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………ここは何処だ?

 どんなに周りを見渡そうとも、辺りには木・木・木ばかりで、全く嫌になる。

 アイツら一体、どこほっつき歩いてんだぁ?す〜ぐ、迷子になるんだからよ〜。探す俺の身にもなってくれってんだ!

 この前もそうだ。
 
 国からの依頼で、魔龍退治にパーティー全員で向かって、いざ討伐!と意気込んだはいいものの。連携取ろうと、振り返ったら誰も居やしねぇ!

 コレはもしかして、イジメなのか?そうなのか?
…………考えれば考える程、涙が出てきそうになるわ!!

 でも、あの時の魔龍何か白かったんだよな〜。事前情報では、禍々しい黒龍だ!みたいに言われてたのに……。

まぁ、いっか。白でも黒でもあんま変わらんだろ。

そんな事より、暗くなってきたし腹も減ったなぁ。

「うしっ!適当に動物やらなんやら狩って飯にするか!」

とりま、高い所から探してみますかね。

【神跳《ゴットビ》】

 スキルを発した瞬間、地上から約1キロ程跳躍し、グルっと辺りを見回す。

「おっ!いたいた!」

 約20キロ先の森で、木々よりも大きなオークがバカでかい棍棒を振り回し暴れていた。

「おぉ〜、あんなデカいオークいるんだな!成長期ってやつか?まぁ、何にせよ飯だ!!」

【|空蹴り《ソラゲリ》】

 コレはスキルではない!だが、言葉にするとちょっとカッコイイし、それっぽくなるから言ってみただけ!!

 文字通り空を蹴り、音速に近い速度でバカでかいオークにあっという間に近付き、手に持っていた漆黒の刀”黒破刀”を構える。

【滅血斬《メッチャキリ》】

 バカでかいオークのぶっとい首が、とんでもない量の血を飛び散らせ、吹っ飛んでいった。

 ちなみに、コレもスキルではない!ただ、適当にカッコよく斬ってみただけだ!というか、最初に言った”神跳”すら、スキルでは無い。何かライブ感で言ってみたくなった。ただそれだけ。

 まぁ、普通に考えて神跳=(ゴットビ)とか自分でも恥ずかしくやるくらいバカみたいなネーミングセンスだし、ダサいわ!!時を戻して、あの時の、自分の後頭部を引っぱたいてやりたいくらいだ!!

 何なら僧侶ですら、助走をつけて後頭部を激殴りするレベルだよ!!

「……………ハァ、一人でノリツッコミとか……何か空しくなってきた」

…………さて、鮮度が落ちない内に解体するか。

 とりま、皮を剥いで血抜きだな。その後は………てか、デカすぎね?今更だとは、自分でも思うが、コレ食い切れそうに無いな……。

 そういやさっき、上から見た時、街みたいなのあったな。食える分だけ食ったら、後でお裾分けしてやるか。

★★★

 その頃、聖王国の首都サラバンでは、王とその側近の貴族達による緊急会議が行われていた。

 中でも、白髪が混じりで長い髭を蓄えた王”ルドルフ”と、赤い眼鏡をかけ緑の髪をしている”ルーチェ”が議論を白熱させていた。

「まさか、首都近郊で魔王ジェネラルが出現するとは……」

「どうするんですか!?ヤツは、推定難易度SSSは間違いなくある化け物ですよ。間違いなく国が滅びるレベルの相手です!そんな化け物が近付いて来ているのです。早く対処しなければ……」

「分かっておる。今、冒険者ギルドの精鋭500名と、この街にいる兵士5000人を準備させておる……それで勝てなければ、この国は滅びの道を歩むだろう」

 推定難易度とは、Dランクから始まりSSSまである。目安としては、DとCランクは、小さな魔物程度は狩れるレベル。
Bランクは、ゴブリンやオーク程度。
AとSは、ワイバーン等の飛竜種を倒せるレベル。
SSは、国家を揺るがすレベルの魔物をパーティで相手に出来るレベル。
SSSは、世界そのものを揺るがしかねないレベルの相手である事を指し示していた。

「………くっ、こんな時、勇者様がいらっしゃれば」

「……そうだな。だが、勇者様は現在行方不明だと聞いている。望みは薄いであろうな」

 会議室の雰囲気は暗く、皆、苦虫を噛み潰したような表情をしていたが……。

 突然、会議室の扉が勢い良く開き、一人の兵士が入って来る。

「報告します!!魔王ジェネラルが突如、倒されたとの報告がありました!」

「なっ、何じゃと!?それは誠か!!?」

 先程とは打って変わり、驚きと喜びに溢れており、中には、涙を流し抱き合って安堵する者もいた。

「……良かったホントに。しかし何故突然、魔王ジェネラルは消えたんですかね?」

「それが、突然上空から何かが飛来して、魔王の首を斬ったという話ですが、夜の森は危険為、未だ詳細の確認は取れていない状況です」

「そうですか。まだ予断を許さない状況ではありますね。では、日が昇り次第、すぐ確認をしてください」

「はい!了解致しました」

★★★

 知らぬ間に、世界を救っているとはつゆ知らず、呑気に仕留めたオーク(魔王ジェネラル)をキッチリ綺麗に解体し終わる。

 最初は、太ももにあたる部分の肉を木に刺して、焚き火でじっくり炙り、脂が滴るその光景に、生唾を飲み込み、今かいまかと、待ちきれない勇者の姿があった。

 しばらくして、中まで火が通ったのを確認すると、口を大きく広げかぶりつく。

「何じゃこりゃーーーーー!!ヤバい、めっちゃめっちゃ美味い!!!!」

 味付けはシンプルに、手持ちにあった岩塩のみであったが、噛んだ瞬間に、程よい塩気と肉汁がこぼれ落ち旨み成分が溢れ出す。咀嚼は、片手で数える程しかせずとも、勝手にホロリホロリと消えていく。

 喉を通れば、身体に染み渡り、肉と自身が一体になるような感覚が芽生える。

完璧に、全璧に、圧倒的に美味である!!!

 500キロはあるであろう、オーク(魔王ジェネラル)の巨大全身をあまりの美味さに、我を忘れ一気に食い尽くしてしまった。

「ふぁ〜、ただでさえ美味い肉だったが、空腹は最高のスパイスだと、よく言うがその通りかもしれんな」

いや〜食った食った!今日はいい日だな。

……また、コイツどっかにいないかな〜。

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