バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

秋の収穫祭 その2

 ブラコンベ辺境都市連合では、毎年3回大きな祭りをしています。

 春の花祭り
 夏の夏祭り
 秋の収穫祭

 これを、所属している辺境都市で持ち回りで主催・開催しているわけです。

 で、最近はこれらの辺境都市の間をコンビニおもてなしが運行している定期魔道船で結んでいるもんですから、その運行先の都市からもこの祭りに参加してもらっているんですよね。

 具体的に言うと、辺境都市ナカンコンベです。
 テトテ集落などもありますけど、やはりナカンコンベが圧倒的といいますか……

 ナカンコンベは、正式にはブラコンベ辺境都市連合には加盟していません。
 まぁ、ブラコンベ辺境都市連合に加盟している全辺境都市の人口を足しても、ナカンコンベ1都市の人口に及ばないといいますか、ナカンコンベはそれほどでっかい商業都市なんですよね。

 辺境都市連合は、もともと人口減少に悩んでいる地方の辺境都市同士が相互に助け合うことを目的として結成する連合ですからね。ほっといても人が集まっているナカンコンベがそんな辺境都市連合に加盟するメリットはないわけです。

 とはいえ、ナカンコンベに店を構えている商店達がこの祭りに出店を出してくれれば、祭りが賑わいますし、ブラコンベ辺境都市連合の都市ではあまり扱っていない商品が集まることになるわけですし、集客にも貢献してもらえるわけです。
 
 幸い、そういった事情を察してくれた上で、この祭りに参加してくれている商会は少なくありません。

 その筆頭格が、コンビニおもてなし5号店西店の真正面にお店を構えているドンタコスゥコ商会なんですよね。

 あいにく、会長のドンタコスゥコは北方にありますニアノ村ってところに出かけていて不在なんですけど、留守を預かっている面々が
「あ、はい。そのお話があったら受けるようにと会長から指示されていますので」 
 笑顔でそう言ってくれた。

 こうして、ドンタコスゥコ商会がナカンコンベからの参加表明第一号になった次第です。

 一応、今回の主催都市であるララコンベの商店街組合からナカンコンベの商店街組合に、
『ブラコンベ辺境都市連合秋の収穫祭参加者募集』
 のチラシの配布をお願いしていますので、ナカンコンベからの参加希望者も徐々に増えていくんじゃないかなと思っている次第です。

 次いで、僕達ブラコンベ辺境都市連合がしないといけないのは、ナカンコンベの住人の皆さんに対するアピールなわけです。

 要は
『みなさん、いついつに辺境都市ララコンベにて秋の収穫祭を開催いたしますので、ぜひお越しください』
 1人でも多くのナカンコンベの住人の皆さんに、これを伝えようってわけですね。

 チラシの作制はララコンベの商店街組合が原稿を作成しまして、それを魔女魔法出版で印刷してもらいました。
『えぇ、これも商売ですし、何よりウチのベストセラー作家のステルアム様の旦那様のご依頼ですし、うちの社長のご息女様の旦那様のお願いですもの、いくらでもお受けいたしますわ』
 魔女魔法出版のダンダリンダは笑顔でそう言ってくれた。

 ……そうなんだよね

 このパルマ世界最大の出版社である魔女魔法出版で、スアはたくさんの本を出版しているんだけど、その全てがベストセラーになっているんだ。
 その上、魔女魔法出版の社長であるリテールさんは、スアの実のお母さんなわけでして……スアってば、社長令嬢といえなくもないわけです、はい。

 とまぁ、そんなダンダリンダのおかげで出来上がったチラシを、僕はララコンベの商店街組合に所属している蟻人達と一緒にまずはナカンコンベの商店街組合へと持参した。

 ここにお願いしておけば、ララコンベ商店街組合に加盟しているすべてのお店にチラシを配布してくれますので、これを受け取った各お店が店頭などにこのチラシを掲示してくれるはずです。

 さらに、僕はこのチラシをコンビニおもてなし5号店西店と東店にも大量に置きました。
『ご自由におとりください』
 にして、レジ横に置いています。
 
 まぁ、レジを済ませた方についでに持って帰ってもらおうと思っているわけなんだけど、
「ついでにこのチラシも入れておきますね」
 と、レジを済ませたお客さんのレジ袋の中に一緒に入れるように、店員のみんなに指示を出してもいるんですけどね。

 これは僕が元いた世界でもよくやっていた方法です。
 それをこの世界でも流用しているわけです、はい。

 これを受けてか……秋の収穫祭が開催される週末の定期魔道船の予約がかなり伸びはじめました。
 何しろ、ナカンコンベからララコンベまでは、陸路を荷馬車で向かえば半月近くかかる道のりですからね。
 その道程をわずか数時間で結んでしまう定期魔道船が人気になるのも、まぁ無理はないわけです、はい。

 こうして、あれこれ行っている集客のための作業に手応えを感じていた僕達だったわけです、はい。

◇◇

 朝、魔法の絨毯で北に向かったスア。
 お目当てにしていた薬草なんかは予定通り収穫出来たそうですが、例の不思議な魔石の持ち主にはあえなかったんだそうです。

「……なんかね、お出かけしていて留守だった、の」
 スアはそう言いながら少し残念そうな表情を浮かべていました。

 とはいえ、一度その村へ出向いたわけですので、次回からは転移魔法で一瞬にしてそこに出向くことが出来ますし、スアも、
「……今度また、折りを見て行ってみる、の」
 そう言っていました。

 で

 戻って来たスアは、早速僕達のマイホームである巨木の家の中にある研究室へと籠もっていきました。
 ここで、秋の収穫祭で販売するための薬を作成しているわけです。
「……旦那様、見ててね、私頑張る」
 スアは、そう言うと右手の親指をグッとたてました。
 いわゆるサムズアップを僕に向かってしてきたスアなわけです。
 それに僕も、
「うん、期待しているよ」
 笑顔でそう言いながらサムズアップを返していきました。

◇◇

 秋の味覚フェア第二弾を開催しているコンビニおもてなしも、秋の収穫祭に向けたあれこれ思案しているところです。
 せっかくなんだし、秋の収穫祭用の新商品を投入できないかな、と、考えてはいるんですけど……何しろ先日秋の味覚フェア用に無い知恵を絞ってあれこれ新商品を開発・投入したばかりですからね。
 なかなかすぐには思い浮かびません。

 これに関しては、最新の店長回覧で
『新商品の案募集』
 って内容のチラシを回させてもらっています。

 これを受けてどんな案が出てくるか……あるいは出てこないのか……
 とりあえず結果を楽しみに待とうと思います。

 そんな中
「パパ! パラナミオ達もお手伝い頑張ります!」
 閉店時間が来て、店の片付けを行っていた僕のところに駆け込んできたパラナミオが笑顔でそう言ってくれました。
 その後方には、アルトとムツキの姿もあります。
 
 ちなみに、最近のリョータは、アルカちゃんのお手伝いとしてつきっきでして、多分あっちで頑張ってくれるでしょう。

 そんなみんなを見回した僕は
「期待しているよ、よろしくね」
 笑顔でそう言いました。

 こんな感じで、ちゃくちゃくと秋の収穫祭が近づいてきている次第です。

しおり