152章 マグマトラ
空を飛び回っていると、真っ赤な生物と遭遇する。名前を付けるとするならば、「マグマトラ」といったところだ。うしろのトラについては、最初に浮かんだものをつけた。
真っ赤な生物は、炎の攻撃を繰り出してくる。真っ赤な色だけで判断すると、3000℃に達しているのではなかろうか。生身の人間が触れたら、一瞬であの世行きとなる。
アカネは1兆℃以上に、耐えられる身体であるため、熱で焼かれることはない。熱だけの攻撃ならば、なんの脅威にもならない。
魔物の攻撃をガードしたあと、氷の魔法を唱えることにした。火属性の的なので、氷は有効だと思われる。
氷魔法は魔物にクリーンヒットしたものの、ダメージを全く受けていなかった。炎の温度が高すぎて、氷は効果がないのかな。
アカネはもう一度、氷の魔法を唱えてみる。一度目はダメだったとしても、二度目は効果を得られる可能性は充分にある。
二度目もクリーンヒットしたものの、魔物は元気そのものだった。アカネはこの姿を見て、氷を無効化する魔物であることを悟った。マグマトラを撃破するためには、別の魔法を唱える必要がある。
真っ赤な生物は、空に向かって炎を吐き出す。青色をしていたはずの空は、あっという間に真っ赤に染まることとなった。
空が真っ赤に染まったあと、魔物の動きが100倍速になった。地の利を得ることで、戦闘力が増すタイプの敵のようだ。
魔物は水を得た魚のように、こちらに攻撃を仕掛けてくる。あまりにすごかったので、生身で受け止めることにした。ダメージを受けない体であるため、こちらであっても問題はない。
自分の頬に手を当てると、肌の状態は変わっていなかった。バリア機能だけでなく、水分を保つ機能も優れているようだ。
しばらくすると、周囲が炎で包まれた。敵が視界から消えることとなり、攻撃を命中させるのは不可能となった。どんな攻撃力を持っていても、命中させなければ意味がない。
遠距離攻撃を仕掛けると思っていると、マグマトラは接近戦を挑んできた。地の利を生かそうとしないところは、頭の悪さを感じさせる。アカネが敵であったなら、遠くからとどめをさそうとする。
敵が見える位置にいるなら、ダメージを与えることができる。アカネはチャンスを利用して、魔物を撃破しようと思った。
強烈なパンツを繰り出すと、魔物はすごい勢いで飛ばされた。炎の攻撃は受け付けなくとも、物理攻撃ならダメージを与えられそうだ。
二発目のパンチを繰り出そうとすると、マグマトラが視界から消えていることに気づく。ぶっ飛ばしたことによって、姿が見えなくなってしまった。
マグマトラを探していると、こちらに近づいてくる。殴られたことが気に入らなかったのか、顔を真っ赤に染めている。
マグマトラは顔面に向けて、パンチを繰り出してきた。アカネは素早く回避すると、マグマトラのお腹をめがけて、強烈なボディを叩き込もうとする。これを食らわせることができれば、マグマトラにかなりのダメージを与えられる。
マグマトラは素早い動きで、アカネのパンチを回避する。動きは鈍いと思っていただけに、予定外の行動である。
攻撃を回避したあと、胸の方向に手を出してくる。偶然なのかはわからないけど、女性の心を傷つける攻撃となっている。
メンタルのダメージを避けるために、アカネは瞬間移動で攻撃をかわす。敵の視界から消えるとわかっていても、大切な部分を守りたかった。
稲妻の魔法を唱えようと思っていると、炎の魔法を唱えてしまった。セクハラ未遂があったことで、正しい判断ができなくなってしまっている。
炎の魔法を唱えた直後、魔物の苦しそうな音が聞こえる。
「グググググ・・・・・・・」
アカネはさらなる追撃のために、炎の魔法を唱えることにした。
「グ・グ・グ・」
声のする方向に身体をワープさせると、炎魔法で攻撃を仕掛ける。苦しそうにしている、魔物
にクリーンヒットすると、地面に叩きつけられることとなった。
声が鳴りやんだところをみると、魔物はあの世に旅立ったようだ。苦戦の末に、マグマトラを倒すことができた。
マグマトラが倒れると、空は青さを取り戻していった。その様子を見ていると、心が少しだけ和らぐのを感じた。