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春の準備あれこれそれどれ その2

 今回、我が家の子供達、

 リョータ
 アルト
 ムツキ
 アルカちゃん

 以上の4人が新たに教会の学校に通いはじめることになったわけですが、一緒に通いはじめるコンビニおもてなしの店員さんの子供達もいるんです。

 それが、チウヤおもてなし旅館でコンビニおもてなしチウヤ出張所を担当してくださっているクマンコさんの子供達です。
 まだ小さいお子さんをのぞいて、今回男女会わせて6人の子供達が我が家の子供達と一緒にガタコンベの教会の学校へ通うことになりました。

 男の子が2人、女の子が4人です。

 男の子が、クマイチくん、クマニくん
 女の子が、クマイチコちゃん、クマニコちゃん、クマサンコちゃん、クマヨンコちゃん

 ……どこか、すごく覚えやすいというか、何人目の子供なのかわかりやすい名前に見えるのは……きっと僕の考え過ぎですよね、うん……

「こうスて、我が家の子供達を学校に通わせることが出来ることになったのもぉ、店長さんのおかげですぅ」
 
 旅館へ様子見にやってきた僕に対して、クマンコさんは満面の笑顔を浮かべながらそう言ってくれました。
 確かに、クマンコさんがこうして地元に帰ってお父さん達と一緒に仕事を出来るようになったのも、クマンコさんの子供達がガタコンベの学校に通えるようになったのも、スアの転移ドアがあればこそですからね。

 そういう意味では、僕のおかげと言うよりもスアのおかげって意味合いの方が強いわけなんですけど、

「こうスてぇ、営業出来なくなってた、父さんの旅館を復興させてくだスった上にぃ、定期魔道船まで運行していただいてぇ、たくさんのお客さんを運んでくださったおかげでスぅ」
「いやいや、それこそこの旅館を魔法で立て直したのもスアですし、この一帯を荒らし回っていた魔獣達を今も定期的に狩ってくれているのはイエロ達ですから。僕はなんにもしてないですって」

 そう言って笑う僕。
 そんな僕にクマンコさんは、再び笑顔を浮かべながら深々と頭を下げてくれました。

 なんといいますか、その仕草がすごくほんわかしていて、見ているだけでこちらまで癒やされてしまう……そんな感じの素敵な感じです、はい。

 
 ちなみにですが……

 
 コンビニおもてなしがあります辺境都市ガタコンベ一帯はすでにすっかり春めいています。
 まぁ、雪もほとんど降りませんでしたのであんまり冬らしくはなかったんですけどね。
 一方、辺境都市ガタコンベよりもかなり北方にあります、ここチウヤゲレンデは今も雪がどっかりと鎮座しています。

 なんでもこの一帯は年中雪があるそうなんです。

 そのおかげで、雪景色を満喫しながら温泉を楽しみにきたり、雪遊びを満喫しにくるお客さんが年中途切れないんだとか。

 以前は、この雪のせいで駅馬車の運行もかなり困難だったそうでして、ひどい時には1ヶ月近く駅馬車が運行停止に追い込まれることも少なくなかったんだとか。そのせいでこのチウヤゲレンデは、かつては知る人ぞ知る観光地って赴きだったそうなんです。

 ですが

 今は、定期魔道船が朝晩1往復ずつ運行していますので、雪のせいで交通が遮断されることもありません。
 そのおかげで、以前の倍以上のお客さん達が訪れているそうなんです。

 さすがに温泉宿1棟では対応仕切れなくなりつつあるそうなので、今はルア工房のルアにお願いして新棟を増築する計画を進めているところだったりします。

 今日は、その打ち合わせも兼ねてチウヤゲレンデにやってきていたわけですけど、窓の外ではソリで遊んでいる多くのお客さん達の姿が見えました。
 どうやら、このチウヤゲレンデの雪山シーズンはまだまだ終わりそうにありませんね。

◇◇

 あれこれ打ち合わせを終えた僕は、

「あ、そうそう。クマンコさん、これを……」

 そう言って僕が魔法袋から取り出したのは、ランドセルでした。

「クマイチくんや、クマイチコちゃん達の入学祝いです」
「まぁまぁ、こんな立派なものをぉ」

 僕が渡したランドセルをクマンコさんはびっくりしたような、嬉しそうな、そんな笑顔で見つめていました。
 

 この世界にランドセルは存在していません。
 コンビニおもてなしの倉庫に、爺ちゃんの代からの不良在庫として残っていた1つをですね、テトテ集落の皆さんにお願いして量産してもらいはじめたのですが、その完成品を6つ個人的に購入してお持ちしたわけです。

 早速ランドセルを背負ったクマイチくんやクマイチコちゃん達は、

「うわぁ、これを背負って学校にいくんだクマ」
「すっごく楽しみくま!」

 もれなくみんな、すごく嬉しそうな声をあげながら早速ランドセルを背負って僕の周囲を踊るようにしながらスキップしまくっていました。

 その光景に、僕とクマンコさんも思わず目を細めていました。

◇◇

 そんなわけで……

 コンビニおもてなしでも、このランドセルの販売を開始することにしました。

 辺境都市ブラコンベやナカンコンベにも学校がありますので、今度出向いてこのランドセルを売り込んでみようと思っています。
 ちなみに、ガタコンベでは、このランドセルと一緒に、以前から採用されていた手提げ鞄も準備していたのですが、今年の春から学校に通う予定の子供さん達は、

「僕これがいい!」
「私も!」

 と、全員がランドセルを選択したんですよね。
 
 ちなみに、このランドセルですが教会の学校に通う子供さん達には無償で提供させてもらうことにしています。
 コンビニおもてなし本店が存在している地元っていうのと、パラナミオがお世話になったってのもあるわけです、はい。

 ……で

 そんな感じであれこれ教会の学校のために配慮をしてあげていたところ、教会の学校でシスター兼先生をしているシングリランから

「タクラ店長さん、実は折り入ってお願いがございまして……」

 そう切り出されたのですが……

「実は……教会の学校保護者会の会長をお願い出来ないかと……」

 そう切り出された次第なんですよ。
 なんでも、今までは生徒数が少なかったのもあって、あえて設けていなかったそうなのですが、

「この春からは、定期魔道船のおかげもあって去年の3倍以上の子供さん達が入学されることになっていますし、そこまでの規模になる以上、学校運営をよりよくしていくためにもぜひ、お願いしたいと思っておりまして……」

 シングリランはそう言いながら深々と頭をさげました。

 ……う~ん……

 正直、この申し出には困惑しました。

 ……いえね、今の僕はコンビニおもてなしの総責任者としての立場がありますし、もうじ辺境都市ウリナコンベに開店予定のコンビニおもてなし7号店の店長としての用務が待っているわけです。
 辺境都市ガタコンベの領主代行もしていますが……まぁ、これに関してはガタコンベ商店街組合の蟻人達がほぼすべての業務をこなしてくれていますので、名ばかりの名誉職といいますか、王都から補助金をもらうために祭り上げられているといったところなわけです。

 まぁ、とはいえ……これ以上役職が増えるのもちょっとなぁ……と、思案していた僕なのですが、

「じゃあ、奥様にお願いすることは出来ませんか? いえ、もう、なるべくお手間は取らせませんから」

 シングリランは、今度はスアに就任をお願いしてもらえないかと言ってきたんです。
 
 いや……それこそ……ねぇ……

 最近はずいぶん改善されたとはいえ、スアは元々超絶ひきこもりだったせいで超絶対人恐怖症だったわけです。
 そんなスアに、保護者会の会長を……なんて、ちょっとどうだろう……

 そう思い悩んでいると、後方から僕の背中をつつく手が……

「……やっても、いい、よ」

 そう言いながらそこに立っていたのは、スア本人でした。
 転移魔法で出現したらしいスアは、すごくやる気の表情をその顔に浮かべています。

「だ、大丈夫なのかい、スア?」
「……うん、今までは、子供達のあれこれはほとんど旦那様まかせだったから……私も頑張りたい、の」

 スアはそう言って頷きました。

 スアが言うとおり、今までの学校関連の行事に関してはほぼ全て僕が対応していました。
 だからといって、別に嫌々やっていたわけでもありませんから、スアがそこまで気にしなくても……と思ったものの、スアが自分からここまで積極的にやる気に満ちているわけですからね、

「じゃあ、お願いしてもいいかな? 僕もお手伝いするから」
「……うん、ありがとう。旦那様」

 スアはにっこり微笑みながら、僕の腕にそっと抱きついてきました。

 こうしてスアが教会の学校の保護者会の会長に内定したわけですが、そんなことがあったもんですからこの日の夜の夫婦の営みはいつもよりちょっと激しかったのは言うまでもありません。

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