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コンビニおもてなしと、ナカンコンベ大運動会 その2

 ナカンコンベで開催される大運動会ですが、その開催日はこの世界の休日でした。
 当然、いつもはどこのお店もお休みの日です。

 この世界では、休日はほとんどのお店が一斉にお休みします。
 僕が元いた世界では、そういう日にこそ営業してお休みの方々を取り込もうと躍起になるお店が少なくなかったわけですが、この世界ではそうはいきません。
 何しろ大半の方々が、お休みの日は家でのんびり過ごすことに慣れてしまっておられますので、そんな日にお店を開いてもそもそも家の外に出る人の方が希だったりするんですよね。

 コンビニおもてなしも、当然その流れにのって休日はお店の大半をお休みにしています。

 そんな中、唯一の例外は魔法使い集落にありますコンビニおもてなし3号店です。

 このお店の主なお客さんは魔法使いの方々です。
 魔法使いの皆さんって、そのほとんどの方々は平日とか休日とかいったことなどおかまいなしとばかりに魔法の研究等に没頭なさっておられまして、平日とか休日とかいったことなどおかまいなしにご来店なさるんですよね。
 そんな皆さんのために、この3号店だけは、休日だけでなくこの世界のコンビニおもてなし唯一の24時間営業も行っているわけです、はい。
 この3号店の店員は全員木人形ですので、実際寝なくても休まなくても大丈夫ではあるのですが、それでも、見た目はちゃんと休んでいるように見えるようにしておかないと、と、店に出るメンバーはローテーションしてもらっている次第です。

◇◇
 そんな事情もありまして、3号店のメンバーは、この大運動会には不参加です。
 その代わりと言ってはなんですが、今度何か別の形で埋め合わせしようと思っている次第です。

 さて、一方の参加組ですが……

 ナカンコンベ商店街に加盟しているお店ごとに、各店20人という参加枠があります。
 その登録メンバーで得点競技に参加していきまして、最高得点を獲得したチームが優勝とあいなるわけですが……
「さぁ、皆様! 出るからには優勝ですわよ! いいわね? いくわよ!」
 このナカンコンベにありますコンビニおもてなし5号店西店の店長シャルンエッセンスが、額にはちまきを巻きまして、気合い十分な様子で、僕達コンビニおもてなしの従業員一同が陣取っている席で気勢をあげています。

 ……なお、そんなシャルンエッセンスですが、運動神経皆無のため、参加メンバーには入っておりません。

 ちなみに、コンビニおもてなしで参加するメンバーはといいますと、

 本店より、 
 僕
 パラナミオ
 リョータ
 魔王ビナスさん
 ヤルメキス
 
 2号店より
 シルメール

 4号店より
 クローコさん
 ツメバ
 クマンコさん
 クマンコさんの子供達2人 

 5号店西店より
 ルービアス

 5号店東店は参加なし

 6号店より
 チュパチャップ

 おもてなし商店より
 ファラさん
 ピラミちゃん
 フク集落の子供達2人
 
 ペリクドガラス工房より
 ペリクドさんとその子供達2人

 以上、合計20名となりました。
 子供が多いため、その分大人が競技に出場する機会が多くなるわけですが、

「子供達に、たまにはいいとこ見せねぇとな」
 と、ペリクドさん。
「そうですわねぇ、ママもしっかりがんばってるところをみせないとですわねぇ」
 と、クマンコさん
「えぇ、そうですね。全力で参りましょう」
 と、フクの村の子供達のお母さん的存在のファラさん

 と、まぁ、保護者枠のお3方が非常に燃えておられる次第です。

 当然、龍人であり本気を出すととんでもないことになってしまうファラさんには、それなりに自重してもらわねばならないところです。

 ちなみに「魔法使いの方は参加をご遠慮ください」との事前お達しがあったためスアはメンバーからはずれています。

 逆に、魔王ビナスさんは
「魔法さえ使わなければよろしいのでしょう? 私、なんとしても参加させて頂きたく」
 と、珍しくすごく前向きだった次第です、はい。

 ……これは後でわかったことなのですが、魔王ビナスさんは
「子供と一緒に運動会に参加する際の予行演習をしたいのですわ」
 と、いう思惑があったそうでして……


 我が家から参加になったパラナミオとリョータは、2人とも気合い満々です。
「パパ任せてください! パラナミオ全力でいきますよ!」
「パパ、僕もです!」
 そう言って、気合い満々な様子ではちまきをしめていく2人ですが、リョータはともかく、パラナミオもまたファラさん同様に龍人なわけですので、ある程度はその特殊能力を制御してもらわないと、と、思っている次第です。

 ちなみに、この会場にはコンビニおもてなしの屋台を出しているのですが、その屋台はコンビニおもてなし5号店東店の店長スシスが、5号店店員のエルフ達と一緒に担当してくれることになっています。

「さ、皆さんがんばりましょう」
「「「はい!」」」
 すっかり店長の風格でみんなを仕切っているスシス。
 木人形の彼女ですが、エレ同様に長く木人形としてこの世界に存在しているだけありまして、結構人間のような感情を有している一面もあるわけです。
 そのおかげで、店長としてエルフ達を率いることにも慣れた様子なスシスなわけです、はい。
「じゃあスシス、屋台の方はよろしく頼むね」
「はい、お任せください」
 僕の言葉に、そう言って深々と頭を下げてくれたスシスでした。

 そんな一同が介したのは、ナカンコンベ役場の裏にあります大運動場でした。
 いつもは学校の運動場として解放されているこの運動場ですが、今日はナカンコンベ中から集まって来ている運動会の参加者とその家族・社員による応援団などの方々であふれかえっています。

『では、選手の皆様は中央にあるお立ち台の前に集合してください』
 魔法拡声器による案内が、運動場中に響いていきます。
 これを受けて、各店の選手全員が、お立ち台の前に集合していきます。
 入場行進はありません。

「じゃあみんな行こうか」
「「「はい!」」」 
 先頭に立ってお立ち台へ向かい始めた僕の後方を、元気に返答してくれたみんなが続いていきました。


「おや、店長さんじゃないですかねぇ」
 そんな僕に声をかけてきたのは、ドンタコスゥコ商会会長のドンタコスゥコでした。
 どうやら、ドンタコスゥコも選手として参加するらしく、半袖半ズボンの動きやすい服装で、額にはちまきを巻いています。
「やぁ、ドンタコスゥコも参加するんだね」
「えぇ、もちろんですねぇ。今年こそ優勝をかっさらってみせるのですよねぇ」
 僕に向かって、自信満々の表情のドンタコスゥコだったのですが
「あら、そのような大口を叩いて平気なのですか?」
 そこに、ファラさんが歩み寄ってこられると、その自信満々の様相が一気に崩れていきました。

 何しろ、仕入れ金額を決める際に、毎回ファラさんの前に手も足も出ないドンタコスゥコですからね。
 まさに、蛇に睨まれたカエルならぬ、龍に睨まれたドンタコスゥコ状態で、額から脂汗をダラダラ流していた次第です、はい。


 ちなみに、ドンタコスゥコ商会のメンバーの中には、ユキカ達の姿もありました。
 すでにドンタコスゥコ商会の中にすっかり溶け込んでいる様子で、周囲のみんなからも、
「ゆっきー、頑張ろうね!」
 そんな感じで、気軽に声をかけられていた様子でした。

 そんな中、全員が集合したところで、お立ち台に1人の女性が上がりました。
 なんでも、このナカンコンベの領主を務めている方なんだそうです。
『堅苦しい挨拶は抜き。さぁ、皆さん、今日1日、めいっぱい楽しんでくださいね!』
 その女性はそう言うと、お立ち台の前に集まっている参加者に対して親指をグッと立てました。

 ははは……なんかスアみたいなポーズを取る領主さんだなぁ。

 そんなこんなで、早速競技がはじまりました。

◇◇

 この世界の運動会の種目がどんなものなのか最初はさっぱりわからなかったわけですが、スケジュールを見ていると、

 リレー
 競争
 綱引き
 玉入れ

 などなど、僕の世界でもよく聞いた事がある種目が並んでいたもんですから心底安堵した次第です。

「さて、いきなり僕の参加競技か」
 そう言いながらプログラムへ視線を向けていた僕ですが、最初の競技は

『かけっこ』

 でした。
 僕の世界で言うところの100m程度の直線コースを走っていきます。

 一度に10人走りまして、1位10点・2位5点・3位1点が与えられ、4位以下は0点です。

「パパ、頑張りましょう!」
 このかけっこには子供の部もありますので、我が家のパラナミオが参加します。
「よし、一緒に頑張ろうか」
 僕は、気合い満々な様子のパラナミオにそう言うと笑顔を向けていきました。

 そんなわけで、最初の競技がいよいよ始まりました。

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