第二話 黄巾賊残党と豪傑
190年春、雨天。
虎牢関から七日後、もうすぐ、降りしきる雨の中、許昌にある村のある東の方角で火の手が上がり何やら悲鳴や怒声が聴こえる。
「助けて――!」
「嫌――!」
「殺せ――!」
賊か? もしや黄巾賊か? 関平達は雨音と闇に紛れて近付き状況を見てみると、やはり黄色い衣服を纏い家々に火を放ち、財貨を略奪し、女を強姦している黄巾賊残党であった。
その数約五百人。
関平はまず、一番地位の高い頭目か? 強い奴を殺して士気を下げ、恐怖を与える事にした。
何故なら、幾ら何でも三百人対五百人では、確実に死傷者が出てしまう。
村人を襲い油断している今が機会だ。
配下に指示を与え財貨や女を運ばせている奴が居た。
禿頭で熊の様な身体の大きさをしている奴が居る。
頭目か!
関平達は華雄以外、隠れて弓で狙いを定め、黄巾党残党の頭領達の背後に周り放った。
「ぐわ――。誰だ! 儂の右肩に矢を刺した奴わ! 探せ! 殺してやる!」
関平達は黄巾賊残党の奇襲に成功し、討ち取った者は無視して、傷を負う者は迅速に殺して、再び村に向かうと、歳は三十代後半の黒くて長い顎髭をした、赤い甲冑を纏った長髪の男が大きな弓を放ちながら黄巾賊をたった一人で殺していた。
その弓使いの男と戦い、恐怖に駆られている黄巾賊残党に追い討ちを掛ける様に関平は命令を下した。
「俺達も弓使いに続くぞ! 掛かれ!」
馬乗から槍や刀で斬り込み、素早く斬り、素早く離れ、致命傷を与えるのは無理でも混乱に拍車を掛けさせ、弓使いの男の援護をし、気付けば、黄巾賊残党を全滅させた。
やがて、戦いが終わると弓使いの男は話しかけてきた。
「儂の名は
「俺は関平と申す」
「関平殿と言えば、あの虎牢関で武名を挙げた者か?」
「左様。その関平だ。黄忠殿。貴殿の武勇は素晴らしい。機会かあれば、また、会おうぞ」
去ろうとした関平に。
「この黄忠。一人では、黄巾党残党を討伐出来なかった。どうであろう。客将として関平殿の家臣にして下さらぬか?」
「黄忠殿。貴殿の様な豪傑が客将になって下さるのはありがたいが、今は流浪の軍故、ろくに禄は払えぬが、それでも構わねか?」
「儂の事は構わぬ。お頼み申す」
「まあ、良かろう。他の黄巾賊残党から村の生き残りを近くの村まで逃がさねばならない。共に許昌に行こうぞ」
こうして、村の生き残りである女、子供、併せて十五人を護り、黄巾党の武器や馬等を奪い、許昌まで護衛して行くのであった。