159章 敵を倒すコツ
ヘッドホンとの対戦が始まってから、1時間が経過しようとしていた。
ヘッドホンはあらゆる手段を用いるも、アカネにダメージを与えることはできていない。やることなすこと、無駄に終わってしまっている。
一方的に攻撃を受け続けているのは、敵の体力を減らすためである。スタミナを奪ってしまえば、倒すのは簡単だ。
こういうやり方をするのは、触れられてもいいと思うもののみだ。ゴキブリなどの汚いものだった場合は、同じやり方は選択しない。ああいうものは、触れているだけで気分を害することになる。
ヘッドホンは動き続けたことで、動きが徐々に鈍くなっていった。敵をへばらせる作戦は、功を奏することとなった。
敵の動きが鈍くなったところで、反撃をしかけていく。エネルギーの大部分を消耗しているので、簡単にやっつけられるのではなかろうか。
ヘッドホンのコードを手に取ったあと、本体と切り離す作戦を取った。身体とコードをバラバラにすれば、戦力を半減させられると思われる。
敵がゴキブリであったなら、握りつぶす作戦は絶対に避ける。最速で倒す方法だとわかっていたとしても、不純物には触れるのは勘弁だ。
圧力を加えてから3分ほどで、コードを切り裂くことができた。火、氷には無類の強さを誇っても、物理攻撃にはもろさがあるようだ。
コードを引き裂かれたヘッドホンは、移動が不規則になった。コードを失ったことで、バランスを失ってしまったようだ。
右側のヘッドホンが、こちらに近づいてきた。アカネは左手でキャッチすると、握力で握りつぶそうとする。粉々にしてしまえば、復活することはないと思われる。
ヘッドホンを握りつぶしている間、切ない気分を感じることとなった。敵としてではなく、音楽を聴く道具として接したかった。
ヘッドホンは圧力に耐えらえず、原形を完全に失うこととなった。元の形を見ていないものからすれば、ヘッドホンに見えることはないと思われる。
ぺちゃんこになった、ヘッドホンは元通りになることはなかった。それを確認したのち、左側のヘッドホンを手に取った。その後、じわじわと圧力を加えていく。
左側のヘッドホンがぐちゃぐちゃになったのち、
「ドカーン」
という音がする。周囲を見回すと、ヘッドホンが跡形もなく消し飛んでいた。
「これで終わった」
90分ほどで、ヘッドホンをやっつけることができた。これまでの経緯を踏まえれば、上出来といえる結果である