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未知との遭遇 ~春の訪れは今度こそドゴログマで その2

 なんか、どこかの怪遊星人が土木作業用に開発したロボットみたいな姿になってしまった巨大モグラは、ダッシュしてきたイエロとセーテンに向かって両手を突き出していきます。
「うぉ!? っでゴザル!?」
「うきぃ!?」
 それをかろうじてかわす2人。
 で、その巨大なモグラはイエロとセーテンをさらに追いかけてきます。
「パパ! ここはパラナミオにお任せなのです!」
 パラナミオはそう言うと、再びその体をサラマンダーのそれに変化させていき、巨大モグラに向かって突進していきます。
 しかし、いくら以前よりも成長したとはいえ、まだ子供のパラナミオは、巨大モグラの半分くらいしかありません。
 それでもパラナミオは巨大モグラに向かって突進していきます。
「パラナミオ戻りなさい! それはダメだ!」
 僕は思わず声をあげました。
 うん、これはホントまずいと思ったんです。
 だって、巨大モグラの口にあるドリルがですね、パラナミオに向かって回転し始めたんですもん。
 すると、その時です。
 スアが魔法樹の杖をかざしました。
「……旦那様まかせて。パラナミオは大丈夫」
 そう言うと、スアは水晶樹の杖をパラナミオに向けました。

 すると……

 僕達の前で、パラナミオの体がみるみる巨大化していくではありませんか!? 
 その体は、あっと言う間に巨大モグラの大きさを超え、さらに大きくなっていきます。
 そんな光景を前にした巨大モグラは
「ぴ、ぴぃ~~~~~~~~~~~~~~~~~」
 と、先ほどとは比べものにならないほど可愛らしい声をあげていったのですが、そのままパラナミオの巨大な足に踏みつぶされていき。

 プチ

 ……そんな音とともに、巨大モグラは僕達の目の前で完全にペシャンコになっていきました。

 程なくして、元のサイズに戻ったパラナミオは、僕に向かって走って来ます。
「パパ、パラナミオやりました!」
 そう言いながら僕に抱きついて来たパラナミオ。
 ですが、その体が小刻みに振るえ続けています。
 いくらサラマンダーといっても、まだ幼い女の子ですからね、パラナミオは……
 本当は怖くて仕方なかったのに、僕達を救うために勇気を奮い立たせてくれたのでしょう。
「パラナミオありがとう、おかげでみんなが助かったよ」
 僕はそんなパラナミオを優しく抱きしめました。
 そんな僕達の横で、イエロが腕組みをしています。
「拙者思うのですが……最初からスア様が魔法を使用していれば……」
「イエロ……確かに僕もそう思うけどさ、空気読んでよ」
 
 とはいえ、これで魔獣も対峙出来ましたし、あとはあの宝箱を改めて埋めて、んでもってしっかり封印すれば、あとはコンビニおもてなしで販売する魔法薬用の薬草採取に戻る事が出来るな……
 僕はそんなことを思っていたのですが、そんな僕の目の前でなんかとんでもない光景が発生していたんです。
 巨大モグラと一緒に穴の中から出て来てしまった宝箱がですね、かなりの数開いていまして、その宝箱がなんか光を放ち始めているんですよ。
 で、その光はいきなり空に向かって伸びていったかと思うと、なんか空がガラスみたいに割れ始めたんです。
「スア、こりゃいったいどうしたんだ!?」
「……ちょっとまずい魔法が封印されていた宝箱があったみたい、ね」
「ちょ? スア、そ、そんな危険な宝箱はないって、ジャクナにも報告してたじゃないか!? どうなってんの?」
「……あのね、旦那様」
「う、うん?」
「……早くドゴログマに来たくて……検査、はしょった、の」
 スアは、そう言いながら、てへっとばかりに舌を出してます。
 その横で、僕はムンクの叫び張りの表情を浮かべながら伸び上がっていたわけで……

「と、とにかくスア! なんとかして!」
「……なんとかしたい、んだけど」
「え? ど、どうかしたの?」
「……さっきのパラナミオの巨大化魔法で、ちょっと魔力を使い過ぎちゃってて」
 スアは、そう言いながら、再びてへっとばかりに舌を出してます。
 その横で、僕はムンクの叫び張りの……いや、こんなことをしてる場合じゃありません。
「で、スア、その魔力が戻るまでにはどれくらいかかるの?」
「……そうね、30分くらい?」
「じゃあ、30分すればなんとかなるんだね」
「……そうなんだけ、ど」
「ど?」
 スアはそう言うと、宝箱方へ視線を向けました。
 僕も釣られて宝箱の方へ視線を向けたのですが……光っている宝箱からすごい数の魔獣が出現し始めているではありませんか。
「……あれも、世界破壊魔法カタストロフの一部……世界を破壊する魔獣達」
「ちょっと何!? そのヤバそうな名前の魔法!? ってか、そんな魔獣、なんとか出来るの!?」
「……とりあえず、みんな私の側に、寄って、ね」
 慌てふためいている僕の横で、スアが落ちついた様子で魔法を展開し始めました。
 すると、スアの周囲にドーム型の防御壁が展開してきました。
「……魔力回復最優先……省エネモードだから、これ以上は大きく出来ない、よ」
「よし、みんなこの中に入って!」
 僕の合図で、パラナミオをはじめとしたコンビニおもてなしの面々は即座に防御壁の中へと入って来ました。
 やれやれ、これであとはスアの魔力が回復するのを待てば……
「きゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
 ……って思っていた僕の耳にシャルンエッセンスの悲鳴が聞こえて来ました。
 よく見ると、シャルンエッセンスは防御壁から少し離れた場所で、なんか小型の蝙蝠みたいな魔獣に囲まれてしまっています。
「シャルンエッセンス! 早くこっちに!」
「りょ、リョウイチお兄様、無理ですわ!? わ、私、恐怖で腰が抜けてしまいまして……」
「えぇい、この!?」
 僕は、即座に防御壁から飛び出すと、シャルンエッセンスの元へ駆け寄り、その体を抱き上げました。 
「あぁ! リョウイチお兄様!」
 シャルンエッセンスってば、感涙を流してますけど……いや、僕達助かってないからね……

 シャルンエッセンスを抱き上げた僕は、すぐにスアの防御壁へ戻ろうとしたんです。
 ですが、その方角を蝙蝠の魔獣達が塞ぎ、同時に、僕達に向かって襲い掛かってきたんです。
「どわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 僕は悲鳴をあげながら森の中を疾走していきました。
 その後方を当然のように蝙蝠の魔獣達が追いかけてきます。
 と、とにかく、スアが回復するまでの間、どうにか逃げ回らないと……
 そんな事を考えながら移動していると、なんか、前方に人の姿が……って、え? 人?
 で、向こうの人もなんかびっくりしているらしく、
「え?」
 って声をあげています。
 平時であれば立ち止まって立ち話でも、と思うんですけど、今も蝙蝠の魔獣達が追いかけてきているわけです。僕はシャルンエッセンスをお姫様抱っこした状態で走っていきました。
「くっそ~モグラの次は蝙蝠もどきかよ!いい加減にしてくれぇ」 
 僕は思わずそう声をあげたんですけど、そんな僕の腕の中でシャルンエッセンスは  
「いえいえリョウイチお兄様、シャルンエッセンスはもうしばらくこのままでも構いませんわ……いっそのことこのまま愛の逃避行を……」
 そんなことを口走りながら、顔を上気させ、息を荒くしています。
 こんな時に、なんて顔をしてんだよまったく。
 あ~、誰か助けてくれ~。
 僕が脳内で悲鳴を上げていると、
「えっと……お助けしてもいいんですか?」
 先ほどすれ違った男の人が、なんかそんな事を言ってくれました。

 まさに地獄に仏です。

 この人がどれくらい強いのかはさっぱりわかりまさせんが、ここは彼に賭けるしかありません。
 まさに「君に決めた!」って言いながら某ボールを投げる心境ですね。
「どこのどなたか存じませんがよろしくお願いします!」
 僕はそう声をあげました。
 すると、シャルンエッセンスは
「どこのどなたか存じませんがどうぞお構いなく~」
 そう言いながら、僕にさらに抱きついてきます。

 ……頼む、マジ勘弁してくれ……

 そんな中
「え~……まぁ、いっか」
 その男の人はそう言うと右手を伸ばしました。
 すると、魔獣達が一斉に地面に落下していったんですよ……一瞬で……一匹残らず

 ……やべぇ、この人……すげぇ人だ

 僕は安堵の表情をうかべながらその男の人の元へと歩み寄って行きました
「どこのどなたか存じませんが、ほんっと助かりました」
 そう言って頭を下げる僕。
 すると、そんな僕の腕の中で、シャルンエッセンスってば
「どこのどなたか存じませんが、ほんっと余計なことを……」
 そう言って、ぷぅと頬を膨らませているんですよ……マジ勘弁しろって……
 そんな僕らに、その男性は苦笑を浮かべていたのですが
「それよりも、あの光のところは今、どうなっているんですか?」
 おもむろにそう聞いて来ました。
「あぁ、そうそうそうなんですよ! なんかカタストロフとかいう魔法がいきなり発動しちゃいましてね、今は僕の奥さんがなんとかしようとしているんですけど、ちょっと問題が発生してまして……」
「え? 奥さまが?」
「あ、はい。僕の妻って、ちょっとすごい魔法使いなもんですから……」
 そう言いながら、僕はちょっと照れくさそうに頭をかいていきました。
 すると僕の腕の中で、シャルンエッセンスも胸を張りました。
「えぇ、スア様は伝説の魔法使いですもの」
「……おいおい、確かにそうだけどさ、なんでお前がそう偉そうにしてるんだ?」
 そんな僕らの様子に、この男の人ってば、なんか少し考え込んでいます。
 ……ですが、これはチャンスでしょう。
 さっきの魔獣を一瞬で片付けた魔法……きっとこの人はかなり出来る人に違いありません。
 そう判断した僕は
「あの……初対面の方にこういうことをお願いするのはあれんなんですけど……よかったらウチの奥さんを手伝ってもらえませんかね? 先ほどの魔法の腕前をお見受けするに、貴方もかなりの魔法の使い手とお見受けするんですけど」
 ダメ元でそう言って見ました。
 すると、その男性は 
「わかりました。僕でよければ」
 僕が拍子抜けするくらいあっさりと僕の申し出を承諾してくれたんですよ。
「僕はフリオと申します」
 その男性はそう言いながら、右手を差し出しました。

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