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09. 冷たい手

どんなに擦っても冷たいまま。
どんなに呼んでも振り向かないまま。
どんなに望んでも還らないまま。

人の死を3つ知ってる。
一つは小学低学年の時。
クラスメートがある日来なくなった。
先生が暗い顔で告げる。
貰ったハンカチーフが嬉しかった。
私は子供で何もわかっていなかった。

一つは小学低学年の時。
母の姉の夫の母のお葬式。
初めて人の死に顔を見た。
それは白く、ただ白かった。

一つは高校3年。
伯父さんが死んだ。
病気で長くないことは知っていた。
よく持ったほうだと思う。
月が煌々と雲の間から覗いていた。
慌ただしい親族の顔。
呆けた従姉妹の顔。
疲れた父の顔。
全てが私にとって無関係に見えた。

その冷たい手は二度と握り返してくれない。
ただ骸が転がるのみ。

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