68章 感謝
アカネが道を歩いていると、住民たちは地面に膝まづいた。大名行列の通過待ちをしている、庶民さながらだった。江戸時代の光景が、こちらで見られるとは思わなかった。
「アカネ様、ありがとうございます」
「アカネ様、ご恩は絶対に忘れません」
普段は謙遜するところだけど、今日くらいは胸を張ってもいい。アカネが地雷処理の仕事をしたからこそ、住民に大きな恩恵がもたらされることとなった。
「アカネ様のおかげで、生活苦を脱却できました」
「アカネ様、ありがとうございます」
「アカネ様、心より感謝いたします」
膝まづいている住民の大半は、ガリガリに痩せこけている。ミライと同じく、満足な栄養を取れていないようだ。
路上を歩いていると、見覚えのある顔が近づいてきた。
「おねえちゃん」
「サクラちゃん、久しぶりだね」
「おねえちゃん、店に来てほしいんだ」
サクラの様子があわただしいので、ただ事ではないのが伝わってきた。
「サクラちゃん、どうかしたの」
「一週間前くらいから、おかあさんの様子がおかしいの」
「わかった。すぐにかけつけるよ」
すぐにかけつけたいところだけど、子供の脚力には限界がある。宿屋につくまで、10分くらいはかかるのではなかろうか。
「サクラは後でいくから、おねえちゃんは先にいっててほしい」
「わかった」
アカネはテレポーテーションのスキルを使用して、サクラの母親の店にワープする。手品のように消えたことで、住民は大きな声を上げていた。