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第14話『結実』 2/2

「地下ギルドって、ランクのような物で人を格付け管理とかしないん?」

「そうですね。さまざまな意見をお聞きして、常に最善の方針を検討しております。質問で返して恐縮です。一樹さんは、ランク付けについて、どのようなお考えをお持ちなのですか?」

「率直に、人により能力が違うから、格付けすれば能力に応じた範囲での依頼達成率が上がるかなと」

「なるほど、確かにおっしゃるとおりですね」
 
「なんというか、失敗防止策に近い感じか……。あとは、格付けで誰がどの程度強いか見分けが付けられるかと」

「なるほど。最大のメリットは、格付け管理により失敗防止というところでしょうか?」

「要約するとそんな感じだね」

「たしかに本来は個々の実績に応じて、能力のランクづけをする方がわかりやすいですね」

「その方が強さの区分がつくというか」

「そうなると、能力の格付けとその者の完遂能力は、別々に管理する必要がありそうですね」

「あっ、そうか……。たしかに」

「そこで問題が起きてしまいます。何だと思います?」

「いきなりいなくなるとか?」

「はい。突然ふらふらっとどこかに行ってしまう。それは他の地域かもしれないし、他界したかもしれない」

「音信不通は、困るよな……」

「おっしゃる通りです。ギルドには引き留めたりする権限などない物ですから、そこまでみていたらキリがなくなってしまいます。それにねなしぐさな人々らをこの地域にとどめておくなど、できもしないことなんですよ」

「それもそうだ」

「いなくなった時に、必要な時に欲しい能力の者がいないとなると、管理責任も問われてしまう。それならば初めから管理しない方が、効率は良いというのが今のところの見立てでございます」

「なるほどな。依頼は誰でも受けられるけど、達成報告は早い者勝ちだからなー」

「はい左様です。聡明な一樹さんでしたらお気づきかも知れません。我々は、報酬を得るきっかけは提供できても、やり遂げるのは本人次第でそこは管理していないですし、自分自身で管理するものだとの考えを私は持っております」

「たしかに、その通り」

「同じ考えで嬉しく思います。とくに地下ギルドは自由なものですから、出入りは自由で依頼についても誰が受けてもよく、成果については早い者勝ちでの報告でございます。しかもギルドへの所属は必要なく、身分証明も必要ございません。仕事の紹介と買取の管理はしていても、探索者の管理はしていないので、いつでも誰でも来られるそのような環境を提供しております」

「結構深く、考えているんだね」

「ご理解いただけたのは何よりでございます。一樹さんのおっしゃる格付けは魅力的な内容なので、うまくいく見込みがつけばぜひ検討させてください」

「あっ、そこまで考えなくても大丈夫だよ。なんとなく思っただけだからさ」

「わかりました。一樹さんからのご提案として丁重に記録しておきます。また何か案ございましたらお知らせください。そこからヒントを得て、さらによい物が生まれるかも知れません」

「たしかにそうだね。こっちこそありがとう」

「はいこちらこそ、有意義な時間でした。感謝いたします」

 人の命が軽い世界なら、当たり前かもしれないなと一樹はふと思っていた。ランクづけしても気がついたら死んでいたなんてことは、往々にしてあり得る。

 この地下ギルドは、この地下街にしかないから、他の国との連携も取れないし、誰がどうしたなどの管理の仕事を増やしても、あまり意味を持たなそうだ。
 なぜなら、ダンジョンでは人の生死など非常に軽く、昨日いたやつが明日いるとは限らない。そんなものだ。

 ――確かこんな感じだったよな。

 思わず、ぼんやりと思い起こしていたけど、こうして十層で独占しているのもたしかに早い者勝ちだし、蘇生薬がなければ明日は我が身なわけだ。

 ほんと回復と蘇生は必須だなと思いながら、スッカリ寝入るモグーを眺める。

 モグーはベッドでスヤスヤと眠っていた。よほどあのベッドがお気に入りのようで寝付きはすこぶる良い。疲れもあるだろうけど、それにしたって早い。一樹は、汗のかいた体をさっぱりさせるため、風呂場へ向かった。


「久しぶりにステータスでも見てみるか」
 
 風呂から上がりさっぱりしたところでソファに座り、しばらく眺めていないステータスをコンパネから呼び出して見た。

 コンパネ自体は便利だけど、こちらから操作しない限り、何か動くことも知らせることすらないから、能動的に利用しないと気がつかないことの方が多い。
 
 一樹はコンパネを開き、作成可能なものたちを見つけると、ワクワクが止まらなくなってきた。
 
【種族レベル】47+51UP! ⇨98(作成種類増加)
【職業】クラフター。
【JOBポイント】残23+50UP! ⇨73(作成品質増加)
【製作スキル】
  コントロールパネル:MAX
  言語理解:MAX

 魔道具
  マジックバック(偽)(MAX)
  ポショ(偽)(MAX)
  蘇生薬(偽)(MAX)
  特殊剣……永続効果の剣をランダムで入手。
  魔法テント(1)⇨10へ(MAX)
  強毒化(1)⇨10へ(MAX)
  ネコメタルオブデス(0)⇨1へ
  eyes of death(0)⇨1へ
  マッスルオブゴールド薬(0)⇨1へ

 魔導武器
  new! シャイニングチェーンソー(0)⇨1へ

 魔導銃
  (不可)(偽)ブリザードフォックス 大型ハンドガン(魔導弾丸を使用)
  (不可)(偽)フレームドッグ 大型ハンドガン(魔導弾丸を使用)
  
 魔導書
  (不可)…(偽)まだ解放されていません。
  (不可)…(偽)まだ解放されていません。

【レアスキル】『経験の書』創造
 ・短剣術:MAX
 ・暗殺術:MAX
 ・紅彩術:MAX
 ・格闘術:MAX
 ・ゼルデニア古流格闘術:MAX

【アイテムスキル】
 ・衝撃波

【アイテム】
 ・魔法袋x5
 ・エルデリングx2個
 ・短剣x2
 
 変わらずの斜め横な物が現れて楽しすぎる。
 今回はそれなりにJOBポイントがあるので、重要そうな物からあげようと考えていた。

 一つだけ一樹はモグーを横目に、気にしていたことがあった。コンパネを出している時に目で追うのは、本当に見えているのか、単に指の動きを猫のように追っているのかだ。

 ギャンブルマスターが言っていたように、自身の能力として気がつける者とそうでない者に別れるという。もし、見れなく気がついていないなら、一樹の持つスキルで『コンパネ』を製作してあげることで、モグーも今より強くなるのではないかと思っていた。

 ――今度聞いてみるか……。

 頭の片隅に入れておきつつ、次は自身のスキルの割り振りを始めた。

「まずは、強毒化(偽)を9ポイント追加してMAXにするだろう……。あとは、魔法テントもMAXにして……。ネコメタルオブデスはすげー気になるな」

 気になる物が増えすぎていた。
 とりあえずネコメタルは1だけ振って見て後で試してみよう。魔法のテントは中に人がいる時は拡張しないのだろうか、何も変化がない。一種の安全装置なのかもしれないと都合よく、ぼんやりと考えを巡らせていた。
 
 他にはこれだ「シャイニングチェーンソー」って、これなんだよ……。
 輝くのは単に刃の光を乱反射して見せるだけのような気がする……。説明的にはなんでも切れるとあるけど果たして……。

 考察していると突然の変化があり少し驚く。

「――あれ?」

 この時一樹は初めて、警報という物を体験した。
 目の前にあるテレビモニターの上でオレンジ色の回転灯が突然現れると、シャカリキに回って音と光で何かを知らせてくれている。

 モニターの画面に映る様子を見ると、今まさに甲冑に身を纏う騎士と呼ばれる出立ちの者が、一斉に部屋へ入ってきた。数にして五人はいる。

「これはすげーな。夜襲か……」

 入ってきた者たちは、もぬけの殻となっている部屋に愕然としているのか、肩の力を落としてすぐに出ていってしまう。もしこの時、無防備に宿のベッドで寝ていたらと思うと恐ろしい。
 
 一樹は、突然の来訪者が来た後も当然ながら、この安全な魔法のテント内で悠々と過ごしていた。

 ここまで安全だと、いざというときに逃げられる場所にもなる。しかも相手には出入り口自体を認識できないし、触れることすらできない。まさに最強の隠れ家といってもいいだろう。さらに、現代的な最新の設備なため快適そのものだ。
 それにここなら『ポショ』などを作りまくれる。在庫を保管できる場所としてはまだ狭いので、先ほどあげたレベルがいつ反映するのか、確認できた時に増産すればいいだろう。

 とはいえ、ついに教会騎士団も動き出したとなると、堂々と町中を歩いていたら捕まるのは間違いなさそうなので、隠れながら出歩くしかなさそうだった。

 そういえばあの襲撃者の中に見知った顔があったような……。確かあの悪人ヅラは冒険者ギルドのギルマスだったに違いない。
 あの掘建小屋の時のように奪う気満々でやってきたのだろう。そうは問屋が下さないぜと一樹は思いほくそ笑む。

 テントを早めに準備して正解だった。
 

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