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第12話『いくぜ!スキルマックスマキシマム!』1/2

 ――偽物が本物を凌駕したら、本物は何が求められるのだろう?
 
 ふとそのような疑問が、一樹の頭をよぎる。

 普通に考えたら、さらに品質を上げる努力をするか、単に偽物を排除するとい行動だろう。やはり選択として、排除されるのが一番わかりやすい。実際一樹は排除されようとしているし、現に賞金首のままだ。

 状況からして、何を持って一樹の勝ちかといえば、生存権を脅かされないことだ。死んだら終わりで、生きていさえすれば挽回できる。

 今一番大事なことは、魔石を集めなければならない。ゾンビアタックをコソコソとやりながらでお目当ての物を狙うには少々難儀な所だ……。
 
 作りたい物はいろいろありすぎて、時間はいくらあっても足りないほどだ。そういえば他の品物もいよいよというか、とうとうだろうか。種族レベルがあがることで、作れる種類が増えてきた。

 今までと異なり、より上の品だからなのか、魔石が必須でどの程度かは、放り込んでみないとわからない。
 やはり変にこだわらない方が、早く集められそうにも思えてきた。魔石は魔法のテント分だけは買っておいて、あと他に必要な分は、自力で狩りをして獲得が賢いかもしれないとも考えていた。命あっての物種だからな、安全対策は最優先だろう。

 ――となると、善は急げだ!
 
 一樹は、真昼間からコンパネを眺めながらゴロゴロしていた宿を後にして、地下ギルドへ向かおうとした。当然のようにモグーも誘って向かう。

「モグー! いくぞ!」

「うん。 魔石? 買いにいくの?」

「ああ。よくわかったな」

「んーなんだろう? どこか声が聞こえるんだよね?」

「マジ?」

「うん」

「もしかして、俺の考えが聞こえるとか?」

「聞こえるようでいて……。違うような?」

 モグーは、可愛らしく首をかしげる。
 どっちなんだと思いつつも、一樹が人に変えてしまったから、なんらかしらの結びつきというか、絆のような物で繋がっているのかもしれない。

 
 
 モグーと二人でギルドへ向かっていると、ふと思うことがある。地下だというのをうっかり忘れそうになることだ。

「ほんといつも思うけど、ここが地下なんてこと忘れてしまうよな」

「うん。青空はあるし雲もあって、太陽もあるから本当に地上みたい」

「ある意味、地上とは異なる国にいる感じがするな」

「うん。そうだよね。そういえば、お城が地下にはないね」

「おっいいところに気がついたな。たしかにないよな」

「うん。建てないのも何か理由があるのかな?」

「多分、教会側が反対しているんだろうな」

「そうなの?」

「元々ある物を使うか、せいぜい三階建てを作るぐらいにとどめているだろ?」

「そういえば、そうだよね」

「おそらく、城みたいな馬鹿でかい物を作ると、元々ない物だから何に影響するかわからないんだろうな」

「影響?」

「ああ。地下街の魔法って仕組みはわかっても再現できないから、あまりいじりたくないのが本音だと思うぜ」

「難しそうだもんね」

「だよな。ただ、今後は何かしてきそうだけどな」

「なんで?」

「今、地下ギルドが異常に儲けているだろ?」

「うん。一樹の『ポショ』のおかげだよね?」

「ああ。それもある。皆、普段以上に狩りまくっているからな、市場は盛況なのさ」
 
「あっわかった! 国も、もっと儲けようと目をつけたんでしょ?」

「その通り。最近地下ギルドにだけでなく、ダンジョンにも地上の人らが増えてきているだろ?」

「そうなの?」

「ああそうさ。今まで足りないと騒いでいた人らが、チャンスとばかりに我先に買っているから余計に足りない」

「もう少ししたら、安定とかしないの?」

「それは誰にもわからないな。だから、今買ってしまおうと動く奴が出るのも当然だろうな」

「一樹ものしり!」

「ん? セバスの受け売りだよ。あの人ほんとすげえよ」

「どうなっちゃうんだろうね?」

「地下街もガルニア王国の所有物で、国の一部だろうから、動きがある見たいだな」

「ダンジョンも?」

「多分な。この国にとって貴重な収入源だろ? 国が強制的に、何かしそうだなってね 」

「今のままがいいよね……」

「俺もさ」

 こうしてダンジョンの多さからも、より多くの稼ぎを得るため人が集まってくる。
 地下都市でも、昼間のせいか人はかなりおり、あまり目立たないようにして人をすり抜けながら地下ギルドを目指す。
 
 地上とは異なり、多種多様な種族が入り混じるので、この中で目立つのは逆に難しいかもしれない。
 移動中気をつけなければならないのは、賞金かせぎの連中はいついかなる時も、やれると思ったら突然突っ込んでくるから、あまりゆっくりと歩いてもいられない。

 警戒だけは怠らないようにして進む。

 スマートな賞金稼ぎなどはまずいない。襲ってくるのは野蛮人のような連中がほとんどだ。かけられた金額ゆえ、ロクな下調べもせず特長だけ見つけて強襲する輩も多い。

 まあ奴らも仕事がなければ食いっぱぐれるし、365日連休とおなじだから当然必死にもなる。
 それに、襲撃対象が有名な奴であればあるほど、任務を達成した時は、箔が付く。対象者の警戒はかなり高いし、競争率も高い中で襲撃対象を仕留めるのは難儀だし、完遂できた場合は、より高い信頼性を得られる。

 だからこそ、なんとしてでも達成しようと、躍起になる連中が多いのも確かだ。
 
 ギルドにつきさっそく、買取窓口へ直行して相談を始める。
 
「買取を募集ですか?」

 受付嬢は、買い取りたいことがそれほど珍しいのかそれとも、別の理由なのか不思議そうにする。

 理由なんぞどうでもいいじゃないかと一人思うものの、理由は理解したいと考えていた。不思議そうにするのは、一樹が依頼の仕方を間違えているのか、不自然な物を買取しようとしているかどちらかだろう。

 結論から言うと、不自然な物に見えたようだ。なぜなら魔石は、ギルド以外に買取ができない。欲しい場合は、ギルドから買う方法か、自ら狩りで手に入れるか個人間での依頼の三通りしかない。
 ただし個人間はトラブルが多く、今のルールになったのもトラブルのせいのため、ギルドからの購入をお勧めされた。

 そこまでのこととは知らずに、依頼すれば集まると安易に考えていた。とはいえ、ギルドからなら一定の品質は担保されたような物なのでさっそく相談だ。

「ギルドから魔石を購入したいんだけどどうすればいい?」

「はい。等級と希望の数を仰ってください。金額を算出します」

「等級? すまん、等級ってなんだ?」

 俺のまだ知らない物事が出てきた。少しワクワクするじゃないか。受付嬢は嫌な顔ひとつせずスラスラと答えてくれた。

「一番下が十級で、上の等級にいくに従い等級数は少なくなり、品質は上がっていきます」

「なるほど、一級が一番上なわけか」
 
「はい。おっしゃる通りです。現在販売可能な等級は、十級から四級までです」

「金額は、どのぐらいなんだ?」

「はい。基本的に一ゴールドで購入可能な個数を提示しています」

「へえ、そうなんだ」

「はい。十級は百個で一ゴールドです。九級は五十個。八級は二十五個、七級は十二個。六級は六個。五級は三個。四級は一個。ここまでは一個ゴールドあたりの購入できる数です」

「ほぼ倍なんだな」

「はい。おっしゃる通りです。ただし三級からは、値段も個数も大きく変わります。十ゴールドで一個。二級は百ゴールドで一個。参考までに一級は、一万ゴールドで一個です」
 
「三級からの差がすごいな……」

「ええ。対象となる魔獣の力もさることながら、討伐する難易度が上がるためどうしても高額になっていきます」

「それならさ、一番下の魔石を濃縮加工して一つにしたら、より上の等級にならないか?」

 ゲーム的に見たら、下位等級を複数組み合わせて上位にするなんてことは、よくあることだけど現実にも通ずるのかが気になった。

「ええ。おっしゃる通りです。錬金術ギルドが主に担っています」

「やはり出来るのか、ロマンだよな」

「ロマン? ですか? 錬金術ギルドとは言え、できるのは四級まででございます」

「それ以上はできないのか?」
 
「残念ながら、いまだかつて成功した事例がない状況です」

「わかった。説明助かる」

「そのため四級まではできるので、それを中心に栄えております」

 ――なるほどな。考えることは皆同じだな。
 
 一ゴールド単位でできることをわかりやすくするには、四級がベストだろう。
 一旦、四級を購入して魔法のテントがどの程度か確認してみることにしようと考えた。
 
「そしたら、四級を千個頼む。千ゴールドは、ここにおけばいいか?」

 今までの稼ぎがあるので問題ないとしても、大盤振る舞いだ。それだけ死活問題なわけで、早々に解決したいことでもある。

「はい。少々お待ちください」

 個人的にはかなりの大金だけど、受付嬢は何のこともなく平然と対応を始めた。

 受付嬢は席を外してからしばらくすると、奥の方から台車に登山リュックほどの袋を一個乗せて、重たそうにし運んできた。

しおり