきた。

 なんかニコニコしやがって……
 なんかむかつくんだよなぁ
 ちくしょう、そんな意地悪までされてなぁ、そんな本買うわけが

「ほれ、これでいいのか」
 ダンダリンダに、彼女が要求した金を渡す僕。
「毎度ありがとうございますぅ」
 ダンダリンダは、そう言いながら、僕の両手を握ってきました。

 うん
 買うに決まってるでしょ?


 しかしまぁ、
 こんだけの仕事をやってのけておきながら、
 いつもは森の奥に引きこもっていたんだよなぁ、僕の嫁さんってば……

 結婚してからも
 このことをひけらかすでもなく、ごくごく普通にカガクカガク言ってるんだよねぇ

 これが、あの上級魔法使いの誰かだったら確実に
「私を誰だとおもってるの!? 私はあのイセを異世界に追っ払った……」
 とか言いまくって、お高くとまってただろうしね。

 そんなことを考えながら、スアを見ていると

 そんな僕の視線に気がついたスア。

 するとスアは、おもむろに僕の横に寄ってくると
 僕の服の裾をちょんとつまんで
「……幸せだ、ね」
 そう言って、ニッコリ笑った。

 うん
 スアさん、その笑顔反則。

 僕は、
 水辺の光景を背に、にっこり微笑むスアを見つめながら
 また、奥さんに恋をしたわけです。

 そんな僕の横では
「いいですか? 師匠はですねぇ……」
 と、駆けつけ5本やっちゃって、すでにへべれけなブリリアンの独演会が続いているんですけど、

 その周囲
 皆、ワイワイ酒を飲んでいて誰も聞いてないのだよねぇ……

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