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 〈prophecy〉

 俺たちの時代よりずっと前には、ガザヤ人という民族がいたらしい。
 
 ガザヤ人はみな一様に背が低く、褐色の肌をしていたと文献に書いてあった。黒く真っ直ぐな髪に、目は薄い青色。
 俺が読んだ文献には参考資料として、ガザヤ人の写真も載っていた。大分古い写真で、汚れも目立っていたけどーその薄く青い瞳、力強い眼がとても印象に残った。
 
 ガザヤ人は、俺たちの遠い祖先だと聞いたことがある。長い年月が経ち、領地争いが数えきれないぐらい起きた。
 それに合わせて民族の名前も何度か変わった。

 そして今の俺たちが存在する。歳を得るごとに、様々な民族が血が入ったようだ。俺は昔のような、褐色でも黒髪でもない容姿をしている。

 そのガザヤ人が残したある書物が発見されたとき、一時あらゆる国で話題になった。 

 それは予言だった。

 二万二十年に怒りの炎が空から振り落とされ、万物はことごとく滅び、世界はリセットされるだろう。
 その混沌の一手を担うのは、額に第三の目を持ち、劫火のような赤い肌をしている妖魔。
 一撃で辺りを焼き尽くし、融解させる光。粉々になるまで切り裂き塵へとかえす刃。どんな攻撃も跳ね返す強靭な肌。 それらを使い破壊し回る。
 その他には片目が欠け、死の縁から蘇りし者。この者の放つ鎌は凄まじく、敵を皆殺しにするまで追ってくる。
 第二には人間を奈落へと閉じ込め、苦痛を味合わせ続ける悪鬼。その姿はまさしく暗闇でできている。
 これらの者たちを恐れ、超常的なプログレスを迎えた者たちは同朋となる。
 最後に投擲された鉄槌によって、全てが終焉という結果をもたらされる。
 そして全てが一体となり、創造の理にも手を加えだす。
 彼が否定した理は初めから存在しない。彼が赤だと言えば黒い物も赤くなる。
 暗黒に地と水と風と火と空の要素を生みだし、水辺には多くの種をまく。
 種はやがて光り輝く卵となり、卵は割れて実体化する。
 みなは祝福されて栄えた。

 予言はそこで終わっていた。この風変わりな内容は注目を集め、あっという間に広まった。他の国にまで伝えられ、この小さな国も予言によって認知度を高めた。
 
 反応は様々で、本気にして泣く幼い子供やこれは古代人が考えた妄想だと一蹴する大人。
 この予言をどう思っているかと誰かに聞かれれば、表面上は信じていないふりをした。信じていると言えば、お前は子供かと馬鹿にされるだけだろう。
 だけど本音ではーもちろん本当に起きるとは思っていないが、世界が滅亡してもいいとは思っていた。
 
 こんなところは、滅亡したほうが良い。そうすれば俺はこの苦しみから解放される。憎たらしい者もいなくなる。

 そう願ってしまうぐらいに、今の俺は追い詰められていた。
 
 そして今年が、そのはえある二万二十年。まさかね、と思いつつもどこかで期待している自分がいるのを俺は知っていた。
 
  
 
 
 
 

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